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 金色の魔王っ!?

 どうやらオール・ザハブ・フリソスという魔王は、中々の有名人らしい。


 そういえば1度パイモンとの話に出たな。確かオリハルコン製の魔王だったな。オリハルコンかー。僕は別に要らないけど、頼まれたら加工くらい請け負ってあげてもいいかな。なんか失敗したって聞いたし。


 しかし全身がオリハルコンってどんなだろう?


 まだ見ぬオール君に思いを馳せ、僕は空の旅を楽しんだ。







 ガロの街、その中央に堂々と鎮座する宮殿の門前に、僕らは降り立った。家々は土壁が多いな。あまり知ったかは言えないけど、中東テイストな街並みな気がする。いや、詳しくは知らないけど。グリフォンの里から約5時間。結構遠かったな。


 空から降りてきた僕たちに、周囲は一時騒然とする。門兵の魔族が槍を構え、すぐさま援軍が駆けつける。


 そういえば、この馬車で人目も憚らず堂々と着陸したのは初めてだな。やっぱりこの世界では空を飛ぶ乗り物は異端のようだ。


 「控えい!控えよろう!」


 「いや、もう時代劇はいいよバルム」


 またも副将軍ごっこを始めようとしたバルムを制して、兵の1人に話しかける。


 「やぁ、僕らは別に怪しい者じゃないよ。とはいえ、こんな言葉をただ鵜呑みにしては君たちの仕事にならないのもわかってる。紹介状があるんだ。これをオールって人に届けてくれないかい?」


 「オール様に何の用だ!?」


 「うーん………、君たちに言っても仕方の無いことなんだよなぁ。とにかく、これを渡してきてよ」


 「得体の知れん物など届けられん!」


 いや、どう見てもただの紙だろ。


 「別に君たちが中を見てもいいからさ、早くしてくれよ。こっちは今日1日で結構な長旅してきたんだからさ」


 時刻は既に夕暮れ時。東へ来たので空は夕方でも、気分は夕飯時だ。お腹減った。


 恐る恐るといった雰囲気で巻き紙を開き、文章に目を通す兵士さん。徐々にその表情からは、敵意が抜けて恐怖が前面に押し出されてきた。


 「だ、第13魔王様!?し、失礼いたしました!!」


 その兵士さんが平身低頭で謝り、他の兵士さんもそれに倣った。


 「ああ、いい、いい。そーゆーのいいから、オールって人にソレ、届けて頂戴?」


 「はっ。速やかに。

 おい、オール様にこの書状を。それと饗応の準備をさせよ」


 兵士さん、他の人に命令できるくらい偉い人だったんだ。もうちょっとちゃんとした話し方すればよかった。


 「聞いた話では、オールさんは他の魔王によく狙われるらしいのに、こんなに簡単に僕を迎え入れてもいいの?」


 「はっ。おそれながら、暗殺を目論む者がそのような問いを投げ掛けることはないと愚考いたします。さらにオール様においては、いかな攻撃をも無意味とする強靭な体を持つ魔王様でございます。

 例え第13魔王様が、万が一オール様の暗殺を企てようとも、恐らくは徒労になるかと。いえ、決して疑っているわけではないのです。あくまで例え話でございます」


 いや、そろそろ慣れてきたけど、恭しくされるとなんか背中がムズムズするんだよな。ここまで馬鹿丁寧な対応だと尚更。


 「そうか。うん、どうもありがとう」


 色々聞いてみたいこともあったけど、この話し方の兵士さんとこれ以上話し続けるのは疲れそうだ。とっとと馬車に戻るとしよう。

 馬車からバルムさんを外し、パイモン達が降りた事を確認したら馬車を鎖袋に仕舞う。周囲がどよめくのも構わず、僕はバルムさんに跨がる。いや、跨がるって言うか寝そべる。あー楽だ。


 「オール様の元へご案内します」


 戻ってきた兵士さんに導かれて、僕らはその宮殿に入っていった。






 「貴様が第―――」


 「デカっ!!」


 いやーマジでデケー。体長80mくらいあるだろこの人。いや、人っていうかこの、




 竜。




 スゲー。竜だよ竜。ファンタジーここに極まれり。ああ、いや竜っていうか、龍だね。西洋竜より東洋龍。金色に輝く鱗の、巨大な龍。


 「スゲー。カッケー」


 見たところ鱗の1枚1枚がオリハルコンみたいだな。そりゃ、こんな龍に挑んだって勝てっこないよ。だって龍でオリハルコンだよ?


 カレーライスにカツのせるくらいに最強だって。ショートケーキのイチゴくらい絶対だって。チャーシュー麺トッピング全部のせって感じに何でもアリだよ。


 ………お腹減った。


 あれ?


 なんだか場の空気が重い。パイモン、なんか冷や汗かいてない?


 「クァハハハハハハハハ!!」


 突然オールさんが呵呵大笑し、大きく口を開けた。つか、ここまでデカイは虫類が目の前で大口開けるとビビるなぁ。


 「新参の魔王と聞いて、てっきりビクビクと出てくるのかと思えば、なかなかどうして肝が太い。

 カカカカ。

 コションの奴が敵わぬわけよ。あのひょっ子は、生まれたてに我を見て、小便をチビっておったからのう」


 うわ、たいして高くなかったコションの株、暴落したよ。


 「ああ、これシルドさんから」


 そう言って小瓶を取り出す。この中にはリリパットの作った酒が入っているらしい。あの花の蜜を使ったお酒………。正直すごい興味はあるけど、お酒は20歳になってから、だよね。身長、ホントに伸びるのかなぁ………。


 「おぅ、『華蜜酒』ではないか。シルドめ、これっぽっちしか寄越さないとは、ケチな奴じゃ」


 「いや、アンタの大きさに合わせてたら、リリパットが過労で絶滅すんぞ?無茶言うな」


 「カカカカカカカカ!善き哉善き哉。今日は実に面白き日よ!

 100年ぶりの友の音沙汰、極上の美酒、若い男。実に嬉しい。

 ほれ、お前達、何をボサッとしておるか。とっとと宴の用意をせよ!」


 なんか知らんけど楽しそうだなー、この人。お腹ペコペコだし、宴には文句無いけど。


 「キ、キアス様っ!」


 圧し殺した声でバルムが話しかけてくる。


 「3大魔王様には、もう少し敬意をもって接しませぬとっ」


 「ん?3大魔王ってなに?」


 「ちょっとぉ!話したじゃないですか、世界でも3人しかいない最強の魔王様のお一方です!」


 「あー、聞いた聞いた。でもエレファンにもタイルにもタメ口なのに、この人だけ敬語ってのもどうだろう?」


 「なんで私たちごときに敬語を使ったキアス様が、ここで渋るんですかっ!?」


 「いや、だって、ねえ?


 じゃあ本人に直接聞いてみようよ」


 「なっ!?」


 「オールさん、なんか部下が敬語使って話した方がいいって言ってんだけど、やっぱその方がいい?」


 「ちょ、ちょっとぉ!」


 「クァハハハハ、構わん構わん。好きに話し、好きに接せよ。

 堅苦しく我に話しかける者など星の数おるが、気安く話す者は数える程度もおらん。貴様は中々見所がありそうな男よの。


 長年生きてきたが、我の目の前にグリフォンの背に寝そべって現れたのは、貴様が初めてじゃ」


 「だって」


 バルムが何かを諦めたような、そんな遠い目をしていた。





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