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 4人の魔王っ!?

 「やっぱりすごいなぁ〜このお風呂」


 僕の自慢の湯殿に、感嘆の言葉を漏らすタイル。当然全裸。


 タイルは身長が僕と同じくらいなので、その裸体を鑑賞するのにも細心の注意が必要だ。


 少女のような矮躯に、慎ましいを通り越して平坦な胸。水を弾く柔肌に、天使を思わせる金の癖っ毛。背中から飛び出した4枚の翼が、漆黒ではなく純白でもなんの違和感もない。


 「ん?あは。相変わらずキアス君はボク達をエッチな目で見てくるなぁ。これでも、ちょっと恥ずかしいんだぞ?」


 バレテーラ。


 「タイル、ボク、先にしゃんぷー、する」


 そしてエレファンの完璧な美。


 なんか久しぶりだと余計にクるものがあるな。


 「しゃんぷーとりんすは、エレファンのお気に入りだね」


 「ああ、正直エレファンはこれを貸したから仲良くなったような気さえする」


 「あははは。無きにしもあらずな可能性だね」


 皆で一緒に入りたかったけど、パイモンやフルフルはどっか行っちゃったし、トリシャはとっくにアムハムラに送ってしまった。マルコとミュルは、常にどっかで遊び回ってるし、レライエはいたけど、ウェパルをこの面子に混ぜるのは忍びなかったので、一緒に下がらせた。時刻はまだ昼前だし、仕事の邪魔をするわけにはいかなかったからね。


 つまり今ここには、僕とタイルとエレファンしかいない。魔王が3人も集まっているのだ。しかも『魔王の血涙』に。真大陸から見たら、この状況は深刻な世界の危機なんだろうな。


 前にも一度あったけどね。







 「はぁあぁ〜。やっぱりいいねぇ〜、広いお風呂。ボクもさ、自分の支配地域で作ろうとしたんだけど全然うまくいかなくて、結局桶みたいな小さな物しか出来なかったよ。魔族ってほんっと不器用だよねぇ〜」


 広い湯船に浸かりながら、タイルが天上にでも昇らんばかりに気持ち良さそうに言う。

 そりゃあ、魔族の技術力じゃ、この風呂の再現は厳しいだろうな。


 「そういえばさ」


 なぜか風呂の中で仰向けに浮かんでいるエレファンを見ていたら、タイルから声をかけられた。


 「キミ、真大陸でも結構有名になってきてるみたいだね?」


 ん?何でタイルにそんな事がわかるんだ?


 「えーと、ズヴェーリ帝国での奴隷解放宣言でしょ。それと、アドルヴェルド聖教国での勇者救出。ああ、あと、こっちは全くキミの名前は出てこないけど、アムハムラ王聖騎士襲撃事件もだね。結構幅広い人脈があるみたいで、お姉さんは感心したよ」


 「おい、ちょっと待て!」


 なぜそこまで真大陸の事情に詳しい?果ては、アムハムラ王本人か、トリシャしか知らないような裏事情まで。


 「ああ、言ってなかった?ボクは元々人間の魔術師でね、時空間魔法が使えるんだ。元々真大陸に住んでたんだから、あっちに跳ぶ事だって出来るさ。あ、ボクは無理だけど、エレファンなら直接空を飛んで行けるかもしれないね。まぁ、エレファンは人間があまり好きじゃないから、真大陸には近付きたがらないと思うけど」


 あっけらかんと言ってみせるタイル。くそっ、ここにも転移使いがいたか。やっぱり転移対策は必要だな。使える奴がほとんどいないって、僕の知り合いに既に2人もいるんだけど!?


