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俺、紳士。

翌日、闘技会が再開です。


「あ゛ぁぁぁぁ、忘れてたぁぁぁっ!」


昨日シリアスモード入ってたら裕樹に準能力者について聞くとか選択肢になかったぁぁぁ。今日の試合どうすんだ俺。


「姫、煩いわよ。」


きゃー。王子めっちゃ落ち着いてるー。なんでー。

王子ははぁっ、とため息をついた。


「私は昨日ちゃんと聞いてきたもの。私の方に。」


抜かりないな。ていうか、今'私の方'って言ったよな。


「何。香月も来てたの?俺見てないよ。」


王子は再びため息をついた。そう言われても知らないんだからしょうがないだろう。

あぁ、香月っていうのは王子の世話役だから。


「まぁ必要もないのに、俺にわざわざ会いに来るわけないな。」


あの人俺の事好きじゃないしね。

声には出さないでおく。王子は詳しくは知らないだろうし。

ああー、にしても俺はどうしよう。どれくらいまでなら力出して良いんだろう。


「姫ー。A戦始まるわよー。これみて考えたらー?」


そうだ、瑞月さん戦うんだっけ。見とかなければ。

俺の出番までしばらく観察すればいっか。


瑞月さーん。とか応援してたら、馬鹿な俺は気づきました。

(あれ、王子に教えてもらえば良かったんじゃね。)

気づいた時には時すでに遅し。もう俺の試合が始まる時でした。くそっ。






始まったよおおぉぉぉぉ。

今回の相手は眼鏡冷徹そうな男と茶髪お嬢様チックな女です。女の方は実際「お嬢ー!」って呼ばれてる。男の方はなんか呼ばれてるが、声が興奮しすぎてて何言ってんのか分からない。

そして思ったんだが、この学校美形多いな。王子や裕樹レベルはまだ居ないけど。

とか考えてたら二人から同時に攻撃された。あまりに予想外の事だったので、「ひぃあぁ」とかよく分からない情けない叫び声を上げながらも、なんとか攻撃を躱した。


「うまく躱したわね。色々考えたのに。」


「昨日のデータではまだ十分ではないようだ。興味深い。」


なんかめんどそうなキャラきたぁぁぁ!しかもデータって何?昨日のあの一試合でそんなにデータって集まるかよ。それに俺手抜いてたから本当のデータじゃないし。


「まぁいいわ。続けていきましょう、眼鏡君。」


「ああ、そうだな。また再分析していこう。そうすれば新しい対策も思いつくかもしれない。」


眼鏡で普通に反応したよ。二つ名は眼鏡なのか?

とかまた考え事してたら、また二人から攻撃された。なんでだよ。次は順番的に王子の番だったろ!


「もうなんで俺ばっか狙われてんの!?」


今度は連続で攻撃してきた。息つく暇もない。二人とも息が合いすぎだ。昨日の組とは大違いである。

能力使わないで(墓穴掘らないように)避けるのも疲れてきた。

そう思って少し気を抜いて避けようとしたためか。あるいはデータが充分集まったからなのか。


「……右斜め後ろに避けるぞ。」


眼鏡に行動を読まれた。お嬢は「了解。」と答えると俺に襲い掛かる。俺は言い当てられたことに少し動揺していたにもあってうまく避けられそうにない。


「ああくそっ。」


言いながら氷の壁をつくる。急いだから少してきとーだけどお嬢の攻撃は防げたようだ。


「ふむ。あの短時間でこの防御壁か。硬度・速度ともにずば抜けてはいないがトップクラス。硬度は男子としてはあり得ないほどだ。」


眼鏡が俺の能力をブツブツ言いながら分析してる。気持ち悪い。もう耐えられませんっ!


「王子。なんでそこに突っ立ってんの?これチーム戦でしょ。」


俺がぎゃーぎゃーと必死に避けてる間王子は高みの見物してたよね。見てたんだから!


