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 帰路と勇者と魔王軍っ!?

 「そも、我々は勇者に貶められ、キアス殿に救われた事には一切の誤解の余地もない。ならば、キアス殿が何であれ感謝をするのは道理だろう?」


 「それを、キアスさんが魔王だと知ったらアタシ達がキアスさんを避けるようになるかも、って………。馬鹿も大概にしろっての」


 「新手の侮辱ですねぇ………。私、キアス様以外に蔑まれるのは絶対に嫌なのですが?」


 「………あの街で生活してれば………、………元奴隷達があの人に好意的すぎる事に気付きそうなもの………。………粗忽………」


 うわぁー、なんか説教大会が始まってるよ。シュタールを取り囲んでいる4人は、シュンと正座しているシュタールに小言の雨霰雹雷をぶつけている。


 あ、なんかこっち見てる。情けない顔すんな、勇者だろうが!!


 「キアス………」


 「助けなら期待するな。僕にその4人が止められるわけないだろ?」


 「お前、魔王じゃねぇか………」


 「お前だって勇者だろ?」


 まぁ、勇者だろうが魔王だろうが、勝てないものはあるんだよな。




 僕らは今、帰路についている。超巨大浮遊円盤、『天空都市』にて、真大陸高空を飛行中だ。転移でも帰れるのだが、やっぱり今回もエネルギーを使いすぎているので小さな所から省エネだ。

 運よく雲が多いので、まぁ滅多に見つかる事はないだろうし、見つかってもアムハムラの『王国空運』と誤解するだろう。あれを普及させたのには、空を移動する際に目立たない為、という意味もあったのだ。


 さて、この天空都市は今回の為に造った物ではあるが、これからも活用するつもりだ。

 普段は魔大陸の僕の領土を定期的に周回する足となってもらい、戦時は巨大揚陸船へと姿を変える。

 まぁ、飛ぶ以外にはただ壊れないというだけの代物だが、それ故に天空迷宮ほどコストが高くないのがいい。ゴミ処理産業で生まれるエネルギーで充分維持できる優れものだ。まぁ、他にも小型の飛行機械も造ったのでやや赤字なのだが、それは初期投資だと思いたい………。


 今回の騒動で、僕が実験した事がいくつかある。


 まずは、離れた位置のマーキングと転移である。散々言ってきた事だが、転移をするためにはマーキングが必要不可欠なのだが、そのマーキングのやり方には工夫が出来る事が今回わかった。例えば、マーキング専用のマジックアイテムを作る事で、単体で乗り込んでマーキングさえしてしまえば、当人達が行った事の無い場所でも大量に転移で飛ばす事が出来る、というものだ。


 ただ、この機能はダンジョンのアイテムにはないし、これからだって持たすわけにはいかない。


 小さな所では、最初の信頼の迷宮をすっ飛ばして奥に進む奴が出かねないこと。これは、今の指輪でもマーキング済みの指輪を譲渡する事によって可能であり、これから対策をとらないといけない。

 大きな所では、今回僕が使ったように戦争への転用がされた場合、かなり有益な兵器になりかねない事である。考えてもみてほしい。国家間の繋がりが友好的な内にマーキングを済ませておけば、争いになった時に重要施設へ瞬時に大量の部隊を投入できるわけだ。それも内部に。


 それがどれ程驚異的な成果をあげるか、また、手にした者がその誘惑にどれ程坑し得るのか、僕にだって予想はつく。


 故に僕も、今回のような超展開能力のゴリ押しはしないし、いざとなるまではそんなマジックアイテムは造らない。


 次に、魔族達の統率を試した。


 僕の命令にどれだけ忠実に従うのか。僕が命令すれば、人間を襲わないのかを試したのだ。


 こちらの結果は思った以上に上々だった。軍属以外で死傷した人間は、今回確認されなかった。これから出てくれば、遠慮せずに報告するよう、ガナッシュには言ってあるが、見る限りではどの魔族もちゃんと従ってくれていた。


 不名誉なことに、以前クルーンが言っていた『虐殺王』というあだ名が、思った以上に魔族には浸透しているらしい。遺憾だ。実に遺憾だ。遺憾遺憾。『遺憾』の意味は知らないけど、何となく使わないといけない言葉のような気がする。

 まぁ、鬼軍曹役が必要だっていうなら、別にやぶさかじゃないからいいけどさ。


 まぁ、挙げ出せばきりがないのでこの辺にしておこう。部隊の展開能力とか、外的要因への牽制とか、話し始めたら終わらないし、つまらない。


 それはこれから始まる、真大陸諸王会議で話し合われる事だしね。


 まぁ、なんだかんだ言っても、今回僕は戦争をした。相手側の死者は今のところ113人。一万人規模の戦争にしては少なく感じるだろうが、結構な量だ。僕はそれをしっかりと憶えていなければならない。


 「それじゃ、まぁ、大勝利のお祝いに僕からささやかなプレゼントを贈ろうか」


 僕らがいるのは揚陸用の小型飛行機が並ぶ、空母で言えば飛行甲板である。まぁ、滑走そのものが要らない飛行機なので、ただの車庫と言ってもいいかもしれないが。


 その甲板に僕の用意した装置が置かれる。まぁ、大仰な言い方をしたところでただのスピーカーなのだが。


 「踊れ!!歌え!!戦士達よ!!此度の勝利はお前等の物だ!!」


 スピーカーから、僕の合図と同時に音楽が流れ始める。まぁ、ちょっとありきたりだけど『美しき青きドナウ』。ワルツだ。


 この為にわざわざ色々な楽器を造ったのだ。弦楽器って大変だよね。まぁ、自分で造ったのだから、演奏そのものは問題なかった。けど一つ一つ録音して、後で合わせるのが大変だった。


 おかげでフルオケとはいかないけど、中々厚みのある演奏にはなった。


 ………だが、


 「まるで阿波踊りだな………」


 せっかくのワルツが、ただのどんちゃん騒ぎだよ………。


 まぁ、僕等らしいっちゃらしいかな。


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