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 お昼ご飯は海の香りっ!?

 大変だった………。

 本当に大変だったんだ。




 まずは、海水から不純物を抜かなきゃならず、おまけに生き物まで流れてくるのだ。


 まず、第1行程として、大きな生き物やゴミを、網目の大きな柵で止めた。


 次に、少し網目の小さな柵、その次に更に小さな編み目の柵と、合計5つ。


 これは、事が露見して直ぐに行った。


 お陰で今日は大漁だ。

 嬉しくない。


 第2行程が蒸留。

 大きな海水プールを造り、そのプールを加熱する。この火加減が、本当に難しかった。あまりに強すぎれば、水蒸気爆発。ちょっと抑えても塩が焦げ付き、抑えすぎれば水が蒸発しない。


 本当に大変だった………。



 第3行程と、第4行程は同時進行だ。

 出来上がった塩を運び、次の海水を流し込む。


 これは、落とし穴を応用した。

 塩を地下に落とし、床が戻ったらそこに海水を流し込む。

 落ちた塩は、風属性と、火属性で更に乾燥される。


 これで大量の塩を手に入れることが出来た。いつか売ろう。


 第5行程は、蒸発した水を、水に戻さなければならない。


 気体になった水蒸気は、天井にある通気孔から、風属性で吸い込まれ、別の部屋へと送られる。大した広さの無い部屋では、飽和水蒸気が自然と凝結する。さらに温度を下げ、出来上がりだ。




 ようやく浄水場が完成したときには、時刻は昼になっていた。


 いや、全部自分のせいなので、愚痴を言えるような立場ではないのだが………。


 思えばアンドレは、最初から解っていたんだよな。

 僕が海水を水道に流し込んだ時も、普段はしない確認をしてきたし、ボイラーの説明をしたときも、どこか含むような物言いだった。


 だったら言えよ、とは思うが口にしない。


 よく考えない、バカなマスターが悪いのです。


 などと言われれば、一言もない。


 ようやく蛇口から水が出たときは、感動のあまり男泣きに肩を震わせた。




 因みに、最初に出た海水も利用して、潮汁を作った。パイモンの持っていた水が底をついてしまい、少し焦ったが、大丈夫。

 今度こそちゃんと、水道からは水が出る。




 「美味しいです!!こんなに美味しいものを食べたのは、生まれて初めてです!!」


 「そんな大したもんじゃないだろ。味付けらしい味付けは、海水だけだし」


 「そんな事はありませんっ!!こんな美味しいものが、な、仲間、と食べられるなんて、夢のようです!」


 パイモンは感激のあまり、涙目で僕に力説する。


 僕としては、手に入れてしまった魚介類の処理と、しばらく水が出ないので、その場しのぎのために作った料理なので、そこまで喜ばれてしまうと、なんだか申し訳ないのだが。


 まぁ、パイモンにとっては、潮汁そのものより、仲間の方が重要なんだろうな。


 潮汁は、新しく造った寸胴の鍋に満載されている。 ちょっと利用価値もありそうなので多目に作った。

 「美味いか?」


 「はい………っ!………はいっ!」


 「泣くな泣くな。これからは、美味しいものいっぱい食べさせてやるから」


 「はいっ!」


 うん。今日もパイモンは可愛い。




 さて、予定より随分と遅くなってしまったが、これから今日の分のダンジョンマスターとしての仕事をこなさなければならない。


 時刻はすでに午後。


 手の中のスマホから白い視線を感じる今日この頃だ。


 『召喚』で『オーク』を呼び出す。


 初対面は割愛。

 なにせ、パイモンの時とほとんど同じだったから。


 「つまり、我々に雑用を任せ、代わりに住居と糧を褒美にいただけるということか?」


 「うん。概ねそんな感じ。総勢11人じゃ、再興も厳しいだろうし、時間もかかるだろ?」


 「ああ………」


 レッドキャップを駆除したことと、長城迷宮のおかげで再び侵入される可能性が限りなく低いことを伝えた事で、オークはかなり警戒心を解いてくれた。


 彼等にしてみれば、僕は仇を討ってくれた恩人のようなものらしい。

 正確には、彼らを襲ったレッドキャップを倒したのは僕じゃないし、直接手を下さず、罠にかけて殺したんだけど。


 「話はわかった。是非我々を雇ってくれ、魔王様」


 「キアスでいいよ。こちらこそよろしく」


 固く握手を交わすと、召喚陣が消え、オークが残る。オークの雇用は、こうしてスムーズに完了した。

 これから11回同じ事をしないといけないけど。




 余裕ができたら、オークの誰かに、ゴブリンの集落へ遣いに行ってもらおう。



 『召喚』は勘弁してください………。





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