変態魔王っ!?
「フハハハ!猛ってきたのぉ!」
「おいやめろバカ!つかこんな衆人環視の中で!」
僕の上で馬乗りになったこの、趣味は子作り、性別不明、両刀使いの夜の魔王は、舌舐めずりせんばかりの表情で、服をはだけさせる。
「それがまた良いではないか。それともなんじゃ?閨で2人きりなら貴様は大人しくするのか?」
「っざっけろ!」
「カカカ。ならば致し方ない。まずはこのまま貴様の種をもらう。その後で、貴様を我の伴侶とする。
おぉっ!考えてみれば伴侶を求めたのは、生まれて初めてだ。子ではなく、元となる親からして欲しくなったのが、初めてだからかの?」
どうでもいいわ!
「うっさい!まず僕の上から降りろ!」
「むふふぅ〜。組み敷いて操を散らす、というのは、どうしてこうもそそられるのか。
貴様は雰囲気を重んじるようだし、まずは口を吸うてやろう」
「ちょちょちょっ!マジタンマ!マジタンマ!
ごめんなさいごめんなさい。謝るから、マジ謝るから!」
迫る唇を、なんとか上体を動かして避ける。避ける。避ける。
「謝って許すか。ええい!大人しくせよ!これではズボンが脱がせぬではないか!?」
「何逆ギレしてんだテメェ!?」
一進一退の攻防を繰り広げている僕らを、オールの部下は目を逸らして見ないフリだ。
後で覚えてやがれ!
「ほっほぅ。ここまで華奢な体を抱くのは初めてよ。ちょっと強く触れれば折れてしまいそうではないか。
しかし、よい。
新たな境地に達しそうじゃ」
ワイシャツを襟から乱暴に引きちぎり、僕の体を視姦する変態。いや、何この状況?マジでコレ強姦されんぞ?全然抵抗できねーしっ!
「どれ、味見を………」
再び近づいてくる唇。顔をホールドされてしまってもう逃げられない!!絶体絶命!!
「―――むぎゅ!」
やたら情けない声で、オールが吹っ飛んでいく。
「ご無事ですか、キアス様?」
何コレ?王子様?
ああ、いや、パイモンか。パイモンが変態を蹴り飛ばしてくれて、僕はやっと解放された。助かった。ホント助かった………。
「ありがとうパイモン………」
「いえ」
「なんじゃオーガ!我とキアスの睦事を邪魔するとはどういう了見じゃ!?」
「私の主はキアス様です。例え第4魔王様と言えど、キアス様に無礼を働くつもりであれば、私はあなたの敵となりましょう!」
やだカッコいい。パイモンさん、イケメン度が高すぎです。
「くっ!であえい!この不届きなオーガを取り押さえよ!」
オールさんの掛け声に、部下の人たちは、
見て見ぬフリだった。
「なッ!?貴様等、それでも我の配下かっ!?」
「我々は何も聞こえませぬ。
故に今までのオール様の所業も知りませぬ。故に今起こった事も知りませぬ」
一番上座寄りに座っていた、肌の色が真っ黒なイケメン兵士が、顔を逸らしながら呟いている。
「こんの、たわけ共!!
我が見初めたこの魔王と、我を取り持たぬか!!」
「独り言にございますが、射止め方に大いに問題があったかと。
………つか1度くらい痛い目にあえ」
「あー!あー!
今聞こえたぞ!?貴様は今月減俸じゃ!!」
「アムドゥスキアス様、我々でできるご助力があればなんなりと」
「なッ!?
寝返りおった!?寝返りおったぞこやつ!!誰か、こやつを捕らえよ!!」
もちろん皆知らん顔。
「大勢は決しました。オール様、御覚悟を」
呆然とするオールをパイモンが組み敷く。本来この人、パイモンがどうこうできるレベルじゃないんだけど、今は大人しくパイモンに取り押さえられている。
「キアス様、ご処断を」
うん。気が変わらない内に、この変態には罰を与えよう。
僕は袋の中からある物を取り出すと、それをオールの顔に近づける。
「な、なんじゃそれはっ!?く、臭いぞ!?
キ、キアス、許してたもれ。ちと悪ふざけが過ぎたのは謝る。じゃから―――」
「さて、僕が同じ事を言ったとき、君は何て言ったかな?」
僕は容赦せず、オールに刑を執行した。
『私はド変態です』
頬にデカデカとそう書かれたオールが、先程までの所業が嘘のように大人しく座っていた。
「うぅ………。なんと情けない姿だ………」
「フン!お前が悪い」
使い道の無かった油性マジックに、利用価値ができたのだけが不幸中の幸いだった。神様も、何で油性マジックなんて『製作』リストに入れたんだろ?
「なぜじゃ?
オリハルコンを生み出す我と、それを加工する貴様が組めば、最早敵なしではないか?」
「だから加工くらいしてやるっつの!
代わりに土地の管理を任せられる人材を貸してくれ」
「ならば我が行ってやろう!」
「いらん!お前に任せるくらいならミュルに任せた方がマシだ!」
こんな色情魔に任せたら、あっという間にソドムとゴモラが誕生する。
「貴様、先程より我を軽んじていないか?」
「ああ、朝のヨーグルトくらい軽いな。
で、お前要らないから、他の人貸して?」
「むぐぐぐ………。
いつか我の子を孕ませるからの!」
「僕は男だ!!」
「ならば我の娘の婿にならんか?さすれば我も娘も好き放題にしてよいぞ?」
「お前みたいな変態と一緒にするな。酒池肉林は自分で作る!!」
「それもどうかと思うがの………」
「フン。いきなり押し倒すような変態には、ハーレムの様式美はわかるまい」
「わからんの。我は生まれる子にしか興味を持たなかったからな。
だが、貴様が必要だと言うなら、我らの閨に美女を集めてやらんでもないぞ?」
「いけしゃあしゃあと、僕を囲い込む流れで話すな!!」
ああ、なんか厄介な奴と関わっちゃったな………。