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 バトルバトルバトル

 「ええい!!勇者である私への無礼な言動、最早看過できません!!死になさいシュタール!!」


 「はっ!口で勝てなきゃ八つ当たりかよ、カッコわりい!!」


 突貫したエヘクトルの剣を、シュタールのマン・ゴーシュが受け止める。


 キィィィン!


 と甲高い音の後には、間近で睨み合う2人の勇者の姿があった。


 「さっそくだが、あばよっと!!」


 もう片方の手に握られたコピシュが、エヘクトルを薙ぐ。

 完全にとらえたかのように見えた斬撃は、しかしあっさりとエヘクトルの体を透過し、エヘクトルの姿も揺らいで消える。


 「くっ!!」


 飛び退いたシュタールのいた地面に、おびただしいほどの炎の怒濤が攻め寄せる。


 「しゃらくせぇ!!斬光剣!!」


 シュタールがコピシュとマン・ゴーシュを同時に振る。その軌跡をなぞるように、2条の光の斬線は炎の波を切り裂く。


 「フン!」


 炎の中で機を窺っていたエヘクトルが、その光の斬撃を自らの炎の斬撃で霧消させる。


 「魔力の纏わせ方が下手な魔剣技ですね。魔力の総量が人並みであれば、あっさりと魔力切れになりますよ?」


 「うるせぇ!!テメェに言われなくてもわかってんだよ!!」


 ダンジョンではよく魔力切れを起こすからな。私もだが。


 「本物の魔剣技を見せてあげましょう!!千乱炎刃!!」


 まるで剣舞のように剣を振るエヘクトル。


 一振りすれば、幾十。二振りすれば幾百の炎の斬撃がシュタールへと殺到する。


 「くっそ、このっ!!」


 当然シュタールは炎の斬撃相手に防戦一方である。

 マン・ゴーシュを盾に、コピシュで炎を切り裂く。


 「まだまだ行きますよ?乱炎剣!!」


 離れた位置で剣を振るエヘクトル。一瞬何が起きたのかわからなかったが、突然炎の斬線が倍以上も増え、しかもシュタールがその炎を狙って切りつけても空振りしてしまうに至り、ようやく私にもそのカラクリがわかった。要は最初の一撃と同じく、陽炎を用いた幻覚である。


 「ぐっ………!!」


 虚実入り交じった炎の攻勢に、シュタールは押されぎみに呻く。


 やはり、腐っても勇者。流石の一言である。


 「あ゛ーーー!!うぜぇ!!」


 怒声一発、シュタールは光の斬撃で周囲の炎を散らすと、剣を構える。


 「閃光剣!!」


 刹那、私にはとても目で追えないような速度の、1条の光がエヘクトルへと向かう。


 「チッ、瞬炎剣!!」


 光と炎の閃光がぶつかり、辺りは眩い光に包まれる。目を開けた時、2人の姿はなく、遠くの街路で剣劇の音だけが確認できた。




 「さて、私たちも、ただ見物しているわけにもいくまい」


 「九節鞭の練習も兼ねて、少し聖騎士さんにはオシオキが必要ですねぇ」


 「死なせねぇようにトンファーでやってやんよ。まぁ、運が悪けりゃわからねぇけど」


 「………ジャマダハル………。………まだ慣れてないから痛いかも、ね………」


 私たちが包囲する聖騎士達へと一歩踏み出せば、彼らは一歩下がる。


 「お、恐れるな!!我らは数で圧倒的優位に立っている!!彼の女傑たちと言えど、この包囲をとっ―――あああぁぁぁ!!」


 「貴様は確か、アーダルだったか?あの会議室に押し入ってきた隊長だな?」

 肩から丸いチャクラムを生やした男に、私は一歩近寄る。

 白銀のプレートメイルをも貫くチャクラム。それは、本体の強度を度外視できる投擲武器ならではの鋭さだそうだ。恐らくあのチャクラムは回収したところで2度と使えまい。


 「確かキアス殿はこう言っていたな。『切る』という行為は、いかに早く、いかに強い力を、いかに小さな面積に加えるかである、とかなんとか。

 だが剣のような継続的に使用しなくてはならない武器は、鋭く研ぎすぎればすぐになまくらになって使えなくなってしまう。だから、その造りにはあらかじめ余地がある。鋭さ、切れ味に余地があるんだそうだ。


 さて、その余地のない私のチャクラムと、貴様等の鎧、




 どちらが強いか、試してみるか?」




 「ぐ………っ!!」


 痛みに耐えるよう食いしばられた歯をむき出しに、アーダルは私と向き合う。肩にある傷は、そこまで深いものではない。

 だが、剣を使う以上は支障になるだろう。


 「ま、まだ私には、魔法が―――」


 「ほぅ、面白い。私に魔法で挑むか。ならば魔道に殉じる者として、相応の礼を持ってお相手しよう」


 無論、魔道に手加減などは存在しない。


 「私の魔法で、風と一つにしてやろう。

 物理的に」


 「ひぃ………っ!!」


 口ほどにもない、というか口ほどでしかない、というか。ただの舌戦だけで戦意を喪失してしまったのか、へたり込むアーダルから視線を外し、他の聖騎士達を見据える。


 「本体残ってねぇじゃねぇか………。アタシが手加減してやる意味がねぇ」


 「うふふふ。生き残りたい方は私にかかってきなさい。その代わり、生き地獄というものを見せて差し上げますわよ?」


 「………独り占め………、………ズルい………」


 さて、では始めようか。獲物が逃げ腰というのが興に欠けるが、私達は脱兎でさえも全力でお相手しよう。


 「『アネモス・トロヴィロス』」


 戦いの狼煙が上がる。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『【切る】』という行為は、 ではなくて、今回の場合は【斬る】では?
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