無血侵略っ!?
バベル。
傲慢の都。
山を丸々1つ町にした、塔のような町である。側面は北側以外に棚状の農耕地があり、内部は居住及び商業スペースとなっている。
名前の由来は言わずもがな。だって作ってみたらまさにそんな感じなんだもん。
アレクサンドリア。
水の都。
海に近い場所に作った町だ。いや、ベネチアとか憧れるじゃん。そんな感じ。
水路が張り巡らされ、車の無いこの世界では交通の便のいい町になる。広い町なので、ダンジョンのアイテムを卸すのにはうってつけの町である。
アカディメイア。
知識の都。
ここは一風変わった町にする予定だ。いわば学園都市。いや、超能力者を育てるわけじゃないよ?普通に普通の勉強をする町だ。
ただ、社会秩序、経済観念、算術の認識の低い魔族達に、ここから学問を広めようという思惑はある。
3つの町それぞれに特色があり、バベルは外壁を黄鉄鉱で作り、アレクサンドリアは町の至るところにステンドグラスの細工があり、アカディメイアは大理石と黒曜石のモノトーンの町だ。
傲慢の都が偽りの金ってそれっぽいでしょ?
ああでも、ただベタベタ金色にするなんてセンスがないから、内部は黒曜石が町のほとんどを構成している。金色なのは一部だけで、その存在を際立たせた。
アレクサンドリアのステンドグラスはその逆で、あちこちベタベタと張り付けた。ただの民家にも、必ず1つはステンドグラスがある。
アカディメイアは、そういった特色を一切省いた事が特色と言っていい。落ち着いて勉学に励むため、あまりケバケバしくない町にしようと思ったのだが、町のほとんどの建物が直方体で白黒のモノトーン。なんかモダンアートの町っぽくなってしまった。
まずはこの3つから始めようと思う。少なければまた作ればいい。
「まずは住民の呼び込みだ。ロロイ、バルム、アルル、君たちの町に流れてきた住民で、まだ城壁都市へ行っていない人達はこっちに連れてきてくれ」
「「「はっ」」」
いや、そういう堅苦しい返事とかいいから。
「町の管理をする人員はレライエが選んでくれ。それと、もう一度各代官に書状を送るぞ」
「人員の選出は問題ありませんが、書状はどういった意図がおありなのですか?宣戦布告か、降伏勧告でしょうか?」
「まさか。書状はただのフェイクだよ。なんなら前の物を丸写ししたっていい。本命は町に留まっている時に、この町の宣伝する事だ。奴等の町の住人を根こそぎ奪うつもりで、派手にやれ」
「成る程。キアス様のお考えを察せぬ我が身を恥じるばかりでございます。
ご下命承りました。必ずや、ご期待以上の成果をキアス様にご報告いたします」
仰々しい返事もいいから。
よっし!どんどんいくぞぉー!!
まずバベルは娯楽だ。娯楽。
通貨を使わせるためにも、一攫千金の夢を追わせ、そしてむしり取る!!
真大陸から酒を買い漁ってきて、カジノも置く。ルーレット、カード、サイコロ、何でもござれ。
エッチなお店は無しで。童貞のやっかみと笑わば笑え!!現代日本より厳しい風営法を敷いてやる!!
賭博、それは胴元が絶対に儲かる金の成る樹だ。
ふははは!!
魔大陸1のカジノ王に、僕はなるっ!!
アレクサンドリアには船だ。運河用の船、漁のための船、投網、定置網の設置、各商店の充実も外せない。食料等、生活用品の店は放っておいても大丈夫だ。僕が置くのはマジックアイテムの商店。そう、ダンジョンのマジックアイテムの中でも、生活用品向けのアイテムを置く。今は売り上げは少ないだろうが、いずれ生活水準が高くなってくれば、引く手あまただろう。ついでにダンジョンの宣伝もすれば、カジノのような一か八かの儲けは望まぬ、腕に覚えのある者はダンジョンに流れる。そいつが得たアイテムを、ここから流し、さらに顧客ゲットを狙うのだ。
アカディメイアには、たいした手間はいらない。本と本と本を揃える。僕の持つ、拙い数学知識、科学及び化学知識、経済学、社会制度の教本を揃え、ついでに錬金術の教本も作った。真大陸の魔法に関する学術書もできる限りかき集め、僕が知らない知識もここでは学べる。
正直、かなりお金がかかった。この世界の本、ちょっと高すぎ………。
ここまでやって、治安の悪いコションの元支配地域と僕の町、前者を選ぶような物好きは果たしているのだろうか?
いなかったらしい。
場所が近かった事もあり、1週間も経った頃にはコションの部下が治めていた町は、そのほとんどがゴーストタウンと化していた。いや、見たわけではないので伝え聞いた話である。
堅実な生活を望む者は、アレクサンドリアへ移り住み、荒くれ者、無法者はバベルへ流れた。勿論、こっちはコションとは違って治安の維持には細心の注意を払っている。バベルには、オールの部下5人中3人が常駐している。ロロイさん達の部下にもお願いして、無法な真似は絶対に許さない。
これからは警察のような、治安部隊は必要だな。城壁都市の住民から選抜するか。
問題はアカディメイアだ。ここにはほとんど人が来なかった………。
まぁ、バベルもアレクサンドリアも、居住区にはかなり空きがあるし、わざわざこっちに来るのは相当な物好きばかりだろうな。
12人ばかり集まった住人の内、7人を僕の直属としてスカウトした。各自ここで学び、その合間に僕を手伝ってもらうことにした。残りの5人は、勉学にあまり興味はなく、ただ家族について来ただけの者だったので部下にしても仕方がない。
と思えば、どこから話を聞き付けたのか、仕官を申し出る奴等がドヤドヤとアカディメイアに集まり始めた。
僕は泣く泣くスカウトした7人を教師役として、その町に置くことにした。くそっ!面倒臭い書類仕事とか、全部任せられると思ったのに!!
まぁ、アカディメイアで成績優秀だった者は、僕の配下にするって事でいいか。
ああ、城壁都市にも名前を付けたいけど、2つで1つっていうとアレしか思い付かないんだよなぁ………。
硫黄と火の雨は勘弁してほしいなぁ………。