カーニバルナイト。宣誓っ!?
「まぁ、結成にともない、小物連合の所信表明でもしとこうか」
デロベがヘラヘラと言うと、3つ目とヌエがそれに食って掛かる。
「ちょっと待つっす!!まず『小物連合』って名前を何とかするっす!!」
「それと、この組織の代表はうぬなのか?我輩は上下関係の無い互助組織ならば参加するが、うぬの下に付くつもりはないぞ!?」
あー、もう、纏まりがねぇなぁ!!みててイライラするよ!!
そう思ったのは僕だけではなかったらしく、エキドナさんは早々に退場するようだ。
こうなった以上、会議もくそもないので当然か。
「あなたと知り合えたのだから………、今回の宴はまだ良かった方ね………。それじゃ………」
「お疲れさま。またどこかで」
短く言葉を交わし、エキドナさんを見送る。
今回こんな事になったのに、これでいい方ならこれまではどんだけだったんだって話だ。
あーあ、僕もとっとと帰りたいんだけど、まだやる事があるんだよなぁ。
「おっと、まごまごしてる内にエキドナが帰っちまったよ。
あー、じゃあとっとと終わらせて俺も帰ろ。
所信表明!!
俺は狂っている!!」
いや、それのどこが所信表明なんだよ。
「だからアベイユが言ってた事には大いに感銘を受けたね。
魔王たる者狂王であれ。
くぅ〜っ!流石は言う事がちげぇと感心したぜ。
俺は退屈が嫌いだ。退屈になるくらいなら死んだ方がマシだとすら思ってる!!
だからこそ、この小物連合を面白い組織にする!!してみせる!!
俺は俺が楽しむためになら、努力を惜しまねぇ!!それこそが真の快楽主義だ!!
俺には三大魔王のような力もカリスマもねぇ。頭もよくねぇし、基本快楽主義者なんで人望もねぇ。エレファンやオールからしたら、ごくごく普通の魔族と大差ねぇって事も良くわかってる。
ただなぁ、だからって地べたに張って生きるつもりもねぇ!!
生まれた以上は生きている内にどれだけ笑うかが、生きる意味だってのが俺の持論だ!!
だから見てやがれ魔王共!俺はこの組織で成り上がって、お前らが無視し得ない存在になってやる!!」
随分と乱暴な所信表明もあった物だ。
まぁ、快楽主義の件には同意だが、だからってコイツの道楽と僕の我が儘が同一であるわけがない。
デベロは自分の楽しみの為だけに、あのピエロを暴走させて殺そうとしたのだ。
そんな胸くそ悪い道楽を、僕は心の底から軽蔑するし、絶対に相容れない。
同族嫌悪だとは思いたくない。
「とまぁ、こんな感じかな。
あ、別に敵対するってわけじゃねぇぞ?俺じゃあ三大魔王どころか、アベイユやエキドナにだって逆立ちしたって勝てねぇしな。あくまで、今までみたいに小物としてあしらわれねぇ程度には力をつけるってだけだ」
「じゃあまず連合の名前から何とかするっす!!ナメられっぱなしっすよ!!」
「だがまぁ、うぬの言う事には賛同しよう。小物と言われぬだけの存在になる、という部分だけはな」
何だかんだで、小物連合は息ぴったりだな。コント的な意味では。
「ぶっちゃけ、こんな組織に出来ることなんてすくねぇ。
だからまず、クルーンの言った美辞麗句を一つ一つ実践していくしか道はねぇと思うんだよ。どうだ?」
「そうっすね。確かにあの通りの組織なら便利っす。実績さえあげれば他の魔王さんも入ってくれるかも知んないっすし」
いや、ないな。少なくとも僕はヤダ。デロベ嫌い。ピエロより嫌い。
「しかし実現には時間がかかるであろうな。何せ、クルーンとて実現させるつもりもなかったであろう、ただの客引き用のおためごかしだ」
「だからだ!!
そこで今話題のアムドゥスキアスに一枚噛んでもらおうってわけよ!!
あいつのダンジョンとやらから流れる魔道具、あれを連絡用や移動用に多少融通「ヤダ」してもら………」
なにやら3人の会話に、僕関連の不愉快な話題があったので、デロベが言い切る前に否定する。
つまり僕にダンジョンのドロップアイテムを横流ししろって事だろ?寝言は寝て言え、タコ。
「マジックアイテムが欲しければ、ダンジョンに潜るか潜った奴から買え」
「ちょっとくらいいいじゃねぇか、な?」
「お断りだっつの!!」
「くっそぉ、アムドゥスキアスの奴、意外とケチだぞ?」
「いや、某は当然の反応だと思うっすが………」
「なんの理由もなく、先程までクルーンの側だった我々に、魔道具を譲ってくれると思ううぬがどうかしておる」
そうそう。わかってるじゃないか3つ目とヌエ。
「くっそー、小物連合結成初日からいきなり頓挫の予感だぜ」
「まぁでも、アムドゥスキアスさんは魔道具を買い取る事は認めてるんすから、某の支配地域からなら手に入るかもしんないっす」
「うむ。暫くはそれを目標にしようではないか」
どうやら話は纏まったみたいだな。ならとっとと帰れ。
「よっし!!小さな事からコツコツと!小物連合始動だぜぇ!!」
「その連合名だけはいずれなんとしても変えさせてもらうっす」
「我輩も同意である」
3人連れだって、あーでもないこーでもないと言い合いながら、出口へと歩き出した小物連合。
ようやくこの、面白くもないコントから解放されるのか。
だが、立ち去ろうとする3人に、声をかける者があった。
「お待ちください」
それは本来、この場では発言権の無い者の声。明瞭で、ガラスを打ち鳴らしたかのような、透き通った声だった。
「レライエ?」




