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 魔大陸へっ!?

 ロロイさん達の頼みで、とりあえず一度魔大陸に行くことは決定した。


 だが、問題は他の地域をどうするかである。


 戦をせずに今いる代官を追い出し、なおかつ住民に僕が支配者だと知らしめる必要が………。ひつようが………。


 必要ない!!


 だって面倒臭いもん。城壁都市で手一杯だよそんなの。


 僕らは今、リビングで会談をしている。僕の護衛はパイモン、フルフル、マルコ、ミュル。ウェパルは城壁都市に避難させた。自滅覚悟で暴れられたりすれば、大変だからだ。まぁ、全員仲間にはしてあるので、暴れれば本当に自滅するだけだ。

 僕のプライベート空間で暴れるような奴を許すつもりはない。黒板を引っ掻く音1時間の刑に処してやる。


 「ロロイさん、僕は統治とか、支配とかにはあまり興味がありません。もし、コションの元支配地域を僕の庇護下に置けたら、その地域を3人で治めてくれませんか?」


 「さん付けはやめてくださいキアス様。むしろこちらが恐縮してしまいます。


 代官として統治するのは大丈夫です。ですが、いささか広すぎて私共では手が回らないかと。ここに居ない部下もいますが、領地を任せられる人材かは………」


 うーん、それって僕にも当てはまるよね。そんな広い地域を見て回るのは骨だし、人材の不足はこっちだって同じだ。


 「他の魔王に領地を譲渡するのは?」


 「あまりおすすめは出来ません。コション様と同じ末路を辿られるかと………」


 あぁ、成る程。増長してこっちに攻めてくると。


 「でも、エレファンとタイルなら、協力してくれるかもな」


 「ほぅ!第1魔王様と第2魔王様、お二方と縁がおありですか。ですが、お二方とも支配地域は南方です。流石に風土が違いすぎるでしょうね」


 「それはそうか」


 植物の生育や、季節の変わり目が違うだけでなく、対策を考えるべき自然災害の質まで違ってくるだろう。


 となると本当にどうするか………。


 「あの………」


 そこで今まで黙っていたパイモンが、遠慮がちに手をあげて発言を求めていた。


 「なんだい?」


 「い、いえ、大した意見ではないのですが、キアス様の配下を増やすのはいかがでしょう?」


 確かに、武力でもって事をおさめるのは簡単だが、それじゃあ紛争だ。犠牲も多く出る。だが、パイモンの言っているのはそういう事ではないらしい。


 「あ、あの、魔族ではなく、幻獣種を配下とされるのはいかがでしょうか?


 彼らは理性的で、あまり争いを好まず、魔族よりは温厚な種だと聞き及んでいます。代官にはうってつけかと。

 そこにいるグリフォンも幻獣です」


 そう言われて、僕は物静かなバルムさんを見る。


 他の2人は椅子に座っているが、四足歩行のグリフォンのバルムさんは立ったままだ。護衛の人達も直立不動で、彼らの後ろに控えている。


 「発言を許していただいても?」


 「ああ、勿論」


 僕と話しているのはもっぱらロロイさんで、他の2人は今までずっと黙っていた。ただ、ガチガチに緊張しているラミアのアルルさんとは裏腹に、バルムさんは超俗的な雰囲気で泰然としていた。


 「幻獣は確かに争いを好みません。ですが、やたらと排他的な気質を持ち、あまり他種族との交流を持ちたがりません。私のような好奇心から外へ出てくるものは少数かと。


 というのも、過去真大陸にも住んでいた我々幻獣ですが、人間どもに乱獲され魔大陸へと逃げてきた歴史があるからです。魔族には、幻獣から剥ぎ取った体の一部を加工する技術はありません。ですが、それでも交流を持つより、孤立し、閉塞した環境の方を好みます」


 成る程ねぇ。そういえば錬金術の霊薬の中には、幻獣の臓器を必要とする物もいくつかあったな。


 「キアス様が望まれるのであれば、グリフォンのいる隠れ里までご案内いたしますが、恐らくあまりいい顔はされないと思います」


 うーん、でも他にいい案もないんだよなぁ。


 コションの所の馬鹿を徴用するのは嫌だし、現状悪政を敷いてる奴等なんか願い下げだ。しかし他に知己もないし、何より僕の代わりに領地を管理してくれる人材は不可欠だ。


 できるだけ穏便に済ますとはいえ、多分今状況の悪化している地域の未来は惨憺たるものになるだろう。

 住民は保護するつもりでいるが、それでも治安が悪化すれば、その建て直しには時間がかかる。


 そこを治めてくれる理性的で理知的な部下。


 確かに欲しい。


 「一度会うだけ会ってみたいな。バルムさん、お願いできる?」


 「はっ。それと私も呼び捨てで構いません。


 主に敬語を話されては、やはり落ち着きませんので」


 何でみんな、呼び捨てを強要するんだよ。さん付けで話した方が、話しやすいよ。


 「では一先ずはこんなところで………」


 ロロイさんが立ち上がり、こちらに頭を下げる。


 「あ、はい」


 そう言って立ち上がり、僕もお辞儀をすると、ロロイさんとバルムさんは揃って口を開いた。




 「「魔王様が簡単に頭など下げないでください」」




 魔王メンドくせえー。




 そしてやけに静かだと思えば、フルフル、マルコ、ミュルの3人は夢の中だった。




 気楽でいいな、お前らはっ!!





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