人にものを投げてはいけません!
パンッと氷が割れる音が食堂に響く。結構派手な音したからその場にいた人のほとんど、いや多分全員がこっちを振り向く。あの、ごめんなさい。ここまで大きい音がするとは思わなかったんです。
「防いだか、面白くないな。」
心底つまらないという顔で委員長が言う。こんな危ない人が委員長でこの学校が平気なのか俺は心配です。
「俺じゃなかったら当たってたのにどういうつもりかなぁ、いいんちょー?」
しかも当たっていたのは恐らく泰一だ。分かっててこの人はやったんだろうが。
「お前が防ぐだろうことはわかっていたさ、例えそれが自分に向けられた攻撃でなくとも。予想通りでつまらなかったが。」
サイテーだ。この人は人としてサイテー。
「姫様に向けられた攻撃じゃない?じゃあ誰に向けた攻撃だったんだ?」
良太が尤もな質問をする。が、今はスルーだ。
「で、俺はどうすればいいのかなー。今のは、自己防衛にはならないからねー。当然何か罰則が?」
「……全て分かっていて防いだのか。そうだな、それなら」
「罰則なんてナシで良いよー。おトモダチが危ない目に合いそうなときに手を出すのは悪い事じゃないからねー。」
……誰だろう、このチャラい人は。キャラが被ってて、というか俺が薄れるからなんかやなんだが。んー、あー、この声はさっき委員長に俺を教えた人?ということはこの状況の原因?
「はじめましてー、この学校の生徒会長をしてる久遠修也でーす。こいつは風紀委員長の棚下恭夜。転校生の姫宮響ちゃん?可愛いねー。」
チャラいよ、ホントにチャラいんですけど。
俺チャラ男をなめてた。俺でもチャラ男とかできるとか確信してた。できないよ!俺には俺みたいな男の子を(たとえ冗談でも)こんなにさらっと口説けないよ!
俺は会長の口説き文句らしきものをまるっと無視して聞いた。
「生徒会長?」
「うん、そうだよ。ていうかさっき俺が口説いたのは無視?結構本気で好みなのに。」
会長が何かごちゃごちゃ言っていたが、今の俺にはどうでもいい。
生徒会長がチャラ男だと!?委員長と並んでまったく見劣りしない美形というのはグッジョブだが、チャラ男!?生徒会長は男前なイケメンであるべきだろう!チャラ男は会計で十分だ!
「……全部口にでてるし。なんだかものすごく偏見に満ち溢れた言葉を聞いたよ。傷つくなぁ。」
「姫様、やっぱり俺あなたと腐レンズになり」
「たくないよ、俺腐男子じゃないもん。あと今更だけど何ナチュラルに姫呼びしてんの。」
「突っ込む箇所ありまくりだな。誰かツッコミはいないのか。」
なんだよ、ここは萌えの塊だと思ってたのに。掠ってる、すごい掠ってる!あともう一息なのに何故こうなったんだろうか。
ついでに言っておくけど、俺ホントに腐男子じゃないから。女の子的目線で見て萌えとか言ってるから。
あーあ、なんか飽きたー。とか思ってたら王子の姿が見えた。
「やっほー王子。遅かったね、授業は結構前に終わったんじゃないの?」
俺は寝てたから知らないけど。なんか目ぇ覚めた時には周りのみんなは注文来てたみたいだし。そいういえば俺の周りにいる人たちは注文をしなくていいんだろうか。もしかして食事に来たことを忘れてるとか。
「遅かったねー、じゃないわ。今日も下級生とか上級生に囲まれてたのよ。ここに来る途中も何度も口説かれるし。鬱陶しいったらないわ。姫はどう」
「俺はずっとここで寝てた。」
「……。サボり癖は相変わらずなのね。それにしてもどうしてここは美形が多いのにあたしの好みがいないのかしら。」
「昨日最後に対戦した子は好みそうだったじゃないか。」
「あ、あの子ね。ダメアレは。昨日あなたに惚れたらしいわよ。良かったわね、巨乳美女に好かれて。見つかったら大変そうよ。」
まじか。なんてめんどそうな。
「じゃあ今王子の隣にいる人は?似た者同士気が合うんじゃない?」
そう言って俺は会長を指差した。そこで王子は初めて会長と委員長に気付いたようだ。
「いやよこんな遊びまくってそうな人。」
まさに遊びまくってそうな(事実遊びまくってた)人がそんなこと言っちゃう?
同じことを思ったらしい。会長が言った。
「俺だって君みたいな子はお断りですー。遊ぶんだったら響ちゃんみたいなキレイ系な子が良いなー。」
そう言って俺に抱きつこうとするのをさりげなく阻止する俺。
「響って姫のこと?趣味は合うのね。あたしも姫なら比較的タイプだわ。付き合ってみる、姫?」
「お断りします。」
「即答しないでよ。まぁ初体験があたしみたいなイイ女だと後が大変かもね?」
うわー、自分でイイ女って言っちゃったよ。事実だけど、事実だけどさぁ!ちょっとは謙遜とか、ああこの人日本人じゃなかったあぁぁぁぁ。
ていうか、
「ふんっ、初体験ならもう済ましてあるからそこらへんはご心配なくー!」
誤字などありましたら、連絡くださると嬉しいです。