前門の虎っ!?
「ならば選りすぐりの部下と我が貴様の元へ行き、土地の管理をしつつ貴様に武器を造ってもらうのはどうか?」
「却下」
「むぅ………。
ならば精鋭数名を彼の地に送り、貴様はここで武器を造りつつ、子も作るのがいいな」
「却下だ!つーか、いい加減諦めろ」
「嫌じゃ。
ならばやはり、我が貴様の居城に住み込むしかないではないか!?」
「お前要らないから、部下だけ寄越せ!」
「ええぃ我が儘ばかり言うでないわ!」
「ワガママはお前だ!何で僕がお前なんか養わなきゃなんないんだっ!?」
こいつ、マジで話になんない………。何てワガママな奴だ。
え?僕がどうしたって?聞こえなーい。
「だから、人が必要だと言うなら我が骨を折ってやろう。その代わり、我を貴様の側へ置けと言っておる!!」
「い、や、だ!
お前みたいのを側に置いたら、僕は来年には父親だ!」
「良いではないか!!
子は宝ぞ!父になれば威厳も増そう。貫禄も出よう。
貴様と我の子ぞ。ゆくゆくは魔大陸に名を轟かす大魔王も夢ではないわ!!」
「あと20年は、独身を堪能したいよ………」
「我はつくす嫁ぞ?軍が攻めてくれば滅ぼし、魔王が攻めてくれば滅ぼし、勇者が攻めてくれば滅ぼし、貴様に苦労はかけんぞ?
浮気にも寛容だ。幾幾人でも女を囲え、子を作れ。我が皆育ててやろう」
「過激な良妻賢母だなっ!?
っていうか、また子作りの話になってんぞ!!」
いい加減この話も冗長だ。頼むから、もう諦めてほしい。
顔に『私はド変態です』と書いたままのオールと、先々の計画について話す僕。だが、これが中々進まない。オリハルコンの加工ができるのは、真大陸、魔大陸合わせても僕だけなのだろうから、こちらに歩み寄るかと思えば、オールは自分の都合ばかり押し付けてくる。是が非でも僕を囲い込むつもりらしい。
「僕はこれでも忙しいんだ。ここに留まることなんてできない」
「ならば我を連れ、事に臨めば良かろう。尽くす我、ちょっとよろめくであろう?」
「全然」
「むぅ………、貴様、つれないにも程があるぞ。我は、それほど魅力がないか?」
いや、今の姿は絶世の美女だし、さっきの幼女姿も美少女だったよ。はだけた着物の襟や裾にも、自然と視線が吸い込まれるし。
でもなぁ………。
行為ありきで誘われるのはどうも………。こんな美女に誘われてる現状に、全くときめかないのは、僕の性分のせいか、はたまたさっきの強姦紛いのオールの迫り方のせいか。
「とにかく、僕は今子供を作るつもりもなければ、オールと関係を持つつもりもない。あ、関係ってのは男女関係って意味な」
雌雄同体のコイツと僕との関係が、男女関係に当たるか否かは意見の割れるところだろうが。
「だから、今僕の側にいても仕方がないんだよ。僕の管理地に来た人から、順に専用の武器を造って、順次入れ替え。そっちのオリハルコンの在庫が尽きるか、僕の判断で打ち切り。
大体100人分くらいを目処にしてるから、そっちもそのつもりで人員を寄越してくれ。1つの武器の製作に1ヶ月、必要な人員は5人。半年交代にすれば10年間、僕とオールは良好な交流ができる。勿論その間、僕側で人材の確保ができても、この契約は続行だ。僕はそこで、それまでの恩を無下にするような不義理な男ではない」
「む?
えっと………、5人が1年で2組………、その10年分で、100人!!なんと!貴様、存外賢いな!
ますます子が欲しくなった!!」
やべー。コイツホントやべー。話通じねー。いや、通じてるのに通じねー。
「お前は本当にそればっかな?」
「当然よ。数百年、毎日毎日命を狙われ続ければ、子くらい残しておきたくなるのだ。でなくば、万一命を落とした時、我の生きた証はどこに残る?生きることとは、死ぬための準備ぞ。いつ何時みまかられようと、臨終の間際に笑えるのは、この世に確かな証を残した者だけじゃ。
だから我は、今この時落命しようとも、笑いながら往生して見せようぞ」
「………」
ふん。
別にカッコいいなんて思ってないし!僕だって20年くらいすれば、子沢山のハーレム作る予定だしっ!!
「お?なんぞ、貴様の好感度が上がった気がするの」
「気のせいだ」
「どうかの。
のぅ、キアス?」
「何だよオール?」
「貴様『親しい者以外を、呼び捨てで呼ぶつもりはない』、だったかの?」
「なッ!?」
いつの間にっ!?
い、いや、アレだ。きっとシュタールと同じで、蔑む相手も呼び捨てで呼ぶんだ、僕は。シュタールはバカだし、コイツは変態だ。呼び捨てが丁度いいと、僕の精神が勝手に判断したんだ。
「のぅ〜、もう一度呼んでたもれ?我をオールと、呼んでたもれ?」
「えぇい!しなだれかかってくるな!」
「つれない男ぞ。ひどい男じゃ。
だがなぜかの?貴様につれなくされる度、我が胸にメラメラと、形容できない気持ちが燃え上がっておる。
はッ!!もしやこれが恋っ!?」
「ただの欲求不満だっ!!」
本当に話にならん。このままじゃまた押し倒されそうだ。
白馬に乗ったパイモンはまだかっ!?