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 光と炎と闇

 「くっ………!!」


 「ぐっ………!!」


 俺の繰り出す斬撃と、奴の魔剣技がぶつかり合い、その衝撃を互いにその身に受けてたたらを踏む。


 「随分………、息が、上がっていますねぇ?」


 「はぁ、はぁ………、テメェもな」


 チッ。予想してた倍は厄介な相手だ。魔法と違って発動までのムラが無さすぎるし、本来は大出力の技に向かない魔剣技も、こいつが使えばその限りじゃねぇ。


 「全く。俺はお前の事なんか大嫌いだけどよ、その技術だけは純粋にスゲーと思うぜ。お前の事は大嫌いだけどな」


 「2度繰り返さなくてもわかっていますよ。私もあなたの事は嫌いですから。ただ………、いえ、特に誉めるべき事柄がありませんでした。私はあなたが嫌いです」


 がっ………!!


 こんにゃろっ!!


 「俺の方がお前の事が大嫌いだね!!説教臭いとことか、嘘くせえ笑顔とか、馬鹿丁寧なしゃべり方とか!!」


 「子供ですかあなたは………。他の聖騎士達も心配です。さっさと終わらせましょう」


 まぁ、あの状況じゃな。

 俺の背後では、竜巻が幾人もの聖騎士を蹂躙し、その悲鳴がこだましている。っていうか、俺だって心配になる。

 おいアニー、一般人に被害出すなよ?


 「第13魔王を血祭りにあげる前座としては、少々派手にやられ過ぎましたね………」


 聖騎士達の悲鳴に、エヘクトルは苦笑する。


 「ちょっと待て、魔王を血祭りにあげるってなんだ?」


 今この国で起きてんのは、『奴隷解放』に端を発する浮浪者の急増問題だったはずだ。


 「フン。あなたの頭でも『奴隷解放』に問題がある事はわかりますか」


 「一々俺の悪口言わなきゃ話進めらんねぇのかテメェは!?とっとと話せ!!」


 「何を偉そうに。まぁいいでしょう。


 奴隷解放は、第13魔王がズヴェーリ帝国で宣言した所信表明です。ゆえに、もしこのガナッシュで必ず失敗する『奴隷解放令』が発布されそうになれば、必ず乗り込んでくる筈です。


 真大陸全土へ向けた宣言です、乗り込んでこなくば魔王の沽券に関わるでしょう。


 しかし、事は始めから奴を嵌めるための罠。迎え撃つ準備は万端です。この町にも、密かに軍勢を伏せていますし、逃亡を図ろうにも、周囲の町にも大軍を常駐させています。


 恥知らずにも乗り込んでこなければ、国の首脳部を第13魔王が脅していた事にし、我ら教会がその呪縛から解き放ったというシナリオ。もし乗り込んできても我等が魔王を倒し、奴隷解放は中止。


 つまり、最初から奴隷を解放す―――」




 「はい、いきなりフンガムンガ!!」




 「うおっ!!」


 「―――うわぁっ!!なんですか、この凶悪な物体は!?」


 上空から飛んできた凶悪な造形のそれを、エヘクトルは大きく避けて動揺も露にわめき散らす。それもそのはず、3方向に伸びた刀身が、禍々しく屈折している短剣。こんな物が飛んできたら、例えオリハルコンの盾を持ってたって即座に避けを選択する。つーか、超コエー。

 こんな武器を使う奴なんて、この世に2人といないだろう。


 「続けていくぞ、トゥルス、ウォシェ、ンギーグェ、ンガ・ティル、イクール、あ、これ儀礼用だった。ま、いっか!そーれ!!」


 「うわぁぁぁあ!!ちょいタンマ!ちょぉいタンマぁ!!

 キアス!!まだ俺がいっから!!」


 構わず落ちてくる凶悪なナイフ群から、俺もエヘクトルも這う這うの体で逃げ出す。


 「ハハハハ!!逃げ惑え、勇者共!!我がアフリカ投げナイフ、全て避けれるものなら避けてみよ!!」


 空から降る哄笑にそちらを見れば、空を飛ぶ不思議な物体に足をかけて腕を組んでいる者の影が見える。

 逆光でよくわかんねぇけど、このナイフ、この声、どう考えてもキアスの野郎だ!!


 「おいコラ、キアス!!テメェ俺まで狙いやがったな!?」


 「ハハハハ!!キアスとは誰だ?僕は第13魔王、アムドゥスキアスだ!!」


 「もうそのハッタリはいいんだよ!!その凶悪なナイフ投げんのやめて、とっとと降りてこい!!」


 地面に突き刺さっている短剣を見れば、どれ1つとしてまともな形の物がない。どう考えてもアイツの奇剣コレクションだろ、コレ。


 「とぅ!!」


 未確認飛行物体から飛び出す影。続いていくつかの影も飛び出す。




 「はぶぅ!!」




 ………………。


 ………ものすごい鈍い音と共に、地面に激突する影。つーか、死んだ?


 「イテテテ………。神様の加護が無かったら死んでたな………」


 「だ、大丈夫ですか、キアス様!?」


 「うん。問題ない。大丈夫だよパイモン」


 一際大きな体の影、黒い肌と黒い角のそれが、地面に落ちた者へと駆け寄る。


 どう見ても、真大陸の人間じゃない。魔族だ。


 「ふ、ふははは!!魔王アムドゥスキアスの降臨である!!控えよろう!!」


 今さら取り繕うように立ち上がったのは、流麗な漆黒の黒髪に、愛らしい顔立ちの少女だった。


 え?誰?


 昂然と笑い、傲岸にこちらを見下す少女。


 「ま、魔王?」


 どう見てもただの少女にしか見えないが、その背後に控えるのはオーガ。魔族の中でも取り分け力が強いと言われ、肉弾戦闘を得意とする戦闘部族だ。


 それだけではない。瞳術という特殊な技を得意とする百目鬼、空の王者とも呼ばれるグリフォン、強力無比な毒を宿すラミア。全て魔大陸の住人達。

 であるならば、本当にこの子は………。


 「またも変装か、アムドゥスキアス!!だが死地に飛び込んだのは貴様だ魔王!!」


 「おい、お前キアスだよな?さっきそこのオーガがキアスって呼んでたし」


 「騒ぐな、勇者共!!それと僕はキアスではない!!アムドゥスキアスだ!!」




 なんかわちゃわちゃしてきたぞ………。





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