僕は武器商人っ!?
シュタールのウザさにいい加減辟易としていた頃、ようやくお目付け役のアニーさんが登場した。相変わらずの綺麗な緑のロングヘアーを靡かせて、シュタールを蹴り飛ばす。
うん、さすがエルフ。今日も美人だ。
「ホントに家売ろうとしやがったぞ、コイツ!?」
一緒に飛び込んできた少女もシュタールを蹴り飛ばした後、驚愕の表情で壁に激突したシュタールを見ていた。
明るい茶髪、地球なら赤毛と呼ばれる短い髪の少女だ。こっちだと、赤毛と言えばもっぱらシュタールのような鮮烈な赤色の髪を言う。
パイモンよりは長く、トリシャより短い髪は、やや癖のあるウルフヘアといった感じだ。身長は僕より低く、120cmあるかといったところで、両手に籠手を着けている以外は、まともに防具もない。優しい人なら、『こんな場所にいたら危ないよ』と声をかけるレベルで無防備な少女だった。
顔はやや吊り上がった目が特徴的な子供っぽい顔立ちだが、やたらと長い睫毛が色っぽさも感じさせる。
「だから言っただろう、レイラ。この商人は本当に商売上手で困るのだ」
「へぇー!これがお前等の言っていた商人かよ!?なんだ、アニーが気を許したって言ってたからどんなイケメンかと思えば、ただのガキじゃねえか!」
イラッ。
なんだかコイツには、シュタールと似た臭いを感じる。バカの臭いだ。あまり関わるのはよそう。
美少女だけど仕方がない。
僕はその少女から視線を外し、アニーさんに向き直る。
「やぁアニーさん、お久しぶりです」
「やぁキアス殿、相変わらず遣り手のようだな」
「アニーさんも相変わらずしっかりしてますね」
「そうでなくば家を失ってしまうからな」
「そうなったら僕のところで雇ってあげますよ?」
「ふむ。考えておこう」
そんなやり取りを不機嫌そうに眺める少女、―――とトリシャ。
いや、大丈夫だぞ?
確かにさっきの飛び蹴りを見た後じゃ信じられないかもしれないけど、アニーさんはまともな人だから。だから無理に僕とアニーさんの間に入ってこなくていいって!
「あらあら、ふふふ。なんだか楽しそうな事になっていますね」
「………僕には状況がわからない………」
栗色のロングヘアーの女性と、黒髪でおかっぱの少女が続いて入ってきた。
ロングヘアーの女性は、ややおっとりとした顔立ちで、今も柔らかく微笑んでいる。ただ体はおっとりとはいかない。法衣のようなゆったりとした装束でも隠せない、グラマラスな肢体。これはアレだ、おっとりお姉さんタイプってヤツだ。
何で鞭を持っているのかはわからないが。
少女の方は鉄面皮のような無表情。顔立ちは幼いが、体つきも幼い。ウチのウェパルよりややあるくらいの矮躯である。黒を基調とした服に、両手にナイフを持っている。
なんか怖っ!
「キアス、こいつ等が俺の仲間だ!ウェパルちゃんやフルフルちゃんみたく可愛いげがあるわけじゃばらけんっ!!!!」
復活したと思ったらまた吹っ飛ばされる勇者。もうお前勇者廃業しろよ。似合うと思うぞ、ピエロ。
「まぁまぁ、こちらが例の商人さんですか?本当に会えるとは思いもよりませんでした」
「………あの時のシュタールの直感を信じた、僕のお陰………」
「そうですねぇ。さすがミレちゃんです」
そこはシュタールのお陰じゃないんだ!?
なんとなくこのパーティーでのシュタールの立ち位置がわかった気がする。残念なヤツ。うぷぷぷぷぷ………。
「キアス殿、紹介しよう。そこにいる目付きの悪い小さいのがレイラ。腹黒そうなのがアルトリア。人形のようなのがミレだ。
私は知ってるな。アニトレント・ミルディだ。改めてよろしくな」
あ、アニーさんの本名初めて知った。アニーって名前じゃなかったんだ。
「なぁお前、シュタールにスゲーいい剣売ってただろ?アタシ達にもくれよ!」
うわー………、ホントにシュタールみたいなヤツだ………。メンドくさい………。
「ダメですよぉレイラちゃん、そんな言い方では。商人さん、私はアルトリア・ロードメルヴィン・ボルバトスと申します。私の仲間がごめんなさいね。
それはそれとして、頑丈な鞭とかは取り扱っていませんか?」
「………取り回しがし易く、刃こぼれしない、僕が握りやすいナイフ。………短剣も可………」
アルトリアという女性と、ミレという少女もかなりグイグイと自己主張してくる。
っていうか、いつから僕はこんなトル○コポジションになったんだ!?
「すまないなキアス殿………。皆シュタールの買った奇剣に惚れ込んでしまってな、もし商品に余裕があるなら都合してほしい」
ああ、アニーさんがこの人達の取りまとめ役なんだね………。シュタール1人でも面倒くさそうなのに、こんなクセのあるメンバーばかりで可哀想に。アルトリアさんはまともそうだけど、大変だ………。
さっきのは冗談だったけど、ホントに僕の所に来る?
つーか寒っ!!早く服着よ。