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回想編 そのさん!

会長は不機嫌そうに腕を組みながら言った。


「それで、なんでここにいる?」

「なに会長さん不機嫌じゃん。あ、もしかして俺が会計君と二人で盛り上がっちゃったから寂しかったとか?」

「いいから答えろ。」


真面目ちゃんだなぁ。こういう生き方って疲れそう。もっと肩の力抜けば良いのに。普通の人間の高校生なんだから。


「生徒会を中心に話を進めろって言われたからね。生徒会役員に会うのが最初にすべきことかと思って。生徒会室にいればどうやっても会えるでしょ。」

「どうやって入ったの?入室にはカードキーが必要だけど。」

「窓から。鍵はちゃんと閉めなきゃダメだよ?」


俺は入ってきた窓を指さした。すると二人はもう少しマシなこと言えなかったのかという顔をした。

え、なにその顔。ホントだからね、嘘なんて言ってないよ。


「冗談なんて言わなくて良いのにー。カードキー貰ってたんでしょ?」

「いや、マジだって。」

「生徒会室は3階だ。あの窓には飛び移れるほど近くには木はないし、数分でもかかればセキュリティに引っ掛かる。」


厳重な警備ですね。流石、というべきか。

能力者だ準能力者だと散々言ってきたから忘れてるかもしれないけど普通科はただの進学校(校?)だ。しかも世界的に有名、というより世界一の財閥が創立に関わっていたからお金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんが多い。セキュリティも一般的な高校より厳重なのだ。

だがその誇るべき警備も対人間用。俺たち能力者には通用しない。


「そうなんだ。あ、カードキー頂戴。」

「いや、持ってるだろう。」


え、持ってないけど。


「さっきの話聞いてた?キーがないのにここに入れるはずないんだから持ってるはずだよ。ほらこれ。」

「聞いてんのとは失礼な。特別科の奴しか持ってないもん。」


ここは普通科なんだからカードキーも普通科のじゃないの?

思いつつこれ、と言って会計君が差し出した普通科のだろうカードキーと自分のカードキーも出して見比べる。見た感じ、特別科のものとほとんど変わりはない。

ということは、だ。このカードキーで開いたんじゃね?設定いじっとけば良いだけだもんね。


「……俺カードキー持ってんじゃん。」

「……そうみたいだね。」


会計君が呆れてる。特別科じゃカードキーあんまり使わないんだもん。鍵だって能力で開けられるし買い物の時くらいか?でも買い物も現金でしちゃうしなぁ。


「カードキーかぁ。盲点だったわー。」


同じ学校なんだからカードキーも同じなんて普通に考えれば分かることだったわー。

言いつつ俺は生徒会室を出る。


「はぁっ!?いきなりなにしてん」


お、すげぇ。ここの防音めっちゃいいな。会計君の叫び声が全く聞こえない。


「ここにかざすんで合ってるかな。」


ふんふん鼻歌を歌いながら自分のカードキーをリーダーにかざす。これで鍵が解除されるはず。

解除されるは…ず…。解…除…。か、かい……。


おかしいな。鍵が解除されたような音が全くしませんよ。俺の聴力かなり良いからね。俺に聞こえないくらい静か、なんてのはないと思うんだよね。

一応、とノブに触れる。まぁ予想通り動きませんよねー。


…………。


「開けてえええぇぇぇ!」


必死に叫ぶが反応はない。あ、ここ防音設備良かったような……。


「お願いっ!開けてください!」


扉をどんどん叩きながら叫ぶ。早く開けてくれないとこのドアぶち破るよ!

しかもなんか足音聞こえてきたんですけど。俺完全不審者ですよね!

最早声を出すとばれちゃうからひたすら扉をどんどんと叩く。軋んでるなんてきっと気のせいだよ。


涙目になり、無理やり開けるか、あるいはまた窓から入るか俺が本格的に悩み始めて漸く扉は開いた。急いで身体を滑り込ませる。


「あっぶなかったぁ。」


聞こえていた足音は違う方向に行ってたが、新しい足音聞こえてたんだよね。そんなには近くなかったからせっぱつまるほどではなかったんだけど。今思えば(結構パニくってました)。


「カードキーで開かなかったのか?」

「開いてこの状況になると思いますか?」


そりゃそうだ、と会長は書類に再び向き合う。待って、この人俺が扉一枚挟んだ廊下で危機に陥ってたのにずっと仕事してたの?


「会長さんひどいっ!もう少し俺のこと構ってくれてもいいんじゃないの。仕事で来てるのに。」

「文化祭よりも期日の迫った仕事の方が大切だ。」


冷たーい。仕事人間か。若いのにワーカーホリックで死ぬんじゃね?

よくよく見るとこの部屋やけに書類多いよね。いくらなんでも高校生が処理するには多すぎる気がする。それになんでここには会計と会長の二人しかいないんだろう。


「他の人たちは?副会長とか書記とか、いるんでしょ。」

「今はいない。」


今まで数人で回してきた生徒会を二人で回しているんだとしたらそりゃあ書類も溜まるだろうけど。いないってなんだろう。

副会長たちの不在、生徒会室に大量に溜まった書類、疲労の隠せていない二人の顔、仕事の手を止めない会長、会計は隠れ腐男子、会長可愛い……。

これから予想できることは……。

はっΣ(゜Д゜;!


「アンチ王道かっ!」

「違うよ!しかも後半あんま関係ないし!」


即座に会計に否定された。慣れない顔文字まで使ったというのにっ!まぁ腐男子クンが言うなら違うんだろうけどならこの状況はどういうこと?


「いや違くないんだけど多分君が思ってるのとは少し違うというか……。アンチが分かるなんて俺のお仲間としか思えないんだけど。」


俺が思ってるのと少し違う、とはどういうことだろうか。


「ぼさぼさ髪に瓶底眼鏡の騒音意味不明生物に惚れて仕事サボってるんじゃなくて?」

「無視しないでー。」

「騒音意味不明生物だけ合ってるな。」


あんなのに惚れる奴いんのか?と会長が目は書類に向けたまま言う。

つまり少なくとも一部分は合ってるようだ。


「じゃぁ副会長とかは何やってんのぉ。」

「あいつはストレス性の胃炎で入院中だ。」

「……書記は?」

「書記先輩は今2週間の修学旅行中だよー。今8日目かな。」

「庶務」

「あれには転入生がここに来ないよう見張らせている。」


会長たちは確か2年だから書記は3年かな?3年になって修学旅行ってのもどうかと思うけど、つまりこの状況はしばらく変えられないということか。

てか2週間て何だ2週間て。俺の修学旅行2泊3日だったぞ。リッチだな羨ましい。


「どうしようもないじゃん。」

「だからひたすら仕事やってるんだろうが。」

「体育祭とか近いからね。どうしても仕事終わんないんだよぉ。」


なんだろうこの王道からのズレっぷりは。いっそ清々しいほどだ。


「あ、一匹狼君とか爽やか君とかはいるの?」


ここまで王道にかすってるんだからいそうなものだ。まぁずれてるんだろうけど。


「いるよぉ。寂しがり屋ぼっちの一匹狼君と一見爽やか単なるめんどくさがり君なら。」


ですよねー。

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