カーニバルナイト。総意っ!?
パイモンに伸されたピエロに向かって僕は言い放つ。
「そもそも、この会議だか宴会だかが、僕を貶めるために開かれたってのはわかりきってるんだっての。何が連合だ、笑わせんな」
続くオールは杯を一気に傾けてから、言い捨てる。
「下らぬ。自らの力も信じれぬで何が魔王か。貴様は、他の魔王の助力をアテにしてばかりではないか」
自分達の席についていたエレファンとタイルは、どうでも良さそうに言い加える。
「ボクも、こいつ嫌い」
「まぁ、野心があるのは別に構わないんだけどね、その為に僕らを利用したり、他人を貶めたりっていうのは感心しないな。ボクはそういう奴、虫酸が走るほど大嫌いなんだ」
「私………、魔王への態度なんて気を使った事がないわ………」
尚も追随するようにエキドナさんが、よく聞かないと聞き取れないような小さな声で呟いた。
因みに、この場にいる魔王以外の魔族は、一言も発さず直立したままだ。護衛の魔族はただ無心に、その他の魔族は恐怖から。故に会場は静まり返り、エキドナさんの蚊の鳴くような小さな声も、なんとか聞き取れる。
「………生まれたのが昔だからって偉いわけでもないでしょう………?三大魔王は、ただ戦闘能力が他の魔王より飛び抜けているってだけの尊称………。魔王の頂点だなんて、アンタの勝手な思い込みよ………」
「フン。一番下らんのは、アムドゥスキアスを狂王と謗った事だな」
続いてアベイユさんも意見を述べる。やっぱり皆、さっきの演説もどきが腹に据えかねたんだね。
「狂王、大いに結構。
これは俺の個人的な意見だがな、魔王は全て狂王であるべきだ」
「あら………、流石に暴論じゃない………?………私は結構まともよ………」
「フン!貴様とて、俺から見れば大いに狂ってるぞ?」
「あら………、興味深い」
「愛に狂っておる」
「………見事に一本取られたわ………」
なんか期せずして会議らしい意見交換が始まったな。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
おや、今度は知らない魔王が話すな。
猿の頭に黄金の冠を乗せ、虎のような胴体から鳥のような手足が伸び、尾は目の無い蛇。アレだ。妖怪のヌエに近い。
「我輩の支配地域は第13魔王と離れてはいるが、それでももし、クルーンの言うようにその魔王が野心を持っていれば非常に危険ではないのかっ!?
い、いや、各魔王の意見を蔑ろにしているわけではないのだっ!!そこは勘違いしないでいただきたい。ただ、本当にこのままその第13魔王を捨て置いて良いのかと………。実際、魔王の一角であるコションを討ったのは事実のようであるし………」
うん、この人は連合とやらのメンバーなんだね。
「あ、某も同意っす。ぶっちゃけ謎が多すぎるっす、その人」
今度は姿形は人間に近いな。ただ、双眸とは別に額にもう1つ目があるし、巻き貝みたいなゴツゴツした角がこめかみから生えているのも印象的だ。髪はセミロングくらいで、白。愛嬌のある顔立ちをしている女の子だ。
「生まれてすぐに城壁を築いたり、出所不明の魔道具をばら蒔いたり、行動が意味不明っす。
だから敵対するってわけでもないっすけど、警戒されるのは仕方ないんじゃないっすか?
まぁ、他の魔王さんには印象いいみたいっすけど、某の支配地域はコションさんの所から流れてきた難民に苦労させられたっすからねぇ〜。
まずは自己紹介とか、所信表明とか、一発芸とかやってもらいたいもんっすね」
うわー、先輩風吹かせてきやがった。でもまぁ、コションの元支配地域から出た難民が流れ込んだのなら、確かに迷惑だったかもな。僕のせいじゃないけど、一発芸1つでチャラになるなら安いもんなんだけど。
「吹くではないか、童共。こすく我に暗殺者を差し向けている分際で正道を説くか?」
あーあ、オールさんを怒らせちゃった。
「「っ………!!」」
「一発芸か。面白い余興じゃ。ホレ、貴様等2人で何かやって見せよ」
「え、あ、それは我輩が言った事では………」
「ほぅ………?」
「全身全霊をもって皆を笑わせてみせよう!!」
「いやぁ、参ったっすね………。某、ろくにレパートリーなんか無いっすよ?」
「我がクスリとでも笑うまでは、延々とさせてやる。安心せよ」
「………うす………」
うわぁー。2人とも涙目だよ。案外、オリハルコンなんかどうでもよくて、オールに対する怨みから暗殺者を差し向けてるんじゃないか?
「ちょ………、調子に乗りやがって、アムドゥスキアス………」
あ、ピエロ起きた。
「他の魔王を味方に付けてご満悦かっ!?ハンっ!!いい事を教えてやるよ!そいつ等はなぁ、テメェの支配地域に私が攻め込んでも、絶対に手を差し伸べたりはしないぞ!!」
は?
「いや、それって当たり前じゃない?」
「そうでもないぞ!!我は貴様が伴侶となってくれるならば、あんな羽虫いくらでも退治してくれよう」
「話がややこしくなるから、お前は黙ってろ」
ぺちりと幼女モードのオールの額を叩く。
「まぁ………、確かに助けないわね………」
「当然だ」
エキドナさんとアベイユさんも頷く。
「な、なぜ平然としていられるっ!?貴様など、私の軍勢の前では一捻りなのだぞっ!?
さては、私の軍勢をコションと同程度だと思っているのだな!?見くびるなよ、我が軍勢は数万を数える大軍勢なのだ!!」
ああ、そりゃ、信頼の迷宮を越えるのは大変そうだね。
「だから?」
「ぐっ………」
「では決をとろうかの。第13魔王、アムドゥスキアスを排除する事に同意の者は手を挙げい」
総括するように、オールが会場中に響き渡るような大音声をあげる。
手を挙げる者は1人もいなかった。
「き、貴様等っ!!」
あ、ピエロがヌエと3つ目に食って掛かった。
「悪いが、我輩はその連合とやらを降りさせてもらおう。こうなってしまえば活路はない」
「あ、某もっす。っていうか、そもそも第13魔王さんの所に攻め込むなんて話は聞いてないっすよ」
あーあ、目の前で連合とやらが瓦解し始めたぞ。
どう収拾つけんの、コレ?