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 商人って、世界最強のジョブかもっ!?

 「ではマルバス様、こちらが代金でございます」


 「ありがとう。いい取引ができたよ」


 「いえいえ、こちらの方こそ品薄の『しゃんぷー』と『りんす』を融通していただきありがとうございました。お得意様の貴族のご令嬢が、どうしてもと仰っていたので私どももようやく胸を撫で下ろせます」


 「ははは。その『どうしても』は随分と利益を生んだのでしょうね?」


 「ははは。敵いませんな。それ込みでの代金は、包ませていただいたのでご心配なく。私どもとしましても、マルバス様とは今後ともご贔屓にしていただきたいですからね」


 「困ったなぁ。今回は結構無理したんですよ?

 あまりいいように使われては………」


 「と、とんでもございません!!そのような誤解を与えてしまったのなら申し訳ございませんでした。

 ただ、『しゃんぷー』と『りんす』の在庫に空きがあるようであれば、少し予約に便宜を図っていただければと………」


 「人気商品ですからねぇ………。でもまぁ、あくまで下っぱの僕に出来る範囲で、という事であれば期待しないで待っててくださいね」


 「ありがとうございます。

 では商品の受け渡しを願えますかな、お嬢さん?」


 「うーん………、お嬢さんと呼ばれるのは好きじゃないな」


 「重ね重ね失礼を。マルバス様は立派な商人でありますれば、少々不敬が過ぎましたね」


 「とはいえ、そんなに畏まる必要もないさ。気軽にマルバと呼んでください」




 商人にシャンプーとリンスを手渡し、僕は馬車へと戻ってきた。


 「きあ………、マルバス様、お仕事は終わりですか?」


 「ああ、お待たせ、パイモン。シャンプーとリンスを1つづつ持ってくるだけでボロ儲けさ」


 僕は御者台に座るパイモンの隣に座り、パイモンを見る。


 褐色の肌にアッシュグレーの短髪。190越えの身長に、簡単な軽凱。両腰の神鉄鞭。

 どっからどう見てもイケメン冒険者のパイモン。


 僕はといえば、相変わらずのちんちくりんな背丈に、長い黒髪。あの商人の言っていたように、まさしく『お嬢さん』な姿である。 因みに、マルバスというのは偽名。『キアス』という商人の名が使えなくなった時を考えて、色んな国で様々な名で登録したのだ。身分詐称、公文書偽造だ。

 まぁ、キアスの名も同じようにして作ったので、今さらである。


 ちょっとした用事だったので、護衛はパイモンだけである。ただ、ここですんなり帰ってしまうのでは芸がない。せっかく遠出したのだから、出来る事を出来るだけしておこう。







 「お、嬢ちゃん、その野菜を買うのかい?珍しいだろ。今日入ってきた新鮮なポロポロだ。お使いたぁ偉いねぇ。いくつ必要だい?」


 「とりあえずこの店にある分全部ください」


 「………は?」







 「今日は珍しくラーク鳥が入荷してるぜ!!しかも2羽!!お嬢ちゃん、どうだい?」


 「じゃあそのラーク鳥と丸ボロ鳥をあるだけ」


 「………え?」







 「何だ小娘?ガキの来る所じゃねぇぞ」


 「錬金用の素材、ダンプ、モロ、アタリの葉の乾燥粉末、レクシャの花をあるだけ貰おう。勿論即金だ」


 「いらっしゃいませお嬢様!!」







 普段僕は、こういう商店で買い付けはしないんだけど、商会では手に入れられないものとか結構置いててついつい買っちゃうんだよね。


 特に鳥肉は、猟師が直接肉屋に持ってく場合が多いからあまり手に入らないのだ。


 あ、そうだ。近くまで来たんだし、あの人にも会っておこう。







 「ブッ!!ま、魔王!?」


 「やぁ、こんにちは」


 盛大に昼食を吹き出したガオシャン皇帝に、僕はにこやかに挨拶する。汚いとか言ってはいけない。驚かせたのは僕なのだから。


 あ、でもちょっと近づかないでくれる?


 っていうか、毒味役とかいないの?この広い部屋に皇帝1人って、何だかうら寂しい食事風景だな。


 「………警備の者は何をやっておるのだ………」


 テーブルに突っ伏さんばかりに項垂れる皇帝に、僕は苦笑して兵士のフォローに回る。


 「まぁまぁ、あまり責めないであげてください。隠れて侵入したのは僕らですから」


 「貴様が易々と侵入できる時点で、こっちは胃に穴が空く思いだ………」


 しかも2回目だからねー。全部幻術の指輪のお陰だけどさ。


 「こちらに立ち寄ったのは、例の件で何かご入り用の物はないかと思いましてね」


 例の件とは、勿論出版業から始める情報産業の事だ。出来るならば、剣王祭までには稼働してくれないと色々大変だぞ。


 「全く無い。3国で協力し合って物資を揃えている。貴様にこれ以上要らぬ恩を着せられてはたまらぬからな」


 「そうですか。それは重畳ですね。僕としても、早く実用していただきたいので。時期を見誤れば、儲け時を逃しますから」


 「………どういう意味だ?」


 「おっと、口が滑りました。お忘れください。大丈夫、近々この国にも報せが来ますから」


 などと嘯いて、僕は営業スマイル。


 「………城で使う武具を新調する事になっておる」


 「数は?」


 「………50」


 「70」


 「わかった。わかったから話せ」


 僕をごまかそうったってそうはいかないぞ。別に法外な値段で売り付けるわけじゃないし、たぶん他の商人より安く良い物を提供できるはずだ。


 「たいした話ではありませんよ。アムハムラ王国が剣王祭なる大規模な祝祭を開くそうです。オンディーヌに剣を授かった王を称える祭りだとか。それに3国の本の出版が間に合えば………」


 大きな利益が見込める。


 「ふむ………。執筆を急がせるべきか………」


 「ただ、未だいつ開かれるかは不明です。アムハムラ王に時期を聞いてからでも、著者を急かすのは遅くないと思いますよ。


 何より、他の2国と執筆者が違うのですから、品質は大事にしませんと」


 「………そうだな」


 あまり急かして内容が他に劣れば、利益にも大きな差が出よう。


 「有益な情報、という事にしておいてやろう。対価は払うのだから、これは借りではないぞ!?」


 「毎度あり。後でハーゲンティーという商人が城を訪ねるので、品物の受け渡しはその時に」


 「はぁ………。せっかくゆっくり食事が出来る時間が取れたというのに………」


 それは悪い事をしたかもな。この人や他の2国の上層部も、今はてんてこ舞いだろうから食事くらいゆっくりとさせてあげればよかった。


 運が悪かったと諦めてほしい。




 さて、今回の儲けはこんなもので良いか。トルトカとネージュにも寄ってからとっとと帰ろ。





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