閑話・2
クリスマス記念ということで、作者から皆様に送るプレゼントです。
毒にも薬にもならない、ゆるーい日常編の閑話を2つプレゼント。
メリークリスマス。
出来てしまった………。
まさか本当に出来るとは。僕って意外と器用なのか?
漆黒の燕尾服と、濃紺のエプロンドレス。
そう、執事服とメイド服だ。なんか、マルコとミュルに似合うかなー、何て思って挑戦したら、意外とあっさりできてしまった。
まぁ、できちゃったものは仕方ないよね。
早速2人に着せてみよう。
「マスタ、ピロピロしてる」
「ました、かわい?ミュルかわい?」
燕尾服の裾を玩ぶマルコと、くるくる回って上目使いなミュル。うん、ミュルは相変わらずあざといまでに可愛いな。あざと可愛いな。でもそんなだと、将来同性に嫌われるから気を付けろ?
「マスタ、ありがとう!」
「あいがと、ました」
うーん、やっぱり2人とも可愛いな。
マルコはモヒカン頭と燕尾服のミスマッチさが、ミュルにはあざといまでに似合っている事が。
「マスタ?」
僕が無言で2人を見ていると、マルコが不思議そうに首を傾げてこちらを覗き込んできた。
「よく似合ってるよ。うん、可愛い」
「えへへ〜」
「あはっ、ミュル、うれしぃ」
ミュルはもうちょっとマルコみたいに普通に照れような。
「ぇぁ、わ、私もですか?」
マルコとミュルの次は当然ウェパルだろ。なんたって元祖メイドさんなんだから。僕のダンジョンでは。
「でも、私はこの髪ですし………」
そういや、いい加減ウェパルの髪も整えなきゃな。いつまでもざんばらじゃ、女の子として可哀想だ。
だが今回はそんなの関係ない!
メイド服にはお馴染み、メイドカチューシャ!
えっと………、ホワイトブリムって言うんだっけ?ちょっと記憶が曖昧だけど。
これがあれば、いつものようにおでこが可愛いウェパルメイドの誕生だ!
「ぁぅ………」
ウェパルはお洒落をさせようとすると、結構嫌がるんだよな。何でだろ?
「き、着替えましたぁ………」
おぉー!
「可愛い可愛い」
「ぅぅ………、なんか恥ずかしいですよ………」
いっつもズボンなせいで、スカートが慣れないらしい。やたらと裾を気にしてもじもじしている。
まぁ、ミニだからなぁ。ミュル用に作ったまんま同じの作ったせいだが、似合ってるよ?
「可愛いよ」
「ぅぅ………、ありがとうございますぅ。………えへっ」
控えめに照れて、控えめに喜ぶウェパルは可愛い。ミュルもこれくらい自然に可愛くなれないものか。
「あ」
「げ」
げ、は無いでしょコーロンさん。
恐らくウェパルを訪ねてきたのだろうコーロンさんと、ばったり出会した。丁度良かった、また拉致りに行くところだったんだ。
嫌がるコーロンさんに、無理矢理メイド服を着せにかかる。
僕だけじゃ押さえ込めないので、マルコやミュルにも手伝ってもらった。
「ちょ、や、おまっ、何してんだコラ!」
「まぁまぁ」
「つかコイツ等誰だよ!?うわっ!めっちゃ力つえー!」
「マーマー」
「ママ?」
「アタシはお前等のママじゃねー!!つか離せ!!」
「はぁーいコーロンちゃん、お着替えしましょうね〜」
「てんめぇ、キアス!!後で憶えてやがれ!!」
そんなこんなで、なんかイケナイ感じになりつつコーロンさんにメイド服を着せた。ミニの。
「なんつー格好させんだテメェ!?」
「いや、可愛い可愛い」
「ざっけんな!!服返せ!!こんなザマじゃ帰れねーだろーが!!」
何を言うか。生地も縫製も完璧な高級仕様。学ランなんかよりよっぽど手間がかかる珠玉の一着だぞ?
うーん………、しかし………。
やたらと似合うな。元々スタイルもいいし、ロングの銀髪と紺のメイド服との対比もいい。ミニスカートから覗くスラリとした足も、なんとも言えず扇情的だ。
だが、何と言っても!
オート獣耳と尻尾がジャスティス!!
カワイイは正義!!
