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 残高0と侵入者っ!?

 「とうとうか………」


 『はい』


 「ついにか………」


 『はい』


 「やっぱりか………」


 『はい』


 とうとうこの時が来た。いずれ訪れる事はわかっていたが、それでもやはり、今まであったものがなくなるというのは、漠然とした不安を掻き立てる。まるで心にポッカリと穴が開いてしまったような寂しさも、僕は今感じている。


 ああ、あなたのくれた物を、僕は1つ失ってしまった………。




 『あなたがバカスカ使うから、神のくれたダンジョン用のエネルギーが無くなったのでしょう?』




 「はい………」


 とうとう無くなってしまいましたか。確かに、最近は使いたい放題使ってたからなぁ………。

 数万人単位で奴隷を召喚したり、街をポポンと造ってみたり、魔法を付与した馬車を数百台造ったり。ホント、勇者パーティもかくやの豪気っぷりだったなぁ。


 『本来、年単位でダンジョンの維持が可能なだけのエネルギーだったのですよ?それを次々と使い潰して、あなたはまさかの2ヶ月で消費しきりました。


 これについて、何か感想はありますか?』


 「ごめんなさい………」


 『ごめんなさい?それがあなたの感想ですか?感想とは読んで字のごとく、何を感じ、何を想ったのかを述べるものですよ?


 知らなかったのなら、あなたにはこれから毎日読書感想文を書いてもらって、毎晩リビングで朗読していただきますが?』


 「本当にごめんなさいっ!!

 ダンジョンの経営とは関係ない余計な事をしたり、余計な物を造ったり、無駄にアイテムを使ったりした僕のせいで、神様からもらった力はなくなりました!!

 反省してます。ってこれは反省文だろ、どちらかと言うと」


 『では毎晩反省文の朗読会ですね』


 「本っ当にっ、すみませんでしたぁ!!」


 アンドレの機嫌が悪いのも当然か。アムハムラに来る時きちんと忠告されたにも関わらず、帰る頃にスッカラカンにしてしまったのだ。いくらアムハムラ国民の貧困が気になったからとて、この体たらくじゃそりゃ怒るよ。苦言も諫言も甘んじて受けよう。


 『ではまず『ぼくはあたまがわるいです』と学ランの裏に刺繍してください。あなたにはその姿でこれから魔王をやっていてくださいね』


 「ごめんなさいマジ勘弁してください」


 アンドレアルフス。このスマホこそ、魔王の名に相応しいダンジョンの支配者だ。







 フルフルに帰るまでお風呂抜きと言っていたが、ちょっと事情があって僕たちは勇者との商売を終えたその日に、こうしてダンジョンまで戻ってきた。


 本当はアムハムラで、元奴隷の住民達の使う寝具や布なんかを仕入れてくる予定だったのだが、アンドレからの緊急の報告があって、戻って来ざるを得なかった。


 その事情が、今スマホの画面に写し出されている。




 【ワーウルフ】 1匹

 【ワーリキッド】 1匹




 ワーウルフは知っている。要は狼男だ。だが、ワーリキッドとはなんだ?聞き慣れない名前だ。


 この2人か2匹は、なんと今現在ダンジョン内にいる。しかも驚くなかれ、既に地下迷宮にいるのだ。


 ダンジョンに侵入すればアンドレがつぶさに報告してくれる。だが、アンドレが報告してくれたときには、彼らは既に地下迷宮にいた。

 こんな異常事態は今だかつて無かった。あ、いや前に魔王が2人強行突破してきたっけ。でももう空は封鎖してるし、どうやって進んだのかはやっぱり不明だ。


 そのまま進むのかと思えば、彼等は今だ地下迷宮をさ迷っている。正直、長城迷宮、信頼の迷宮、困惑の迷宮を瞬時に攻略する手段など全くもって思い付かない。それが出来たのに、いつまでも地下迷宮をウロウロしている意味もわからない。


 わからない事だらけなので明日の朝、地下迷宮へ調査に出向こうと思う。メンバーはパイモン、フルフル、僕の3人だけだ。何があるかわからないので、オーク達やウェパルは連れていけない。あの場所は既に弱肉強食なんて言葉じゃ生ぬるい修羅の巷だ。


 僕は久しぶりのパイモンとウェパルと一緒に風呂に入り、就寝した。フルフル?お風呂抜きだって言ったじゃん。




 翌朝、張り切っているパイモンとフルフルを連れて、僕らは地下迷宮に足を踏み入れた。


 パイモンは初めての僕の護衛だと浮かれていて、フルフルは今回の調査に役立てばお風呂禁止を解くと言ったので張り切っている。僕のダンジョンで戦闘力最高の2人ではあるが、この姿には不安を覚える。


 大丈夫だよね?生きて帰れるよね、僕?


 突然現れた2人は、今は地下迷宮のボス部屋、ミノタウルスの部屋にいる。昨日は遅かったからボスは夜が明けてから、という事だったのか?


 いや、でもこのダンジョンは夜だからとて気はぬけないはずだ。いくつか用意している魔物の入り込まない部屋も利用していなかったはずたし、やっぱり良くわからん。


 僕はスマホでトラップや魔物の位置を確認しつつ、危なげなく地下迷宮を進む。万一を考えて、ちょっと離れた場所に転移したので仕方が無い。僕の造った迷宮を、あんな短時間で踏破した奴等だ。近付きすぎでいきなり襲われてはたまったものではない。


 何度か不可避の魔物をパイモンとフルフルが片付けて、僕らはボスの部屋の前に到着した。


 フルフルが扉に手をかけ、パイモンが僕をかばうように背に隠す。


 ゆっくりと扉が開き、地下迷宮の支配者の間の様子が僕らの目に飛び込んでくる。




 地下迷宮の支配者、ミノタウルスが、2人の子供にボコボコにされていた。




 はぁっ!?





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