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 上級の魔物っ!?

 フンババ。


 森の支配者とも呼ばれる上級の魔物である。バビロニア神話の、『ギルガメッシュ叙事詩』に登場し、そこでのフンババは叫び声で洪水を呼び、口からは火と毒を吐く、と語られる怪物だ。このフンババを殺したせいで、ギルガメッシュの友人、エンキドゥは神々に呪われて死んだんだったか。いや、こっちは完全に魔物だから、大丈夫。大丈夫なはず。大丈夫だよね。ね?神様っ!?




 デカイな。


 バルムさんの背に乗り、近くの岩場からフンババを視認した。


 あの深い森から、上半身を完全に突き出したフンババ。体長は10mを優に越えそうだ。


 牛のような角、獅子のような鬣、足と腕は猛禽類。尻尾が途中から蛇になっていて、僕の感覚としてはすごくキメラっぽい。


 「ねえバルム、ここはよく上級の魔物が出るの?」


 「ええ。地形の影響か、別の要因かはわかりませんが、月に1度は強力な魔物が生まれます」


 「ふーん」


 上級の魔物は体が大きく、力が強く、体力が高く、守備力もあり、個体によっては魔法も使うとんでもなく面倒臭い奴等だ。こんな山奥じゃ無理だけど、普通なら軍隊で相手にするような、文字通りの怪物なのだ。


 「パイモン、マルコ、ミュル」


 僕らの後を追って岩場を登ってきた3人に、僕は微笑みかける。


 「あのフンババは上級の魔物だ。ダンジョンに持ち帰って、そこでエネルギーに還元できたら僕の負担が減って大いに助かるんだけどな」


 「ならば私にお任せくださいキアス様!すぐさまあの牛を討ち取ってキアス様にプレゼントします!!」


 「マルコ、あれ、あげるっ!!」


 「ました、ぷれぜんと、嬉しい?」


 張り切りだした3人に、僕は1つの提案を持ちかける。


 「じゃあ、なるべくバラバラにせずに倒してね。


 それと、とどめを刺した人は、僕からご褒美をあげる!」


 にわかにやる気をみなぎらせる3人。パイモンは『神鉄鞭』を両方抜き放ち、マルコは圏を構え、ミュルは両手にプッシュナイフを装備する。


 「よっし!行ってこい!」


 3人は僕の掛け声と共に、羽でもあるかのように岩場から飛び降り、駆けていく。


 「よろしいのですか?フンババは上級の魔物。3人では………」


 「まぁ、3人じゃな」


 「っ!使い捨てになさるおつもりですか?」


 「は?」


 何を言ってるんだバルムさん?意味わかんないよ?


 「ガアアアアア!!」


 地を裂くような砲口をあげ、フンババがゆっくりと倒れる。


 ズウウゥゥゥ………。


 地響きがまるで隕石でも落下したかのように辺りに響き渡り、地面も揺れる。




 「3人じゃちょっとやり過ぎかもな」




 僕の呟きに、バルムさんが息を飲む音が続いた。


 上級の魔物は、フンババの他にもいくつか居る。ヘカトンケイル、サイクロプス、バシリスク、コカトリス等々。


 その中に、ミノタウロス、スフィンクス、メドゥーサも含まれている。


 言わずと知れた地下迷宮の番人達だ。


 確かに強いし、確かに固い。だが、あの3人の相手になるかと聞かれれば、逆立ちしたって無理だと言わざるを得ない。


 そもそも、マルコとミュルは、初対面でミノタウロスを撃破して見せ、パイモンに至っては魔物どころか、1度魔王を倒しているのだ。




 しばらく悲鳴のような、断末魔のような鳴き声が周囲に響き渡っていたが、それもようやく収まった。


 「キアス様、ただいま戻りました!」


 「マスタ、ただいま………」


 「いまー………」


 どうやらパイモンが討ち取ったらしい。しょげるマルコとミュルの頭を撫でてから、パイモンの顔を見る。やたらニッコニコして、犬だったら尻尾を振り回すくらい嬉しそうだ。


 「よくやったねパイモン。ありがとう」


 「いえ、お礼を言われる程の物でもありませんが、どうぞお納めください」


 そう言って鎖袋を差し出すパイモン。この中に、さっきのフンババが入ってるのか。あれ、かなり大きかったから容量ギリギリだろうな。 パイモンの荷物も中に入ってるはずだけど、僕に渡しちゃっていいのだろうか?まぁ、後で移し替えて返せばいいか。



 「一番槍をマルコに奪われた時は焦りました。ミュルの参戦が遅れた事も、幸運でした!」


 本当に嬉しそうだ。今回の旅に、パイモンを連れてきて良かった。


 「ご褒美はダンジョンに帰ってからね」


 「はい!」


 元気よく返事をするパイモンの傍らでは、マルコとミュルがやっぱりいじけていた。まぁ、こいつ等も頑張ったし、残念賞くらいはあげよう。


 「お三方とも、お強いのはわかっていましたが、まさかこれ程までとは………」


 バルムさんの声が若干震えてるような気がするのは、気のせいだろうか?







 「魔王殿、此度の助太刀、感謝する。

 上級の魔物との戦闘となれば、我々も死力を尽くして戦わなければならなかった。怪我をする者や、運が悪ければ死者もでる戦いだった。本当に助かった」


 シルドさんは深々と頭を下げて礼を言い、他のグリフォンもまたそれに倣う。

 場所は再び例の横穴である。絶壁にある横穴に入れるのは、グリフォンとバルムさんに乗れる僕だけなので、この場所のグリフォン率が高すぎる。


 「いえいえ。フンババの死体が手に入ったのなら、こちらとしても助かります」


 「それと、貴殿の仲間が森に放棄していったものなのだが………」


 ん?なんの事だ?


 部屋にいたグリフォンが、次々に食料や衣類、果てはマジックアイテムを持ってくる。


 フンババの巨体は、鎖袋の容量ギリギリ。パイモンは僕にフンババを届けるため頑張った。たがもし、袋に入りきらなかったら………。




 パイモン!そういう時は僕に相談しなさい!!





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