コーロンさん似合いすぎ。もう、ずっとこのままでいればいいのに。
「マジ何なんだよ今日はっ!?いつもの3倍強引だぞ!?」
「ごめんごめん。でも強引にいかないと、絶対着てくれなそうだったから」
「まぁ、アタシもそう思うけど………」
そう言って、今一度自分の姿を見下ろし、
「………なんつー格好させんだよぉ………」
なんだか落ち込ませてしまった。
「いや、だから可愛いって!絶対似合ってるって!!」
「うっせぇ!バーカ!!絶対にこの借りは返すからなっ!!」
そう言って走り去っていくコーロンさん。顔は真っ赤で、凄く恥ずかしそうなコーロンさん、マジキュート!
トリシャは無理そうなので、後はパイモンに着せてミッションコンプだ。フルフルはどうせ服とか着ないし。
パイモンは執事服。
似合うと思うんだよねー、パイモンの執事服姿。学ランだけであんなに男装の麗人っぽいんだもん。
恥じらい成分はウェパルとコーロンさんで足りているので、パイモンにはカッコいい姿を見せてもらおう。
「あ、パイモン。とコーロンさん、何してんの?」
「うっせ、バーカ!じゃあパイモン、頼んだぜ?」
「はぁ……、わかりました」
何かのやり取りを終えると、コーロンさんは脱兎のごとく去っていった。もう少し目の保養がしたかったな。
「キアス様、こんにちは」
「こんちゃ〜。コーロンさんと何話してたの?」
「えっ、あ、その………。あ、それよりそっちの服は何ですか?」
なんか隠してそうだな。まぁいっか。そんな事より、今は執事パイモンだ。
「ど、どうですか?」
執事服を着たパイモン。
スペックたけぇー。ただでさえ190cmの高身長に、端正な顔立ちと短い髪。もう、どっからどう見ても、
ヅカっぽい。
これは、嵌まりすぎだな。もう丁寧な言葉遣いとか、柔らかい物腰とか、完全に執事にしか見えん。
「に、似合うなぁ………」
あまりの似合いっぷりに、ちょっと戦慄してしまう。
「ありがとうございます。あの、それで申し訳ないのですが、私からも少しお願いが………」
「お願い?」
なんだろう。パイモンがお願いなんて珍しいな。
「ここではちょっと………。魔王の間までご足労願えますか?」
「まぁ、パイモンがそう言うなら………」
ご足労って程でもないからね。
パイモンに連れられて魔王の間まで来たとき、それは起こった。
流動する透き通った水の腕が、突然襲いかかってきたのだ。咄嗟に身をかわし避けたかと思ったら、反対側からの衝撃で、僕は水の腕に突っ込んだ。
「なっ!?フルフル!?」
「キアス、フルフルを仲間外れにしちゃダメなの!」
自分の体で作ったのであろう、所々変な感じの、変則的なメイド服姿のフルフルがお冠だった。
「いや、だってお前、服着ないだろ?」
「それでも仲間外れはダメなの!」
「いや、そんな事言われても………」
そして僕を突き飛ばした犯人、コーロンさんを見ると、すごい邪悪な笑みを浮かべていた。い、いつもの凛々しいコーロンさんの方が、僕は好きだなぁ。
「さて、散々アタシ等を弄んでくれたキアス君?」
「な、なぁに、コーロンさん?」
「お着替えしましょうねぇ〜」
そう言って取り出したのは、
メイド服!?
「は!?ちょ、まてっ!」
「マルコ、ミュル、キアスのお着替えを手伝ってやろうぜ?」
「お手伝い、するっ!」
「ました、ミュルとお揃いっ!」
バカなっ!?こんな短時間で2人を手な付けたというのかっ!?
「パ、パイモーン!!」
「申し訳ありません、今回ばかりはキアス様が悪いかと………」
何ということだ。まさか僕に忠実なパイモンまで寝返らせるとはっ!!
「ウ、ウェパルはっ!?」
「お前の造った『かめら』ってのを取りに行ってるぜ」
「は、謀ったなっ!?」
「おうよ。乙女を無理矢理脱がせた報い、きっちり受けてもらうぜ?」
「なっ、トリシャ、ヘルプミー!!」
『トリシャはむしろ、嬉々として参戦するでしょうね』
「おぉ、アンドレ!お前がいてくれたか!何とかこいつ等を説得してくれ!」
『………………』
「ア、アンドレさん………?」
『コーロン、女性用下着は用意しましたか?』
「アンドレ、お前もかっ!?」
「マスタ、お着替え」
「ました、可愛い」
「フルフルも混ぜるの」
「さぁ〜キアスちゃん、可愛いおリボンもつけましょうねぇ〜」
「キアス様、御武運を………っ」
『なまっちょろい少年が、無理矢理メイド服を着せられて恥じらう。うぅむ、これはまた………』
「いぃやぁぁぁあああ!!」
その後、我がダンジョンではメイド服は使用禁止になった。