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 支配者としての義務っ!?

 さて、法を敷くことになれば、その法を考えなければならない。


 とはいえ、僕が持つ地球の法に関する知識は、日本の物に大きく片寄っているんだよな。銃刀法をこの世界に強いるわけにはいかない。あとは………三権分立くらい?


 というわけで、各町に目安箱を設置して、要望を募ることにした。バベル、アレクサンドリア、アカディメイア、城壁都市の真大陸側ソドム、魔大陸側のゴモラ、ゴーロト・ラビリーントも含め、全ての町に目安箱を置いた。


 因みに、それらを吟味するのはその町の代官であり僕ではない。いやー、人を雇うって楽でいいね。







 なんて思っていた僕を、今の僕はけたぐり倒したい。

 「キアス様、要望のあった井戸の設置なのですが、地面が掘れず難航しております」


 「アレクサンドリアでは水は問題ないのですが、一々塩を抜く行程を何とかして欲しいと。仕事の進捗にも関わります。ご一考を」


 「アカディメイアの学徒達が、目安箱に仕官の申し込みをするようになりました。教師連中も環境の急激な変化に戸惑っております。一度教育システムの見直しをされてはいかがでしょう?」


 オールの部下達からの上申には、各町の混乱っぷりが度しがたいレベルにまで達していることが窺えた。


 くそぅ………。相変わらずの自分のバカさ加減に嫌気が差す。これじゃあコションと変わらないじゃないか。


 「水道は城壁都市から流そう。今から新しい魔法を付与させて浄水施設を造るのは、得策ではないからね。コストも高くなるし。バベル、アレクサンドリア、アカディメイア全てだ。城壁都市側の浄水設備を少し拡張するだけで事足りと思う。

 アカディメイアの教育システムだが、学力に応じてクラス分けをするといいよ。教師達が僕の下で働くに値すると太鼓判を押せば、僕が口出しする事は何もない。すぐさま仕官させよう。ただ、教師達の勉学の邪魔はしないでね。彼らには充分生活できるだけの給与と、勉学に当てるだけの時間をやって欲しい。金は僕が出す。

 それと、教育科目に武術も加えよう。武術の成績優秀者で、金に困っている者には自警団のアルバイトでもさせればいい。

 教師役は、君達は難しいよな?」


 時間もとれないだろうしね。案の定首を振るオールの部下を確認し、僕は顎を撫でて考える。


 僕の仲間から選ぼうにも、戦闘技能があるのはパイモン、マルコ、ミュル、フルフル。教師役に向いているのがパイモンしかいない………。でも、パイモンを長期に渡って貸し出すのは、僕の安全上も、精神衛生上もよろしくない。


 そうなると………。


 『成る程、戦闘技能の育成に、我が里のグリフォンを雇用すると?』


 「はい。シルドさんの所のグリフォンなら、練度も戦闘能力も高いのでうってつけかなと。あ、上級の魔物の定期討伐の件は、この件とは無関係なので考慮しないでくださいね。あれは、僕たちのためでもあるんですから。


 それとは無関係に、手伝ってくれた方には給与を用意しています。こっちでお金を稼いで、食料や便利なマジックアイテムを持ち帰えれば、そちらでも重宝するかな、と」


 『フフフフ。いや、我の憂慮はそこではない。それを抜きにしても、恐らく希望者が殺到しそうでな。

 貴殿が思っている以上に、我らは貴殿に感謝しているのだぞ?』


 感謝って、別に感謝されるようなことをしたわけじゃないだけどな。ダンジョンの燃料として魔物を狩ったり、薬の実験台として病人を利用したり。


 うわ………っ。言葉にしてみたらホント、最低な感じだ。せめてこっちに来てくれるグリフォンには、高給を弾もう。でないと僕が良心の呵責に押し潰されそうだ。


 『ともあれ、了承した。群れの者にも伝えておこう』


 「ありがとうございます」


 最初はあの里を訪ねたのは失敗だったと思ったものだが、今になってみればあの里の存在なくしてこの状況はあり得ないんだよなぁ。これからも親密なお付き合いをする事にもなるだろうし、一度挨拶にでも伺おうかな。華蜜酒の取引をするためにも、リリパットとの縁も欲しいし。バベルで超ウケると思うんだよねぇ、あのお酒。カジノで大勝した奴向けの高級酒として取り寄せたい。







 「ました、疲れる?」


 「それは『疲れてる』が正しいな」


 「疲れ、てる」


 「良くできました」


 胡座をかく膝の上にミュルを乗せて、僕は陳情書に目を通していた。中には文字を書けない者が絵で描いたものもあり、読むだけで一苦労だ。しかもこれ、代官達が一度選別した上で寄越した書状なのだ。内容的にもおざなりにできない物ばかりなのである。


 「ミュル、おてつだい、する?」


 「ありがとう。でも、大丈夫だよ。ミュルはいい子だね」


 ピンクの頭をぐりぐり撫でる。


 「えへへへ」


 嬉しそうだ。この笑顔に癒される。あれだな、猫を被る女の子に騙される男って、わかっていてもこういう笑顔に騙されたくてなのかもな。


 「ました、お仕事。ミュル、静か」


 「『静かにする』かな?ありがとう。あんまり気を使わなくても大丈夫だよ。なんだったらマルコやフルフルと遊んでおいで」


 「んーん、遊ばない。ました、一緒。ミュル、嬉しい」


 「そっか。じゃあとっとと仕事を終わらせてミュルと遊ぶかな」


 「うん!!」


 いいお返事です。





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