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 レイラの手甲っ!?

 「あの………」


 アルトリアさんが渋るミレからなんとか白金貨2枚を借り、支払いを済ませて消沈していると、震えるようにレイラが声をかけてきた。


 「色々生意気言ってごめんなさい………。あ、あんまり厳しくしないでください………」


 次はレイラの番か。


 「そんなに怯えずとも大丈夫ですよ。僕はただの商人です、あなた達をとって食ったりはしませんから」


 「………どこがだ………」


 んんー?聞こえたぞ、レイラちゃん?これは手加減は不要ということで良いかな?

 元よりするつもりもないけど。


 「レイラさんは手甲をご所望とか?」


 「あ、ああ!あ、いえ、はい………。あの、あんまり高くないので………」


 うーん、すっかり萎縮しちゃってるな。このままじゃ安い商品を買われて終わりだろう。かと言ってアルトリアさんの時のようなこれといった商品もない。ミレの時のような薄利多売も僕の持っている手甲じゃ品薄でどうにもならない。


 ここは、違う商品を売り付けることにしよう。


 「手甲ですか………。無いこともありませんが………。参考までにレイラさんの戦闘スタイルをお聞きしても?」


 「ア、アタシは、武器使ったりするのが苦手で………、ドワーフなのに器用じゃねーっていうか………。まどろっこしい事せずぶん殴るだけ、みたいな戦法です………」


 ほー!!レイラはドワーフだったのか!


 ドワーフと言えば髭モジャのおっさんを想像していたが、こんなかわいい女の子もいるんだ。

 そういえば髪は短いけど、睫毛がかなり長いな。髭の代わりに睫毛が長い?そんなバカな。


 「そうですねぇ、殴る要領で使う武具ならありますよ。さっきミレさんに売ったジャマダハルもまだストックがありますし」


 「ああ!!アレ!アレは良いなっ!正直アタシも欲しかったんだよ!………あ」


 「ふふふ。無理に畏まる必要はありませんよ。普段の口調で話してくれて構いません」


 そう言ったのに居ずまいを正し、体に緊張を走らせるレイラ。まずはこの警戒を何とかしないとな。


 「お安く、という事ですが、ご希望の金額はどれくらいで?」


 「は、白金貨4、枚くらいで………」


 ふむ。多分所持金は白金貨5枚といったところか。マン・ゴーシュと同じだけの値段だな。


 「それだけあれば充分ですよ。そうですね、では金貨10枚のこれからご覧になりますか?」


 僕はそう言ってただのナックルダスターをテーブルの上に出す。ただの、とは言ったが、不良の使う安物とは違う。


 中身はほとんど鉄だが、表面にはミスリルがコーティングされていて、魔法の補助式完備。魔法戦士、魔法拳闘士垂涎の逸品になっている。


 ………僕がいつか魔法が使えるようになったら、使いたい武器でもある。


 魔法使いなのに近距離肉弾戦専門とか、マジカッケー。


 「うーん、確かにスゲーいいけど、アタシは魔法使わねーしな。それにこれは完全に対人兵器だろ?アタシらは魔獣の相手が主だからな」


 そりゃそうだ。まぁ、これはただの顔見せ、というか掴みに出しただけなのでこれでいい。


 「ではコレ!」


 今度僕が取り出したのは一対のリング。


 圏。

 大きな円環に、グリップのついた打撃武器である。


 「ほぉ………」


 流石に食指が動いたようで、圏を手に取るレイラ。

 とはいえ、これはまだ序の口。


 「この圏には、他にも様々なバリエーションがありますよ」


 そう言って、さらに2つの圏を出す。


 大きな円環に放射状の棘の付いた金剛圏、さらに円環の内側まで刃の付いた圏まである。


 「この円環は、長柄の武器を中に収めて無力化する事に長けています。内側に刃の付いた物は、そのまま断ち切ることもできます。

 対人兵器という点では、ナックルダスターと変わりませんが、相手との接地面積が小さいので威力は格段に上がります」


 「確かに。いい武器だ」


 やはりどうにも淡白な反応だな。ちょっと前の2人に本気を出しすぎたかな。


 「因みに、一対金貨30枚となっております。この品質の武器であれば、お買い得かと」


 「ああ、確かに安いな。有力候補として残しておくか」


 まぁ、こんな所か。


 「では次にコレなどいかがでしょう?」


 次はトの字の鉄棒。


 そう、トンファーである。


 「これは………っ!?」


 「流石、この武器の利便性の高さに気付かれましたか?」


 「ああっ!こいつぁ、防具として使える武器、手甲より武器寄りで、武器よりは防具寄りなモンじゃねえのか!?」


 「その通りです」


 トンファー。


 発祥は中国ではなく琉球である。しかし、起源となったのは中国の拐だとも言われている。


 手甲のように防御する事は勿論、遠心力を使った打撃、リーチの長い拳打として利用でき、拳闘士にはもってこいの代物だ。


 「ちょ、ちょっと持ってみてもいいか?」


 「ええ」


 興奮も露に、トンファーを持ち、ヒュンヒュンと振って見せるレイラ。どうでもいいけど、よく初めて見る武器をそこまで上手く扱えるな。


 「レイラも、もうダメだな………」


 アニーさんが可哀想なものを見る目で、はしゃぐレイラを見ている。

 ミレとアルトリアさんの目にも憐憫が滲んでいた。


 「これ、いいな!!コレにするぜ!!」


 はいよー。


 「金貨40枚になります」


 「なんだ、思ったより安いじゃないか!!」


 失礼な。今日売ったのはどれもご奉仕価格だぞ?


 「では、先程ちらりと話にも出たジャマダハルも見ますか?」


 「見てぇ!!」


 コイツは、かなりシュタールと似た臭いがするし、これには飛び付くだろうな。


 「おぉ〜!コレだよコレ!!」


 「レイラさん、グリップを強く握り込んでみてください」


 「うん?こうか?」


 シャキン。


 軽い金属音がして、刃先が3つに別れる。


 「おぉっ!!」


 「こちらのジャマダハルには、こういったギミックがついております。

 普通のダガーとしては勿論、剣を受けたり、一撃で魔物に3ヶ所の裂傷を負わせることも可能です」


 このジャマダハルはグリップの位置は変えられないが、その分ギミックに凝ったのだ。 


 「お、おい、これはいくらだ?」


 「金貨70枚、2つで金貨140枚ですね」


 「さっきのトンファーと棘の付いた圏、このジャマダハルも合わせて買うぜ!!値段は、えーっと………」


 「合わせて金貨210枚ですね」


 「なぁんだ、思ったより安いじゃねえか!ビビって損したぜ!」


 そう言って懐をゴソゴソと探りだすレイラ。


 「では次にご所望の手甲ですね」


 「………え?」


 喜色満面の表情が、一気に急降下していく。


 僕がそんな値段で君を逃すとでも?


 「もしよろしければ、脚甲もご用意できますよ?


 ほんの少し、お高くなっておりますが」


 君の持ってる白金貨、全て巻き上げるに決まってるじゃん。




 商人に所持金を伝えるなんて、やっぱりレイラはバカだなぁ。





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