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 勇者会議っ!?

 とりあえず、話だけでも聞いてみることにした。


 城壁都市ソドムの広場で待ち合わせをして、通信を切る。


 「シュタールが拘禁、ねぇ………」


 あんな根無し草みたいなシュタールを、拘束して監禁するなんて事、本当に出来んのかね。大体、適当に暴れるだけで牢屋だろうが手錠だろうがぶっ壊せちゃうだろ、アイツなら。




 一度、僕の持つ店舗の屋内に転移して、広場を目指す。


 お、アニーさんいた。やっぱ美人は目立つなー。


 「お待たせしました」


 「キアス殿。なんの、こちらから呼び立てたのだ、待つのは当然だ。私は転移を使って跳んできたから、遅れるわけもないしな」


 いや、僕も転移で来たし。


 「とりあえず、どこか落ち着いて話のできる場所へでも。今のままじゃ、状況がさっぱりわかりませんから」


 「すまないな。この場合、頼れるのはキアス殿だけだったのだ」


 ふぅん。ま、よくわからないけど、別に力ずくで助けるのを手伝ってくれ、とかではないだろう。アニーさんはそんな短絡的な人じゃないし、彼女にとって僕はただの商人だ。







 「何から話せばいいのかな。うむぅ………」


 とある食事処に入った僕たちは、注文をおざなりに済ませ、向かい合って座っていた。


 「そうだな、まずはここからアドルヴェルドに戻ってからについて話そうか」


 それってもう1週間以上前の話だよね。長くなるのかな………。


 「まず、我々は言われた通り教会に出頭し、アムハムラ王襲撃事件について話した。オンディーヌについては散々聞かれたが、キアス殿の事は伏せて話した。聴取などで時間をとらせるのは忍び無かったうえに、アムハムラ王が話した内容を復唱する為だけに、アドルヴェルドへ行かせるのは、あまりに無体というものだ。キアス殿にも都合があるのだから」


 「ありがとうございます。おかげで商いは滞り無く繁盛しています」


 「おっと、話が逸れたな。

 その後、ユヒタリット枢機卿暗殺についても聞かれたのだ。我々には、なぜか彼からの呼び出しもかかっていたからな。

 だが、蓋を開けてみればそれは聴取などではなかった。何故か我らが暗殺を首謀した決めつけられ、おまけにアムハムラ王襲撃事件までもが我々の仕業と疑われたのだ。


 我らは、たまたま集まっていた勇者達との会議中、突然拘束され、牢に―――」




 「ちょっと待った!!」




 アニーさんの話を、右の手のひらを向けて遮り、僕は確認する。




 「勇者、たち?」




 今この人勇者達って言った?え、なに?勇者って複数いんの?てっきりシュタールが唯一の勇者なんだと思ってたんだけど?


 「なんだ、キアス殿は知らなかったのか。勇者は全部で5人居るのだぞ」


 なんだその『エスプレッソ、ジョッキで』みたいな台無し感!?多けりゃいいってもんじゃないんだぞ!?

 1ピースのケーキと、ホールのケーキみたいなもんだ。勇者5人なんて胸焼けする情報は、できればもっと前準備を整えてから聞きたかったよ。


 「大丈夫か?なんだか突然顔から生気が抜け落ちたが?」


 「ええ、なんとか………。

 続けてください」


 「正確には、教会に認められている『勇者』はシュタールだけだ。シュタールは光属性の加護があったからな。だが、アヴィ教以外の場所では、他の勇者も勇者として認識されている。


 受けている加護がそれぞれ違うんだ。シュタールが光の加護を受けているように、火、水、風、土の加護を持つ勇者がいる。土の勇者は、現在どこにいるかはわからないな。今回集まった勇者は、シュタールを含めて4人だ。


 この4人で会議をしていたのだが、そこへ教会が踏み込んできてシュタールを拘束した。他の仲間も皆捕まったのだが、私は隙を見て転移を使って逃げおおせたというわけだ」


 「あの、シュタールやミレさん、アルトリアさん、レイラさんなら、そう易々と捕まるとは思えないんですけど。強行手段でもって逃げれば良かったんじゃないですか?」


 「確かに強行突破は可能だったろう。他の勇者さえいなければな。

 勇者の1人、火の勇者がミレを捕らえ、我々は動けなくなった。よく考えれば、奴の対応は早すぎたな。もしかすれば今回の一件、奴が噛んでいるかもしれん」


 「成る程。これまでの経緯は大体わかりました。

 それで、アニーさんはなぜ僕を呼んだのですか?僕はしがない商人ですよ?

 いくら付き合いのあるシュタールが捕まったからといって、助けに行くなんてとてもできませんよ?」


 「ああ、いや、そういうつもりで呼んだわけではない。

 本題を言うが、転移の指輪を5つ、用立ててくれないか?」


 「転移の指輪ですか?」


 それならアニーさん達は予備を持っていたはずだ。


 「第13魔王の調査報告として、ダンジョン内で手に入れたアイテムの多くを、教会に提出してしまったのだ。

 しかも、おそらく拘束されている場所では魔法が使えない。魔法の発動を阻害する術式を刻んだ牢に囚われているはずなのだ」


 「え?それじゃあマジックアイテムも使えないんじゃ………」


 「いや、マジックアイテムは使えたぞ?以前行った際に、マジックアイテムの鍵を使った牢を見せられたからな」


 んん?マジックアイテムも魔法も、大元は同じ魔法だ。魔法が発動できないのに、マジックアイテムが使える術なんてあるのか?


 もし本当にそんなものがあるなら、転移対策にはうってつけだ。あ、でも普通の魔法も阻害するのか。それだとダンジョンには不向きか?


 「ご用件はわかりました。かような次第であれば、僕としても指輪を用立てるのはやぶさかじゃありません」


 「恩にきる。それと、代金なのだが………」


 「わかっています。今は火急の事態ですので、今日のところはツケで構いませんよ」


 「重ね重ねかたじけない」


 「ただ、僕は必ず代金はいただきますよ。

 だから捕まらないでくださいね。牢屋の中まで借金を取り立てにいくのは、骨ですから」


 「心得た」


 苦笑するように頷いたアニーさん。




 5日経っても、彼らは城壁都市には戻ってこなかった。





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