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 カーニバルナイト。闌っ!?

 「あらら?」


 転がり落ちたピエロの首に一瞥もくれず、その魔王は僕を不思議そうに見た。


 「あんたって、さっきあっちに、あれ?」


 その魔王が指差す先にも、僕の姿があった。っていうか腕にピエロぶら下げたままだぞ。


 「ただの幻術さ。珍しくもないだろ?


 それより、あんた中々いい趣味してんだな」


 僕の台詞に、魔王は愉しそうに口の端を歪めた。


 「へぇ………、どこから聞いてた?」


 「最初からだよ。このピエロが魔法使いそうだったから、面倒くさくなる前に、と思ってたらあんたに先を越されたってだけさ」


 「くははは。そりゃあ、見せ場を奪っちまって悪かったな。まぁ、あいつが全力で放った魔法なんか食らったら、三大魔王とアベイユ、エキドナ以外は堪ったもんじゃないからよ。勿論俺もな」


 ふん。そんな事を言ったら、僕なんかあいつが鼻くそほじりながら適当に放った魔法だって大ダメージだっつの。

 あいつ、魔力の数値だけはそこそこ高かったからな。


 最早なんの興味もなさそうに、ピエロを捨てる魔王がこちらにニヤニヤと笑いかける。


 「挨拶がまだだったなぁ。俺はデロベ。デロベ・イブリース・エラトマ。ただの小物の第6魔王だ」


 「僕はアムドゥスキアス。ただの大物商人だよ。


 あんたみたいな魔王らしい魔王を見たのは初めてだ。いろんな意味でね」


 漆黒の肌、漆黒の頭髪、牡牛のような金の角、赤い瞳、蝙蝠のような飛膜の羽、細身でありながらがっしりとした体。そしてマント。


 これぞ魔王といわんばかりの姿に、最初見た時は震えたものだ。あ、感動でね。ビビってじゃないよ。


 「まぁなんだ、もろもろあんたを中心として起こった騒ぎなんだし、ここは俺に貸し1って事でいいよな?」


 「はっ!バカ言ってんじゃねえよ。

 全部の元凶はあんたじゃないか。むしろ僕が貸しにしたいくらいだね。まぁ、あんたと貸し借りなんて関係を持ちたくないし、出来れば金輪際関わりたくないから、チャラにしてやるよ」


 「え、ちょ………、なんか酷くない?」


 いいや、正当な評価だね。僕、こいつみたいな性格のひん曲がってそうな奴、大嫌いなんだ。


 「まぁ、いっか。あーあ、なんかまた暇になっちゃったなぁ………。次は何して遊ぼ」


 絶対に関わり合いになりたくない。二度と近づかないようにしよ。


 僕はそのまま、デロベと首無しピエロから離れる。すぐさまパイモンが駆け寄ってきて、尻尾を振り回しながら誉めてほしそうなワンコの表情で寄り添う。


 「ありがとうパイモン。お陰で助かったよ」


 「いえ、お礼を言っていただけるほどの事ではありません!!」


 そうか?随分嬉しそうに表情が緩んでるけど?


 「そういえば、スニーカーに付与した身体強化魔法はどうだ?」


 「はいっ!!とてもいいです。私の速さでは、第10魔王様に届かなかったので、助かりました」


 うん。僕が聖騎士とやった時はまるで役立たずだったからね。他にも、学ランには防御力アップの身体強化魔法、スラックスには攻撃力アップの身体強化魔法も付与済みだ。こんな敵地に来るのだから、フル装備は当然の事だ。


 こんな感じで他の魔法も道具に付与させたいんだけど、スマホで造れるアイテムは危険度が高いものって無理なんだよなぁ。


 はぁ、もし造れたら擬似的にでも魔法使い気分が味わえるのに。


 「災難だったの、キアス」


 オールが苦笑しながら近付いてくる。まぁ、こいつの目からみれば、僕が虫にでもたかられていた程度の認識なんだろうけど、近くにいたなら助けてほしかったよ。

 僕にとっては死活問題だったんだから。


 「全くだよ。はぁ………やっぱり来なきゃよかった。あのピエロ程度の策じゃ、僕のダンジョンで死んでただろうしね。まぁ、その場合多くの魔族も道連れだっただろうから、その命が助かっただけでも救いかな」


 「カカカ。まぁ所詮は小物。考えも相応じゃ」


 はぁ………。


 で?会場がメチャメチャなんだけど、この会議ってまだ続けんの?




 「そうだ!!」


 場が落ち着きを取り戻し、逃げていた魔族がちらほらと戻ってきた頃、デロベが手を打って声をあげた。


 「おい、9と12、お前ら俺と組めよ。クルーンの言ってた連合っての、俺等でマジに作ろうぜ!!」


 そんな事を言い出した。


 「数字で呼ぶな!!


 我輩も、クルーンの言っていた通りの組織であれば興味が無い事もない」


 「クルーンみたいな悪巧み無しならいいっすよ。でもあんた、全然信用無いっすからねぇ」


 3つ目の子は、胡散臭そうにデロベを見る。当然か。

 そういえば、まだヌエと3つ目の名前って聞いてなかったな。僕としては今回のこの『逢魔が宴』は顔合わせの意味が強いし、あとでちゃんと挨拶しておくか。


 「よっし、これでしばらく退屈はしないぜ!それじゃあ、小物連合の結成だ!!」


 「おい、なんだ小物連合とはっ!?」


 「再考を要求するっす!!」


 残りの2人が連合名に文句をつけるが、デロベはどこ吹く風と鼻唄混じりだ。



 祝杯をあげようにも、料理も酒もぐちゃぐちゃなので、小物連合の結成は随分としめやかなものになった。





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