表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/488

 やっぱり魔王っ!?

 【レッドキャップ】22匹



 レッドキャップが、さらに増えていた。

 確かにアンドレの言う通り、すぐに対処した方が良さそうだ。

 パイモンが言うには、このレッドキャップは近隣から流入しているらしい。このまま放置すれば、ゴブリンの集落なんかにも、多大な被害が出るらしい。

 残念ながら、既にオーク達が襲われ、多くの被害が出たらしい。

 だから少なかったのか。


 因みに、ゴブリンやオークは魔族、レッドキャップは魔物らしい。正直、パイモンに教えられなければ、「やっぱり初戦はゴブリンかスライムだよねっ!!」と、意気揚々と虐殺に出向くところだった。

 あ、スライムは魔物らしい。本当に違いがわからん。



 今のところレッドキャップは固まって行動しているが、バラけられたら厄介だ。


 「確認、レッドキャップ」


 上空から俯瞰するように、レッドキャップの集団が見えた。


 レッドキャップは、ネズミと犬を足して、そこに悪意を掛けたような、醜悪な容姿をしていた。身長は150そこそこだろうか。体に比べて、顔が超デカイ。

 真っ赤なタテガミは、どこかモヒカンっぽいし、興奮しているのか、荒く息を吐くその姿は、その内「ヒャッハァァァ!!」とか言い出しそうだ。

 辛うじて2本足で立ってはいるが、獣の特性が色濃く、どう考えても4足歩行の方が早そうだ。


 生物の位置は、スマホに白い点で表示されている。だからわざわざ確認する必要はないのだが、やっぱりこれがダンジョンマスターとしての初仕事かと思うと、自分の目で見ておきたかったのだ。


 「『作製』からダンジョンを造って、と。罠は落とし穴でいいか。あ、こんな広さは要らないな。高さ2m、幅7m、長さ500m、こんな感じか」


 レッドキャップの群れをギリギリ納められるような、狭い回廊ができた。材質はただの石。内部は暗いだろうから、松明もつけてやる。壁の両脇に10m置きに、合わせて100個。実を言えば、これは親切でも何でもないのだが。


 「よし、できた」

 『脱出可能でないとセーブできませんからね』

 「おっと、出口を作るの忘れてた。ついでに入り口も」


 高さ1m程の小さな出入り口を、回廊の両端に造り上げる。


 「これでいいかな。………………うん、よし!セーブっと」




 視界に写るレッドキャップが、にわかに慌て出す。

 そりゃそうだ。だだっ広い平原を歩いていたら、急に狭苦しい回廊に押し込まれたのだから。

 瞬時に全ての松明が灯り、石の回廊を煌々と照らし出す。


 「こいつ等って馬鹿なの?」


 灯りが点いた途端、レッドキャップ達は三々五々に走り出した。

 警戒もなにもない。


 「魔物はほとんど知性がありませんから」


 パイモンが言うことは直ぐに証明された。


 1個目の落とし穴に、レッドキャップの半数が落ちてしまったのだ。


 後ろにあった入り口に気付いた者もいない。

 まぁ、1度入ると侵入者が脱出するか死なないと、絶対に開かないんだけど。


 これじゃあ、色々と考えて造っていた僕がバカみたいじゃないか。


 落とし穴といっても、ただの穴ではない。足を踏み入れると、床が傾斜し、入り口側に頑張れば登れる急な坂道が出来上がる。出口側は勿論絶壁だ。

 構造上、数人で乗らなければ発動しない、という弱点も用意してある。

 レッドキャップ達は、皆必死になって坂を駆け上がっている。やっぱり4足歩行の方が早そうだ。

 因みに、落とし穴の幅は4m。深さと長さは10m程なので、迂回も可能である。


 運良く迂回できたレッドキャップが、次の落とし穴に落ちた。


 そう、この回廊は一本道に見えて、激しく蛇行しないと進めない構造なのだ。

 ボッチは素通りできる。




 『マスター、このトラップは確かに足止めには有効ですが、排除が全然出来ていません。危険度が低すぎませんか?』


 『危険度』とはダンジョンの難易度のようなものだ。命の危険がないフロアは危険度が低く、凶悪なトラップがあるフロアは危険度が高くなる。

 危険度が高い程、維持にコストがかかり、低い程コストが安い。

 ダンジョンの維持には、エネルギーが必要である。

 エネルギーを補充する方法は2つ。僕が魔力を注ぐか、ダンジョン内で死んだ生物や魔物、その他微少な有機物からでも吸収される。


 危険度は全部で10段階。1〜10まであるが、この回廊の危険度は3。

 恐らく、トラップの数やその性質で危険度を定めているのだろうが、




 甘い。




 僕がそんなぬるゲー造るわけないだろ?

 このトラップは、将来ダンジョンを大きくしていく上で、中盤に配置する予定の凶悪仕様なんだぞ?


 下手をすれば、ボッチしか攻略できない程に凶悪なのだ。




 『っ!マスター、レッドキャップの数が減り始めました』


 うん、そろそろか。


 視界の奥でも、何体かのレッドキャップが倒れ出した。

 他のレッドキャップも激しく息を吐きながら、苦しそうに立っている。

 それと同時に、松明が消えてゆく。


 高さも、幅も、長さもそれ程無いこの回廊で、100本もの松明を燃やし続ければ、自然と酸素が足りなくなる。おまけに、ここのトラップは足止めのために有るものばかりで、1度嵌まれば激しい運動が必要となる。


 つまり、この回廊は無酸素トラップのフロアなのだ。




 「しかし、こんな馬鹿なレッドキャップに、半分以上進まれちゃったな。よし。幅を5mにして、松明の間隔も5m置きにしよう」


 勿論落とし穴の幅も狭くしておく。攻略できないとセーブできないからね。


 「ってセーブできないし………」


 やっぱり松明が倍、というのは多すぎたようだ。


 松明を元の数に戻す。


 おっと。気付けばレッドキャップが全滅してる。

 まあ、1度酸素が無くなれば、何匹いようと関係ないしね。




 さて、ダンジョンマスターとしての初仕事はこんなもんだが、どうだったかな?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