 「それと、アヴィ教ね。キアス君を邪魔しようとしてた枢機卿を殺したら、なんだか余計面倒くさい事になっちゃったみたいだね。ごめんね?」


 「あの枢機卿暗殺はお前の仕業だったのか。まぁ、あのあと起こったのは、枢機卿暗殺に託つけたカツアゲだったからな。別にタイルのせいじゃないよ」


 「そう?アドルヴェルド聖教国では、枢機卿暗殺までキミの仕業になってるけど?」


 なぬっ?あ、でも考えてみれば当然か。僕はあそこに変装して忍び込み、あの変態勇者を堂々と騙し打ってシュタール達を助けたんだ。枢機卿暗殺と結びつけて考えられるのも無理はない。実際、魔王の仕業ってのは間違ってないわけだし。


 「ま、別にいいさ。今のアヴィ教には、既に真大陸全土を動かす力なんてない。負け犬の遠吠えさ」


 「さぁ、それはどうかな。手負いの獣が一番怖いとも言うからね。せいぜい油断せず、真大陸に平和をもたらしてくれたまえ、キアス君」


 「別に僕は、世界を平和にしようなんて御大層な事は思っていないさ。僕の身の回りで煩わしい事さえなければ、他で何してようと構うもんかっての」


 そう。別に僕は人間の味方ってわけじゃない。僕の平和を脅かす全ての者の敵ってだけだ。


 『それは、世界平和を謳うより、敵の多そうな野望ですね』


 あ、4人目の魔王が、喋った。


 「相変わらず、キアス君のコレは不思議だねぇ。全然魔力の発動を感じないのに話しができるなんて。不思議な魔道具だよ」


 アンドレ専用の机に、タイルがスイスイと近寄る。あんまし喋るなよ。持ってかれたらどうすんだ?


 『私にはアンドレアルフスという名前があります。コレ、などというぞんざいな扱いは許しませんよ?』


 「え?あ、ごめんなさい」


 お前は最強かっ!?







 「キ、キアス様………」


 あれ?レライエが服を着たまま大浴場に入ってきた。どうしたんだろ?


 「実は―――」




 「久しぶりじゃの!!」




 言いづらそうに口ごもるレライエの背後から、ソイツは現れた。


 「会いたかったぞキアス!!我をここまでタラシ込んでおきながら、1度も音沙汰無しとはどういう了見じゃ!?」


 輝くような赤みがかった金髪に、金の瞳。全裸でありながら堂々と腕を組み、2本の足で超然と仁王立ちの幼女。


 「………母上が訪ねてきました………」


 それは第4魔王オール・ザハブ・フリソスの、幼女モードだった。


 おい待て、僕今全裸だぞ!?襲われたらどうすんだっ!?


 「ほぉお!!見事な湯殿じゃ!!我とキアスの睦事に相応しき優美さよ!おぉ!背後のこの絵も素晴らしいのぉ。益々気に入った!!」


 ホラ、いきなりこんな事言い始めてるし。レライエも何で通したんだよ!?


 「やぁ、オールじゃないか」


 「ん、オール」


 「なんぞ、エレファンとタイルも来ておったのかっ!!選り取り見取りじゃな!!」


 パイモン王子はどこだっ!?ヘルプ!!ヘルプマイチェリー!!


 「母上、キアス様に大事な用があったのでしょう?」


 「えぇい、水を差すでないわレライエ!!元はといえば、貴様があまりに不甲斐ないからであろう!一向にキアスから子作りをせがむ文が来ぬではないか!!」


 ないない。そんな事態はコションが生き返るくらいあり得ないっての。


 「あははは。なんだか面白い事になってるね。オール、今日キミが来たのってもしかしてボク達と同じ用件?」


 「恐らくはの。

 キアス、貴様を『逢魔が宴』に誘いに来たのじゃ!!」


 「『逢魔が宴』?」


 なんじゃそりゃ?


 「やっぱり知らなかったんだね」


 苦笑するタイルと、腕を組んだままつまらなそうに鼻で笑うオール。エレファンは相変わらず風呂に浮いている。


 「こすい連中じゃ。集めた理由も見当がつくというものよ。


 キアス、『逢魔が宴』というのはな、要は全ての魔王を集めて行う会議の事じゃ!!」




 は?なにそれ、聞いてないんだけど?


 っていうか、僕のゆっくりのんびり過ごす計画はどうなるの!?





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