遊びに行った後別れるのって、なんか寂しいよねっ!?
「キアス様、ご無事で何よりです」
「ご主人様!マルコとミュルも!よかったぁ」
ソドムの広場まで転移してきた僕は、駆け寄ってきたトリシャとウェパルに手をふる。まぁ、計画通りとはいかなかったけど、目的は達したな。
「なんやなんや!めっさ可愛い原石がおるやん!!この子、髪切ってもっと可愛い服着たらメチャクチャ可愛くなんで!!」
失礼な。ウェパルは今でも充分に可愛いっつの。でもアレだな。丁度いいから、サージュさん監督の元ウェパルの散髪でもするか。僕は素人だから手を出せなかったけど、この人なら女の子の髪型にも詳しそうだ。
「あ、あのっ、ご主人様、この方は?」
「ウェパル、気にしたら敗けだ。
サージュさん、もし良かったらウェパルの髪、切ってみません?」
「エエの!?」
「ウェパルが了承すれば」
「話せるやないの、キアス君!!
君、ウエパルちゃん言うねんな?どや、ウチに髪切らせてくれん?」
「ぇ、ぁ、ぅぇ?」
「キアス君やて、可愛いなったウエパルちゃん見たいと思うねん。心配しぃな。ウチは今まで何人もの女の子の髪切ってるし、可愛くしたんで?」
「ご、ご主人様ぁ………」
「僕も、ウェパルの髪はそろそろちゃんと切らないとと思ってたんだよ。お願いしてみたら?」
「ぅぅ………。はい、わかりましたぁ。あ、あの、よろしくお願いしますっ」
勢いよく頭を下げるウェパル。うんうん。ウェパルはいつだって可愛いけど、もっと可愛くなって帰っておいで。
「ほんならちょっとウェパルちゃん借りるわ」
「ええ。僕の店舗があるので、そこを使ってください。ウェパル、案内してあげて」
そして厄介な肉食系女子の排除に成功!!
「シュタール殿、お仲間の皆さんもお久しぶりです」
「こちらこそ、会えて嬉しいよトリシャ姫」
「この度は災難でしたね」
「ええ。トリシャ姫も力を貸してくれたようで、本当にありがとうございました」
振り向けば、トリシャとシュタールが挨拶を交わしていた。
っていうかシュタールが常識人ぶってるっ!!気持ち悪っ!!
「なんだよ?俺だってこんな堅苦しいしゃべり方ヤだっつの。しゃーねーだろーが、トリシャ姫王族だし。
それより、俺教会に剣とか置いてきちまったんだよ。安くていい剣譲ってくれ!!それであの長剣とかマン・ゴーシュ並みの剣買えるだけの金貯めっから!!」
「へぇ。じゃあこれは要らないな?」
僕は腰からメル・パッター・ベモーを取り出す。長っ!なっがぁ!!
「お、おいマジかよっ!!取って来てくれたのか!?」
「まぁね。でも、もしかしたらこの剣、お前のじゃないかもな?」
「へ?」
「お前のならこの剣の名前くらい言えるよな?」
「いや、売った張本人なんだからわかんだろ!それは俺のだって!」
「いやー、最近物忘れが酷くて。あれ?シュタール、もしかしてホントに剣の名前わかんねーの?やっべー、マジで間違えて持ってきちゃったかも。僕ちょっとこれ、教会まで返してくんね?」
「さーせんしたぁ!!これからは魂に刻んで忘れないようにすっから、どうか返してください!!」
「ったく。メル・パッター・ベモーだ。僕だって出来れば手元に置いておきたかった品なんだからな。名前くらい覚えろよ?」
「メル・パッター・ベモーなっ!もう絶対忘れねぇ!」
「他の人の武器なんかも、纏めてこの袋の中に入ってる。せっかく売ったんだから大事にしてくれよ?」
「ああ。二度とこんな事にはなんねーから、安心しろ!!」
不安でしかたねーよ。
言っとくけどマジで次はねーかんな!!
シュタールは嬉しそうにミレやレイラやアルトリアさんの持ち物を配る。
「キアス殿、少しいいか?」
「何ですか、アニーさん?」
「ここではマズい。後で2人きりで会えないか?」
「いいですよ。そうですね、では今夜1人で部屋にいてください。使いの者をやります」
「ああ、了解した。8時くらいから部屋で待っていよう。宿はこれから取るのだが………」
「ああ、いいですよ。聞かなくても大丈夫。この街で僕が知れない事なんてありませんから」
「っ!!………わかった。待っている………」
息を飲むアニーさん。僕は彼女に微笑みを返すと、仲間達の元へと歩き出した。
「パイモン、フルフル、トリシャ、マルコシアス、ムルムル。
帰ろう」
僕が仲間の元に戻り、アニーさんはシュタール達の元へと戻る。
「じゃあ、僕達はもう行くよ」
「あ、おい、キアス。もういっちまうのか?」
「ああ。言ったろ?僕はお前と違って忙しいんだ。これからまた仕事さ」
「大変だなぁ。ご苦労さん」
「ああ。お前らも頑張れよ?」
「キアスさん!お仕事頑張ってくださいッス!また会いましょうッス!」
レイラはとりあえず語尾に『ッス』付けることにしたんだな。違和感バリバリだけど。
「キアス様、次こそは、次こそは私めを………っ、どうか………、どうか………っ!!」
うん。アルトリアさんはアレだな。もう手遅れだな。
「………また、ね………」
ミレは相変わらず誰かの後ろに隠れて僕と話すのな。こんなに優しい僕の、一体何にそんなに怯えてるのやら。
アニーさんは黙って一度頷き、まっすぐと僕を見てきた。
もしかしたら、コイツ等とこんな風に話すのも、これで最後かもしれないんだなぁ………。
今夜、アニーさんとの話次第だけどね。