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 マジックロックっ!?

 あっぶねぇぇぇええ!!


 なんとかイケメンの聖騎士を倒した僕は、自分の体力を確認する。




 アムドゥスキアス 《レベル12》

 うそつきまおう ダンジョンマスター さぎし しょうにん


 たいりょく 5207/100120

 まりょく 7502/10024

 けいけんち 2341/120000

 ・

 ・

 ・




 危ない。本っ当に危ない!!

 体力が1/10以下まで減ってる!

 今でもちょっとずつ回復はしてるけど、1回に食らうダメージがハンパないのだ。ぱないのだ。


 僕の紙防御に、あの聖騎士は何度も何度も攻撃を加えた。いくら体力が高くて、ダメージ軽減があっても、減るものは減るのだ。


 『神の加護』で傷の治りは早くても、ダメージそのものは残ってんだぞ!?

 今でも全身から刺すような痛みで泣きそうなんだぞっ!?




 僕は一息吐き、右手にあるソレを見る。


 銃。


 そう、銃である。


 長い銃身と、それを覆うようにある木材で出来た、1.2mほどのマスケット銃。


 確かにあの聖騎士が間違えたように何も知らない人間が見れば、杖に見えるのだろう。


 僕には詳しい銃の知識など無い。

 ライフルや、機関銃、ハンドガンの形はわかる。その構造も、朧気ながら想像もつく。


 だが、あんな電気を使わない精密機械のようなものを、1から手作業で造るなど不可能だ。

 ハンドガンのブローバックどころか、リボルバーの回転構造すら再現が怪しい。機関銃の排莢装置など言わずもがな、なんとかボルトアクションのライフルが造れる程度である。


 だが何より難しいのが銃弾の再現だ。機械を用いず統一規格で弾丸を作り、薬莢に火薬を籠め、封入するというのが、恐ろしいほどに手間なのだ。

 量産体勢を確立すればそれも不可能ではないのだが、僕としては銃を僕の仲間に使わせるつもりはない。


 銃の起源は意外と古い。

 戦国時代にポルトガルから伝来したというだけでも、その古さはわかろうというものだ。 だが、それでも戦での花形の武器は槍だったし、遠距離用の武器は弓が主だった。その理由は、暴発や弾籠めの不便さがあったからだ。


 産業革命に伴う機械技術の発展が無ければ現代のような高等技術を内包する銃など造れないのだ。


 だが、1度見ればその造りは大まかにでも想像がつく。銃というのはそれほど単純な構造でありながら、画期的な武器なのだ。


 何より僕は、銃という物があまり好きではない。

 重火器技術のあまり発達していないこの世界には、出来ることなら銃なんて出来なければ良いと思っていたほどだ。


 高威力、広範囲、高効率な近代兵器の数々は、その起源のほとんどが火薬から始まるのだ。

 あんなものをこの世界に再現させれば、あの血みどろの世界中を巻き込んだ戦争をもこちらの世界で再現させてしまう。


 だから使いたくなかったのに………。




 銃把を握りながら、僕は苦々しい思いでその銃に弾をこめる。


 「『装填(リロード)』」


 カラン、と軽い音で薬莢が転がり出る。


 真鍮製のそれは、銃把の端に施された転移陣から排出され、新しい弾丸がストックの中から装填される。


 これが僕の僅かながらの抵抗である。


 火薬無使用の銃。『マジックロック』だ。


 フリントロックと同じような構造でありながら、火打ち石の代わりに魔石を用いて銃弾を放つ銃である。 魔石が薬莢を打ち付けると薬莢に魔力が流れ、内部で火魔法が発動する。一瞬で薬莢の魔法陣を破壊し、内部の空気を膨張させた魔法はすぐに潰えて弾丸を押し出す役目を終える。その後は転移陣での排莢である。

 見るものが、『ああ、あれはそういうマジックアイテムなんだな』と思ってくれれば御の字だが、これをヒントに銃を再現されては目も当てられない。


 あぁ………、本当に使いたくなかった………。




 それでもなぜ造ったのかと聞かれれば、やはり強いからという理由以外に無い。

 近代の戦争において、剣や槍、弓が消えたのは、銃の有用性があってこそなのだ。


 僕の身を守るため、泣く泣く、仕方なく、やむにやまれず造ったのがこのマスケットである。


 いや、マスケットというのは外見だけで、弾を籠めるのは自動だし、銃身には拙いながらもライフリングが施されているので、どちらかといえばライフルか。だがやはり俄知識の産物では、地球で想像するライフルほど命中精度もよくないし、マスケットがお似合いだ。




 まぁ仕方がないので、目撃者である2人の聖騎士にもこのイケメン聖騎士の後を追ってもらおう。

 アムハムラ王には固く口止めをして、銃に関する技術は封印する事ができれば良いなぁ………。




 こんな物、剣と魔法の世界には不要なのだ。




 いまだこちらを凝視して固まっている3人に、僕は向き直る。


 その時―――




 「おぉーい、アムハムラ王!無事かぁ?」




 聞き覚えのある間延びした声とは裏腹に、すごい勢いで窓から1人の男が飛び込んできた。




 ここで勇者登場かよ………っ!




 嘆くように内心で愚痴る僕の声を、神様は聞いてくれてるんだろうか?





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