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 勇者の剣っ!?

 最上級のガントレットとグリーヴを手に入れたというのに、レイラは半ベソだった。


 僕としては、こんないい武器と防具を手に入れたんだから、狂喜乱舞してもいいと思うんだけど?


 因みにレイラは圏を買えなかった。ちゃんと白金貨5枚以内でおさめたというのに。全く。


 「おっしゃぁあ!次は俺だな!」


 え?


 シュタールが意気込んで僕の前に座る。


 いや、お前今までの流れ見てた?何でそんなヤル気満々なの?


 「まずはあれだ、アルトリアに見せてたペラペラの剣を見せてくれよ!」


 うーん………。調子が狂う。


 「ホラ、ウルミーだ」


 「おう!いやー、スゲーなコレ!ペラペラに薄い剣なんて初めて見たぜ!」


 「それはどちらかと言えば暗器だな。腰帯みたいに巻いて隠し、いざという時に抜くモンだ」


 「うはーっ!こんなんあったら、暗殺とかし放題だぞ!?スゲー!」


 何でコイツはこんなバカなのだろう?

 レイラですら僕を警戒していたのに、こいつはまるで私室にいるかのような無警戒さだ。


 「金が余ったらコレも買おう!」


 「んじゃ、とっとと済ますか。オリハルコンの剣でよかったか?」


 「おう!ホントにあるんだよな?」


 「あるぞ。お前こそ天帝金貨は持ってきたのか?」

 「おうっ!さっき取ってきた」


 ああ、アルトリアさんがお金下ろしに行ってたもんな。その時か。


 というか、白金貨15枚と天帝金貨1枚が引き出された冒険者組合は大丈夫か?


 「つか、お前は素直にそれで支払うのかよ?僕が嘘吐いてる可能性とか考えないの?」


 「は?なんで?」


 本気で不思議そうな顔をするシュタール。


 いや、自分で言うのもなんだけど今までの僕、中々の悪徳商人ぶりだったと思うんだけど?見てなかった?


 「つか、天帝金貨なんてどうやって手に入れたんだよ?」


 「ん?ああ、50年くらい前に、疫病を撒き散らす魔物が生まれてな。それを討伐した時に貰った」


 いや、お前ホント何者だよ?あ、いや、勇者か。


 「お前みたいな考えなしが、よく手元に残してたな」


 「オイオイ、ひでーな。別に俺、金遣いは荒くねーんだぞ?今まで特にこれといって欲しい物もなかったしな。その代わり欲しいものは何としても手に入れるってだけだ」


 「そのワガママを一身に受ける僕の身にもなってくれ………」


 「お前の扱う商品が、ことごとく俺の琴線に触れるのが悪い!!」


 「なんつー無茶苦茶な……」


 もういい。バカと話していても埒が開かない。とっとと剣売って、とっとと退散しよう。忘れちゃいけない。


 彼らは勇者で、僕は魔王なのだ。


 「んじゃ、ほい、コレね」


 僕は気軽に、オリハルコン製の剣をシュタールに手渡す。




 メル・パッター・ベモー。




 両手剣だ。見た目は普通の直剣ではあるが、かなり細く長い刀身を持つ剣である。鍔が二段階になっており、刺突に優れる一品である。実際に、チェインメイルを容易に貫ける威力があり、騎兵を馬ごと刺し殺す事もできたらしい。因みに天竺産。


 それをオリハルコンで作ったのだ。


 本来、細長く脆い刀身も、オリハルコンで造れば斧だって防げるだろう。


 「………………」


 シュタールの奴、言葉もなくただただその剣に見入ってやがる。ふふん。奇剣にしては地味とか言うと思ったが、それどころではないらしいな。


 「感想は?」


 「やべー………」


 語彙が貧相なこって。


 「それともう1つがこれだ」




 フランベルク。




 フランベルジェの原型とも呼ばれる片手剣だ。本来はドイツでレイピアとして造られ、フランベルジェと同じ波打つ刀身は装飾の意味合いが強かったそうだ。こっちはちゃんと奇剣らしい奇剣だ。


 だが、僕がそんなお飾りの剣を作るわけがない。


 確かに鍔の装飾には凝ったが、それ以上に凝ったのが中身である。刃には固いオリハルコンを外側、比較的柔らかいミスリルを芯に使った希少価値とか度外視の刀身なのだ。本当は日本刀みたいに四層構造にしたかったんだけど、そもそもオリハルコンとミスリルでは材質が違うので無理だったのだ。この刀身も、実は上手くいっている自信はない。


 刀身の波を大きくし、更には片手剣と言うにはギリギリの長さまで刀身を伸ばしたせいで、バランスもあまりよくない。


 素直にフランベルジェを造っていれば良かった、と造り上げた後に思った………。


 できればシュタールにはこっちを引き取ってもらいたいなぁ………。何て僕の希望を他所に、フランベルクを一瞥したシュタールは、メル・パッター・ベモーに向き直って蕩然と見入っていた。そうかい。確かに失敗作だよ。でも、そんじょそこらの剣なんかじゃ比べ物にならない出来なんだからな!!


 「僕が持ってるのはこの2振りだけだ。値段はメル・パッター・ベモーが天帝金貨1枚。フランベルクが白金貨90枚。どうする?」


 「両手剣!!」


 でしょうねぇ。


 っていうか名前覚えろ。


 「フランベルクはいいのか?」


 「うーん、いい剣だけど高いしな。それならあのペラペラの剣と、ミレとレイラの買った短剣を買う」


 くっ………。


 別に悔しくなんかないもんねっ!!これはあくまで試作品だからっ!!この失敗から次に繋げるもんねっ!!っていうか名前覚えろっ!!


 「あいよ毎度あり。ウルミーとジャマダハル、2つで白金貨5枚にしといてやる。おまけだ」


 「おう!ありがとう!」


 「………………」


 なんだろう。絶対僕は得してるのに、なんでこんなに釈然としないんだろう。

 腐っても勇者。バカでも勇者か。


 ホント、こいつだけは調子が狂う………。







 さて。さて、である。


 今回ミレ、レイラ、シュタールは複数の武器を買った。

 本来は武器とは消耗品である。使い続ければいずれ脆くなり、壊れる。だから予備を買うのは当然なのだが、僕の売った武具が早々容易く壊れるわけがない。


 ならば彼らは、常に多くの予備の武器を持ち歩くかと聞かれれば、答えはNOだ。何よりシュタールの袋に入れれば事足りる。


 だが、それで終わっちゃあつまらない。




 僕はシュタールから代金を受けとると、ある物を袋から取り出した。


 「シュタール、ミレさん、レイラさん。特殊なマジックアイテム、欲しくない?」




 シュタール以外は恐慌状態だった。





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