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 ホントさぁ、そういうの良くないと思うよ。マジで。絶対やめよう。ね?ねっ!?

 「『逢魔が宴』ねぇ………」


 僕は一言呟き、テーブルに突っ伏した。


 「ちょういきたくねー!!」


 魔王が集まって会議!?ハッ。ろくに社会秩序も作れない連中が会議?どう考えても生産性のあるものになるとは思えん。


 「そうふて腐れないでよ。自分が呼ばれなかったからってさ」


 タイルの困ったような笑顔に、オールも追随する。


 「そうじゃそうじゃ。あんなもん、ただ飲み食いしてどこぞの魔王の主張を聞き流すだけの下らん宴じゃ。

 ホレ、そんなに出席するのが嫌なら、我と貴様で宴をしようぞ。そして子作りもしよう!!」


 「そんなわけにもいかないよ、オール。『逢魔が宴』にキアス君を呼ばなかったのは、キアス君に聞かれたくない話をする為だろうからね」


 いやいや!別に悔しいとか寂しいとかじゃないし!いや、マジで。


 ただ、魔王って何となく実力主義みたいな?こういうせこい真似とかしないと思ってただけだし。


 ハッ。下らねーっての。群れたきゃ群れな。ハブりたきゃハブりな。どうせそっちに行くつもりなんかなかったんだよ、僕は。


 「キアス、お風呂、入る。元気」


 あぁ、なんか気遣ってくれるエレファンがマルコやミュルに見える。

 そういえば、魔法が使えないって気付いた時も、風呂に入って気を取りなおしたんだっけ。


 「ホラ、顔を起こして。ボク達はキアス君の味方だよ。ね?」


 「ん。キアス、好き」


 「そうじゃ!!ハッ。あんな小物共、キアスの足元にも及ばんわっ!!どいつもこいつも狡っ辛く暗殺者など差し向けおって!!いざ我が目の前に立てば、小便ちびって平伏するような阿呆共よ!!

 ホレ、我の目の前にグリフォンの背に寝そべり現れた貴様とは雲泥であろう?」


 なんか、いたたまれなくなってきて顔を起こす。


 恥ずかしい!!3人に励まされ、気を使われ、僕はそれまで腐っていた自分を叩き潰す!!


 下らねー下らねーって腐ってるなんて、やっぱ違うよね。


 「よっしゃ!!


 じゃあどうやって僕と敵対するつもりなのか、是非とも御拝聴させてもらおうか!!


 その小物達が、どんだけ小物なのか、直々に確認しに行ってやんよ!!」


 ウジウジするなんて僕らしくない。敵の本拠に口笛吹きながら入っていくのが、僕という魔王たるスタイルなのだ。


 「あは。やっぱキアス君は笑ってた方が魅力的だよ」


 「あっはっは!存分にホレていいぞ!!」


 「我はもうとっくにベタ惚れじゃ!傲岸不遜な貴様こそ、我の伴侶に相応しい!!」


 「黙れ変態。僕はまだまだ父親になるつもりはないぞ!!」


 「キアス、元気でた」


 「おう!エレファンのお陰だ。よーしよしよし」


 絹のような指通りの銀髪を、少々乱暴になで回す。なんか、癖になりそうな感触だな。


 「あ、でも、『逢魔が宴』は明日だから、今すぐ出ないと間に合わないよ。ボクがキアス君が呼ばれてないのに気付いたのって、この忙しい時期にわざわざ真大陸に行ったのに気付いたからなんだ」


 「我はレライエに聞いた。どうせならばキアスと一緒に行こうかと思って訪ねてみれば、どうやらキアスが呼ばれていないという事に気付いてな」


 オールはともかく、タイルの情報網ってどうなってんだ?

 僕がネージュやトルトカ、ガオシャンに行ったのなんて、ホント、仲間か王達本人しか知らないんだぞ?


 「護衛は1人までだよ。でないと、戦争になりかねないからね」


 「ならば我の護衛としてレライエを連れていこう。実質キアスの護衛じゃな」


 「なんならボクたちの護衛としても、キミの仲間を連れてこうか?」


 いや、そこまで過保護にされても。逆にナメられそうだ。


 「いや、護衛はレライエとパイモンだけで良い。っと、だったらレライエの武装も整えないとな。こんな事になるなら、もっと早く取りかかるんだった。これじゃあ、今ある中から選ばないとな。なんか良いのあったっけ?」


 うん。行くとなれば急がなきゃな。


 「エレファン、タイル、オール、飯でも食っててくれ。僕は急いで準備を整えるから」


 ああ、全く!!


 忙しいったらありゃしない!!







 「武器、ですか?」


 「そう」


 とりあえずレライエとパイモンを呼び出す。パイモンはオーク達と畑仕事をしていたらしいので、そのまま風呂に入れた。レライエの仕事は、前にオールが送ってきた女の子達に任せてある。ちょっと心配だけど、ロロイさん達と密に連絡を取り合うように言ってあるので、なんとかなるだろう。なんとかできなければ、全員オールに送り返すだけだ。


 そして、呼んだレライエに使いやすい武器を選んでもらっている。


 「武器は長物を少々たしなんでおりますが、魔王様が集まる場に持ち込むのは、少々問題があるかもしれませんね」


 そういうもんかね。


 「剣は問題ないの?」


 「はい。長物はどうしても刃が見えてしまいます。布や鞘で隠したところで、どうしても威圧的になってしまいますので」


 「要はビビらせちゃうと。じゃあこれなんてどうだ?」


 僕が取り出したのは、180㎝程の薙刀に近い武器。刃が長く、柄は長柄の武器にしては短い。


 長巻と呼ばれる、室町時代辺りの武器だ。


 本来、野太刀と薙刀の中間のような武器なのだが、これは携帯性を高めるために小さく作ったものだ。しかも柄が真ん中で切り離せるので、剣として腰に差す事も出来る。因みに、もう半分の柄にも石突きに刃があるので短槍のような姿だ。


 「よい武具です。剣を腰に差し、短槍をもって周囲を欺き、いざ事が起これば繋げて長柄とするのですね。取り外しもしやすいので、あまり時間もとられないでしょう。ただ、柄の強度は少し下がってしまいますね………」


 「そうなんだ。携帯しやすい長柄の武器を造ろうと思ったんだけど、中々上手くいかなくてね」


 「いえ、これ程の武具であれば、それくらいなんの瑕疵にもなりません。取り回しがしやすく、威力も高そうです」


 まぁ、元々斬馬刀の柄が長くなって使いやすくなったものだからね。


 「これにいたします」


 「他のも見なくて良い?」


 「はい。キアス様が妾にと選んでくれたものですから」


 むしろ、こんな急場凌ぎ的に選んでしまったのが申し訳ないな。今度ちゃんとレライエ用の武器も用意するから、しばらくはそれを使ってくれ。


 「じゃ、よろしく頼むよ」


 「はい。我が身命に代えましても、キアス様の御身を守らせていただきます」


 相変わらず堅いなぁ。もうちょっとフランクに接してくれて良いんだよ?


 これでパイモンが風呂から上がってきたら準備は完了だ。




 コソコソ僕をのけ者にして魔王共が何をしてんのか、確かめに行こう。





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