1人でお留守番とか、やっぱ寂しいよねっ!?
とりあえず、一時しのぎとしてシュタール達を追っ払うことには成功したな。
まぁ、だからといって転移の対策は全然できていないわけだが。
「キアス様、どうかなさいましたか?」
「ああ、いや、なんでもないよ。
最近、全然風呂に入れなかったから、なんか格別だねぇ」
「はい。とても気持ちいいです」
帰ってきてすぐ、シュタールに会いにいってきたからな。ようやく一息吐けた気分だよ。
パイモンも気持ち良さそうだ。今回の旅では、色々と世話になったからな。ゆっくり休んでくれ。
ああ、そういえばご褒美がまだだったな。ちゃんと用意しておかないとな。
「っていうかフルフル、まとわりつくなよ。お前冷たいんだから」
「だって………、寂しかったの………」
僕の体に、スライム状になって絡み付くフルフル。まぁ、帰って来たとき飛び付いてきたからなぁ。
「キアスもいない、パイモンもいない、ウェパルもマルコもミュルもいないお風呂は、とっても寂しかったの………」
あー、わかるなぁ。僕も今は1人でお風呂にはいるって、なんかヤだもん。浴槽が広い分余計に。
「フルフル、マルコ、いるよ!」
慰めているのか、スライム状のフルフルを撫でるマルコ。濡れたからか、紅のモヒカンがぺたんとなってる。
「ミュルも、ました、ミュルも!!」
自分の体質を活かして、僕に絡み付こうとするミュル。
「やめろって。お前毒持ちだろうが」
「むぅー!!」
相変わらず、ミュルはあざと可愛いな。濡れても崩れないツインテールとか、違和感バリバリだけど。
「見事な浴場でございます、キアス様」
帰ってきた時の流れで、レライエまで連れてきちゃったのは誤算だったな。本当は、ここに他人を連れてきたくはなかったんだよな。アニーさんの例もあるし、プライベートなこの風呂に、仲間ではないレライエを連れてきたのには、やっぱ抵抗がある。
「キアス様と混浴とは、母上が知ったら歯を食いしばって悔しがりますね。うふふふ」
いやいや、こっちだって眼福です。
なめらかな白磁の肌に、薄紫の長髪が絡み、手の平に収まるくらいの謹み深い胸やお尻が露なレライエ。そそるかそそらないかで聞かれれば、断然そそる。まぁ、エロい目を向けているのがバレたら即逆襲されそうなので、あくまでこっそり盗み見る僕である。
「君は、僕とオールをくっ付けるために来たんだよな?」
「ええ、建前上は」
「は?」
いや、なんだその含みのある言い方は。
「そも、妾が此度の役目を志願した本当の理由は、あなた様にございます。
あなた様のご寵愛を得る、ただその為だけに妾は母上を騙し、今ここにいるのです」
おいおいおい。なんかいきなり物騒な話を始めやがりましたよ、この人。
「うふふふ。
ご安心ください。母上とキアス様を、無理に取り持とうなどとは思いません。妾はただ、妾がキアス様に気に入っていただけるよう、これから努める所存にございます」
く、黒い。なんかこの人黒いよ。
「うふふふふ。
狼狽えないでくださいまし、ほんの冗談にございます」
「え、あ、なんだ冗談か。もぅ、ホント、冗談がキツイなぁ〜」
「ええ。
どうやらこういう狡猾な女はお好きでないようなので」
「え?」
「独り言にございます」
「そ、そう………」
なんか、今までに会ったことの無いタイプだな、この人。
「君の部下達って、今何してんの?」
湯船でゆったりしながら、何も話さないのもどうかと思い、仕事についてレライエに聞く。
「ロロイ殿とバルム殿、それと………、なんといいましたかラミアの女性との折衝を行っております」
あれ?そういえば僕も名前を憶えてないや。あとでバルムさんにでも確認しておこう。影薄いんだよな、あの子。
「主に我らが管轄する領地についてや、そこを取り戻す算段について話し合っておりますね。もしかすれば、キアス様のお手を煩わせる事になるやも知れません」
「ん?そんなに切羽詰まってるの?」
確か、土地を離れた者はいるものの、治安の悪化から内乱紛いの状態とまではいっていなかった筈だけど。
「いえ、なんと申しますか………。
第11魔王様の部下の方達は、短絡的、直情的とでも申しましょうか、ただ我らが行って土地を明け渡せと言っても、まず間違いなく受け入れられないとの事で………」
ああ、やっぱ馬鹿ばっかなんだ、コションの部下。
「戦闘行為はキアス様の望むところではないとの事でしたので、中々良案もなく………」
「ごめんね、無理難題を言って」
「滅相もございません。これもまた、キアス様に認めていただくための試練と思い、必ずや彼の土地を無血で手に入れてみせましょう!!」
張り切ってんなー。まぁ、初仕事だしね。
「キアス?」
「ん、どうしたフルフル?」
僕に巻き付いたままのフルフルが、やや細い声で聞いてきた。
「この人誰なの?」
今さらだなぁ。