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 カーニバルナイト。終幕っ!?

 「キアス………、我が娘が迷惑をかけてしまったな………」


 似合いもしない神妙な表情で、オールが話しかけてくる。


 「娘の勝手で、貴様の情報が外に漏れる危険を作ってしまった。償いはしよう。何なりと申せ」


 じゃあまず、その真面目な表情をやめてくれ。調子狂うから。


 僕は、丁度目の高さにあるオールの髪を撫でる。撫でる。撫でる。撫でる。撫で繰り回す。


 「ちょっ、こ、これが貴様の復讐なのか!?な、ならば甘んじて受けるが、これは我にとって罰にならんぞっ!?」


 ちょっと頬を赤くしたオールが抗議してくる。まぁ、三大魔王とか呼ばれて畏れ敬われてたんならこうして頭を撫でられた経験なんか、ほとんど無いだろうからな。巨大な龍の姿だったら尚更。


 「オールが気にする事じゃないよ。母親として、娘の心配だけしてなって」


 まぁ、今回のこれは、レライエに考えあっての事だろう。まぁ、言いたい事は山ほどあるけど、今はまずやることをやってしまおう。ここでこの話を進めるわけにはいかない。


 「じゃあ、僕達もやる事済ましてとっとと帰ろう」


 「ん?やる事とはなんじゃ?」


 可愛らしく小首を傾げるオールに、含みを持たせて微笑む。何も告げずに僕は歩き出した。

 首なしのピエロに向かって。


 「おいこら、とっとと起きろ!!」


 僕は無造作にピエロの胴体を蹴り飛ばす。まぁ、僕程度の脚力じゃ蹴り飛ばすというより、つついたようなものだけど。


 そして、尚も死体のフリを続けようとするピエロ。


 「僕は今あまり機嫌が良くない。よって、あと3秒以内に起きないと、今度は本当に死ぬ事になるぞ?いーち」


 「………チッ。気付いてやがったか………」


 のそりと体を起こす胴体の隣で、ピエロの頭が面白くなさそうに呟いた。


 会場にいた魔族も、オールやアベイユさんも、この出来事に呆気に取られていた。あ、タイルとエレファンは平然としてる。気付いてたのかな?




  クルーン・モハッレジュ・パリャツォス 《レベル72》

 ピエロまおう マリオネット


 たいりょく 1235/8802

 まりょく 6050/7200

 けいけんち 35/41000


 ちから 902

 まもり 921

 はやさ 937

 まほう 7897


 わざ


 さい・かぜまほう

 ごたいちゃくだつ

 ロケットパンチ ▼


 そうび


 ださいぼうし

 ださいふく

 へんなくつ




 こいつが生きてる事くらい、タイルやエレファンくらいになれば当然のように気付いていたって事か。


 因みに、首を切っても生きていられるか、ちょっと半信半疑だったのはこいつには秘密だ。


 「………」


 「なんだ?僕に何か聞きたい事でもあるのか?」


 ピエロが訝しげに見上げてくるので、当然のようにとぼけてやった。まぁ、疑問はあるだろうけど、『鑑定』について教えてやるつもりは毛頭ない。


 と、思っていたら、ピエロは全く違う質問を投げ掛けてきた。


 「………なぜ私を助けた?」


 「ん?」


 「とぼけるな!!私が首や胸を貫かれても死なぬ事は事実だが、胴体にある核を壊されれば死んでしまうし、核ごと胴体にダメージを受け続けても恐らく死ぬ。だから貴様は私の首を落としたのだろうが!?


 あの状況でなぜ私を助けた!?」


 そっちか。なぜかベラベラと自分の弱点を喋ってくれるピエロに、僕は呆れてため息をつく。確かに僕がこいつの特性に気付いていたとすれば、引っ掛かる点かもな。ただ、そこまで詳しい弱点までは知らないっつの。


 「いや、特に理由とかないよ。ただ何となくデロベにムカついたから、その思惑を挫いてやろうと思って」


 「………チッ。お人好しも大概にするんだな。私はお前を殺そうとしたんだぞ?」


 「お人好し?………くくく………、ぷっ、あははは!!


 バカ言っちゃいけない。僕がそんな博愛主義者に見えたのか!?だとしたらお笑いだ。

 いいか、ピエロ?お前は僕に命を助けられた。しかも、それを証明するのは三大魔王とアベイユさんだ。なぁ、いくらお前がアホでも、今から僕を殺せるか?


 そこまでの不義理を公然と行うには、お前には圧倒的に力がない。実力もなければ、今や人材もない。人望もないし、何より信用がない。まぁ、玉砕覚悟ってんならそれもアリかもしんないけど、その命が僕によって助かった事を鑑みれば、あまりに格好がつかないと思わないかい?


 つまり、僕は君に大きな貸しを作ったってことさ。これからも魔王として生きたいなら、その借りは反故にしない事をお勧めするよ」


 僕の説明に、ピエロは苦虫を噛み潰したような表情でボロボロの床に視線を落とす。


 「クソッ!!」


 「しかも、お前が生きてると知られれば、デロベはまたお前の命を狙うと思うぞ。さっきより楽しそうにお前を殺しに来るだろうな」


 「………」


 僕の言葉に、ピエロは再び黙る。このピエロにも支配地域はあったのだろうが、今回の騒動でまず間違いなく、あいつ等が実行支配するか、誰も支配しない自由地域になるだろう。魔大陸には、誰も支配していない領域が結構あるし、魔王以外が支配している地域もある。

 別に何食わぬ顔でピエロが戻っても構わないのだが、その場合はデロベが喜んで後始末に乗り出すだろう事は想像に難くない。


 「そこで、だ。ある条件さえ飲んでくれれば、僕がお前を保護してやろう」


 逃げ隠れして生きるよりは安全で、しかもこいつにとってもいい勉強になるだろう。支配者ってのがどんだけ大変か、身をもって味わってくれ。


 「条件だと?」




 「そうだ。お前、僕の仲間になれ。レライエの代わりに、ゴモラとその周辺の領土を切り盛りしてみせろ」




 「な、なぜ私が貴様なんぞの!?」


 「嫌ならどこへなりとも行けばいい。たぶんデロベに殺されるだろうけどな。


 あ、それと、サボタージュや不安定化工作なんか考えるなよ?そんな事が出来ないように、奴隷紋より強力な契約に縛られてもらうから、大丈夫だとは思うけど。もし、今までより業績が下がったら、お前の給料から捻出させるからな」


 「ふざけるな!!私は魔王だぞ!?新参の、しかも他の魔族の後釜だと!?」


 「おいおい、誰が他の仲間と同列なんて言った?」


 「フ、フン。わかっているではないか」


 「お前が一番下っぱに決まってんだろうが。他の仲間には敬語で話せよ?」


 「ふざけるなっ!!」


 「いやー、気兼ねなく僕の仕事を任せられる人材を探してたんだ。丁度良かった」


 「人の話を聞けっ!!」




 こうして僕に、魔王の部下ができた。





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