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 グリフォンの矜持っ!?

 「よぉーやく見えてきたな!」


 登山3日目の朝、僕らはようやくグリフォンの隠れ里にたどり着いた。

 馬車なら1日で来れるのに、無駄な時間を使った。3日あれば、僕なら白金貨1枚くらい稼ぐ。時は金なりだろうが。商人の時間を無駄に使わせるとは、グリフォンめ。


 あ、いや、僕は魔王か。




 グリフォンの里は、断崖に無数の穴が空いており、そこに住んでいるらしい。まぁ、四足歩行じゃ家とか作れないよね。

 主に森で狩りをして生活していて、当然主食は生肉。木の実や花の蜜も好むとか。旅の間、暇に飽かしてバルムさんに聞いた話だ。


 僕たちが隠れ里に向けて進んでいると、数体のグリフォンがこちらに飛んできた。


 「何者だ?ここはグリフォンの里である。用がない者の立ち入りは許可できんぞ?」


 その内の1体が、静かな口調でこちらに問う。しかし、バルムさんの姿を見ると、激しい口調で詰問してきた。


 「貴様っ!誇り高きグリフォンが、家畜のように背に他者を乗せるとはっ!!恥を知れ!」


 どうやら彼らの間では、背に人を乗せるのはタブーらしい。バルムさん、そこは教えといてよ………。


 「貴様こそ、このお方をどなたと心得る。畏れ多くも第13魔王様、アムドゥスキアス様であるぞ。私の背に乗っていただけるのであれば、これ以上無い名誉である!」


 いや、なんか前半の台詞がどっかで聞いたことあるよ?なに?僕はここで印籠を出さなきゃいけないの?


 「貴様、グリフォンの矜持をどこへ無くした!?」


 「フン。時勢もわからず、ただ引き込もって時を過ごす愚か者共には、流石の魔王様のご威光も―――」


 僕は、やたら喧嘩腰のバルムさんの頭を小突いて止める。


 「やめろって。僕らは別に争いに来たわけじゃないんだから」


 だが、これが良くなかったみたいだ。


 「貴様っ!!グリフォンの頭を叩くなど、言語道断!魔王と言えど許せん!


 そこになおれ!噛み殺してくれる!!」


 いや、なんかさっきから君たち、口調が時代劇みたいだよ。つか、グリフォン、グリフォンうるさいよ。


 「キアス様、いかがいたしますか?」


 パイモンが『神鉄鞭』を抜いて臨戦態勢をとりながら、こちらに問いかけてくる。


 「いや、ここで戦闘になるのは、かなりマズイ。交渉の機会を完全に失っちゃうよ」


 「しかし………」


 いやまぁ、目の前のグリフォンさん、今にもこちらに襲いかかってきそうだしなぁ………。確かにパイモンとしては気が気じゃないだろう。


 「マスタ」


 「ました」


 同じく武器を構えるマルコとミュルにも、僕はステイの指示を出す。つーかなんで会ってものの数十秒でここまで険悪な雰囲気になるんだよ!?


 「あー、君、僕は別に君たちと戦いに来たわけじゃないんだ。ちょっとしたお願いがあってね」


 「問答無用!!」


 問答無用じゃねえよ!マジでなんも話してねえだろうが!


 突撃してきたグリフォンは、パイモンが止めた。『神鉄鞭』で嘴から突貫してきたグリフォンを止めると、すぐさま弾き返す。ミュルが僕を守るように立ちはだかり、パイモンの側にマルコが立つ。


 「はぁ………。強引なグリフォンさんだ。バルム、グリフォンって皆こうなのか?」


 確か排他的ではあっても、好戦的では無いはずじゃなかったのか?


 「いえ。ですが誇り高いがゆえに、その誇りが矜幔になる者も少なくありません。この者はその典型かと………」


 あぁ、確かにそんな感じだ。同族、国家、宗教、それを誇るあまり傲慢で独善的な者がいた事は、地球の歴史で何度もあった。そんな為政者が引き起こすのは、混乱と混沌である。

 グリフォンが皆そうだとはいわないが、僕は少しこの人たちを部下にするのはやめようかなー、と考え始めた。




 「何事だ?」




 突然頭上から声が響き、1頭のグリフォンが降りてきた。鷲の翼と嘴、獅子の胴体を持つグリフォン。前足は猛禽の王、後ろ足は百獣の王のそれ。

 バルムさんや他のグリフォンと何ら変わらない姿でありながら、このグリフォンは明らかにオーラが違った。


 「お、長、この者共が………」


 「フン。疚しい者の目だな。非は貴様にあるのであろう。連れていけ」


 「「はっ」」


 「客人か。して、我が里に何用か?」


 「ああ、やっとまともに話せる人が来たか。でもまぁ、用は今無くなった。話に聞くグリフォンと実際のグリフォンとでは、やっぱ違うんだね。


 お邪魔しました。もう会う事もないと思うけど、さようなら」


 「待て。先程の者の非礼は詫びよう。しかし、我等の矜持を誤解したまま客人を帰したとあっては、それこそ名折れ。せめて饗応を受けていってはくれまいか?」


 「へぇ………」


 これまたさっきとは随分違うタイプの人が出てきたもんだ。長と呼ばれていたし、この里のリーダー的な存在なんだろう。


 確かに誇り高いという意味ではさっきの人と同じでも、こちらに対し礼を尽くす事ができる時点で段違いである。いや、段どころか位が違うというべきか。


 「成る程。いや、失礼。こちらも偏見で物を言ってしまった」


 僕はバルムさんの背から降りると、頭を下げる。ロロイさんやバルムさんには、魔王が簡単に頭を下げるものではない、と注意されたが、非も認められなくなったら終わりだ。それこそ、さっきのグリフォンのようになってしまう。


 「僕は第13魔王、アムドゥスキアスです」


 「我はこの群れの長をしているシルドと申す者。以後よしなに」





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