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 魔族の訪問者っ!?

 何事もなく5日が過ぎた。


 僕はパイモンと装備についての意見交換をしたり、フルフルにせがまれてお風呂用の玩具を作ったり、コーロンさんを拉致ったり、ウェパルに街の仕事を教えたり、マルコとミュルに常識を教えようとしたり、アンドレに怒られたりして、平和に過ごした。


 未だ城壁都市には、他の商人はいない。僕等の独占状態だが、残念ながら客となる冒険者も皆無である。

 シュタール達が来れば状況も変わるのだが、まだ来ない。全く、勇者なんだからちゃっちゃと来ればいいのに。


 こんな状態じゃ、セン君達もここに進出できないじゃないか。


 実を言うと、セン君達は一度ここを訪れている。というのも、ズヴェーリにある迷宮荘のある町、この度ズヴェーリ皇帝に『ゴーロト・ラビリーント』の名をもらった町にある転移陣からこちらに渡り、既にアムハムラに拠点を構えているようだ。街の人から伝言をもらったので会ってはいないし、今どこにいるのかもわからないが、こちらの情報を信じて動いてくれたのだ。シュタール達には是非とも頑張ってもらわねば。


 街の人達にもお金を持たせ、その価値をきちんと説明した。もう既にここでは、僕の造った通貨を使っている。あとは普及と信用度の維持だけだ。


 とはいえ、城壁都市はまだ稼働状態とは言いがたい。僕が住民にお金を渡し、住民がそのお金を使って僕から食べ物を買っているだけが、このダンジョンでの売買の全てだ。


 一見すると、いいお金のサイクルは出来ているのだが、これではただ僕が買ってきた食べ物を彼等に与えているだけだ。充分な量の食糧はあるのだが、無尽蔵にあるわけじゃない。やはり冒険者が来て、商人が来て、住人にも僕にもお金が入ってこないとどうにもなら無い。今はまだ慣らし運転、というか新しい通貨に慣れてもらう為の練習期間のようなものだ。


 元奴隷の子供達用に、学校のようなものも居住区に造った。そこそこ広い施設だが生徒はそこまで多くないので、今は定員割れの学校みたいになっている。語学、数学、地理、歴史がカリキュラムだ。僕が手伝えるのは数学くらいなので、なんとか憶えていた数学の公式を紙に書き写して教師役の大人に渡したら、その数式や利用法について詳しく聞かれた。


 ………ちゃんと答えられたかはわかりません。馬鹿でごめんなさい。


 今は託児所みたいになっているが、栄養状態が充実してきたら体育も取り入れたいな。まぁ、体育がなくても子供達は駆け回ってるけど。




 そんな風にダンジョンマスターとして立派に住人達の面倒を見ていたのだが、今日でそれも終わりらしい。


 魔大陸側から再び侵入者が現れたのだ。


 コションと後から来た馬鹿が帰ってこないので、更なる援軍を送ってきたのかと思えば、


 『侵入者は12名です』


 思ったよりかなり少ない。コションの軍隊も底をついたのか?


 とりあえず、お決まりの警告から始めようか。


 「あーあー、マイクテスマイクテス。隣の客はよくかきゅきゅうきゃきゅだ。あれ?。隣の柿はよく柿食うきゃきゅだ。よし。


 どうもアムドゥスキアスです。侵入者の皆さんこんにちは。さて、ここに来た目的を教えていただきたい。その答えによって、君達の人生は大きく変わる。


 心して答えてほしい」


 うん。この前の馬鹿は、ちょっと下手に出たら調子に乗ったからな。ここはちょっと威圧的に。


 案の定慌てている魔族。まぁ、このあたりはコションや馬鹿達と同じだ。


 『あなたは、この地を治める魔王様で間違いございませんか?』


 魔族の中から、顔に目が4つ、首や腕など露出している場所からも、無数の目が覗いているヘクトアイズ、日本で言う百目鬼(どうめき)が代表して話し始めた。


 「はい、その通りです。第13魔王、アムドゥスキアスです。


 あなたたちは、コションの部下の方達で間違いありませんか?」


 『はっ、ご慧眼恐れ入ります』


 慧眼も何も、前に全く同じ事があったからな。しかしこの人は、あの時の馬鹿と違って大分礼儀正しい。


 『アムドゥスキアス様、コション様達の現在の状況をお聞きしてもよろしいでしょうか?』


 アムドゥスキアスって言いにくそうだなー。長いし。


 「死にました。後から来た援軍の方も全滅しました」


 僕がそう言うと、再び魔族達が慌て出した。まぁ、確かにちょっと無神経な言い方だったかな。もしかしたらコションに忠誠を誓う家臣、みたいな人達もいたかもしれないし、友好的に話してくれてるんだからちょっとは気を使った言い方をすればよかった。


 『そうでしたか………』


 百目鬼は、何やら難しい顔で思案している。


 『アムドゥスキアス様、どうか折り入ってお聞きいただきたい事がございます』


 「そうですね。安請け合いはできませんが、僕でお力になれることなら」


 そこで一拍置き、スピーカーに向かって百目鬼が頭を下げた。




 『我らをあなた様の家臣にしていただきたい!!』



 コション人望ねー。







 話によると、どうもコションは多くの家臣を支配地域に残してきたらしい。まぁ、長期遠征するなら代官くらい置くよな。ぼ、僕だってホラ、パイモン残したりしてたしー。城壁都市は………。


 だが、その代官達がコションの不在を良いことに領地で好き勝手を始めてしまい、治安の悪化どころか住民の多くが移り住んでしまったそうだ。


 百目鬼のロロイさんは、コションの生死の確認と、もし生きていたなら領地に戻ってもらい、支配者としてこの混乱をおさめてもらうためにダンジョンを訪れたらしい。


 これは僕にとっても由々しき事態だ。コションの元支配地域が過疎化すれば、通貨の流通はかなり困難だ。それだけじゃない。城壁都市の魔大陸側は未だに無人のゴーストタウンだ。コションのとこから引っ張ってくるつもりの人員も、過疎化が進めば望み薄だ。


 12人の内、代官を任されたのが3名。


 百目鬼のロロイさん。

 ラミアのアルルさん。

 グリフォンのバルムさん。


 この3人の預かる領地には、他領からの難民が流れ込み、こちらはこちらで大変らしい。


 とりあえず、街は空いているのでそこに預かろう。ただ、この場所にはマジックアイテム以外の産業はない。ここに少数で住んでも、先がないのだ。なんとか事態を沈静化させ、流通網をダンジョンまで伸ばしたい。こちらで、アムハムラのような流通のイニシアチブを取るのもいいのだが、僕は魔王の1人。妨害や襲撃の危険は否めない。他の人に頼んでも状況は同じだ。どこの魔王に属しているか、誰にも属していないか、どの場合でも利益をあげれば他者の妨害を受ける。

 魔王と名乗れる魔大陸の方が、面倒事は多そうだ。社会秩序くらいしっかり整備しとけよ。




 というわけで、魔大陸の領地を3つ手に入れ、他の地域を平定することになりました。




 はぁ………。


 僕、戦とかしないよ?仲間少ないし。





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