「あらごめんなさい。だって必死に避けてる姫が可愛らしくて、つい。」


「ついじゃないよね故意だよね!しかも可愛らしいって何、ここでSを発揮しなくていいから。俺Mじゃないし、なんか周りからハァハァしてんの聞こえるんだけどキモいんですけどっ!」


「実に興味深い。真に興味深いぞ。あぁ転校生(男)君、俺に君の力を存分に見せたまえ。」


「ひいいぃぃぃぃぃっ、キモいキモいキモいキモいキモい無理無理無理無理いぃぃぃぃ!なんかマッドサイエンティストな感じするぅぅ!」


なんか叫んでしかいないけど本当に気持ち悪い。もうすぐ目から汗が出てきそうだ。こうなったらいっそこのステージ全部吹っ飛ばすとか。おおそれいいな。そうだそうしよう。

俺の心を知ってかは分からないが、漸く王子が動いた。


「もうしょうがないわね。戦ってあげるわよ。あの眼鏡をヤったほうが良いんでしょ?」


「いやなんで上から目線!?」とか言わないよ!ありがとう王子!俺は必死に頷いた。

しょうがねえなったくよぉ、みたいな空気出しながら王子が眼鏡に向かう。これで俺もまともに戦えるよ。


「眼鏡君を警戒してかは分からないけど、そろそろ本気出してくれるかしら?」


お嬢が言った。あれ、怒ってる。なんで怒ってんの。


「なんでってねぇ!あなたの方が弱そうだから狙ったのに全然攻撃当たんないし、能力は使ってこないしよ!私の事馬鹿にしてるとしか思えません!」


いやあのそんなつもりは欠片もなかったんですけど、なら力使えばいいのか?


「えーじゃぁ俺も使うよ?S戦参加なんだからあんま大怪我しないでね?」


忠告したのに彼女はなんかさらに怒ってる。馬鹿にしたとかそんなんじゃないのに、女の子って難しいっ!(まぁ俺も女の子だったけどねテヘペロ。)

まぁこれ以上なんか言ったら火に油を注ぐようなことになりかねないので、とりあえず大きめな一撃を


どかーーん


と打ち込んだ。あーあ、ステージちょっと吹き飛んだよ。作り甘いんじゃないの。


「ほら、俺も頑張ったんだからそっちも……て、あら?」


なんか唖然としてますよ、周りも含めて。デジャヴだ。あれ。

お嬢に至っては……えっ、震えてる!?あんな攻撃まともに当てないよ!女の子に当てられるわけないでしょ。

ああこれはどうすれば?


「ねぇ審判とかって、ああ居た。気づかなかったよ。当たんなくてよかったねー。」


「は、はいぃぃっ!何かご用件でもっ!」


「用?……ああそうだ。少し質問するけど良いよね?」


「喜んでっ!」


なんかめっちゃ怯えてるんだけど。


「これって勝敗はどう決まってるの?」


「勝敗ですか?……あぁ。相手が戦闘不能、つまりは気絶するかあるいは戦えないような怪我を負った場合。または降参をした場合です。」


何故そんな質問を、という顔をしていたが、俺が転校生であることを思い出してくれたんだろう。禁止事項とかもついでに教えてもらう。しかし本題はこれからだ。


「ペアで戦うのは今回限りの特別ルールだよね。一方が降参した場合もう一人は?」


えー、どうなんでしょう。と審判も悩んでいる。これまで一度もなかったのか。

というか審判って教員じゃないな。ルールを決めてるのは教員だろうから、誰か近くにいないだろうか。



「ペアのうちどちらかが負けたらもう一方も負けとします。」


ああ、そういえば裕樹は先生ってことになってるんだっけか。もう墓穴は掘らせませんよ?という副音声が聞こえるが無視だ。


「そうかぁ。ねー王子良い?」


王子を振り返ると呆れた目で俺を見てた。いやなんで戦ってないの。


「ダメ?」


首を少し傾げながら尋ねた。なんか色々抜かしたけど分かんだろ、と思って言ったらどうやらわかってくれたようだ。


「構わないわよ。でも容赦ないあなたね。」


「ひどいな、俺こんなに優しいのに。それに俺の邪魔になるようなら潰すけど、そんなんじゃなさそうだし。」


俺がニッコリと微笑むと、周りの怯えがひどくなった。いや、失礼じゃないか?俺に。少しハァハァ聞こえるなんてきっと気のせいだ、うん。まぁいい。


「審判君。もうわかってると思うけど、俺の負けで。じゃーねー。」


呆然としている審判君に手を振り、颯爽とステージから降りようとした。しかし、


「あだっ。……なに。」


なんか結界が張られてる。思いっきしぶつかったよ。顔面強打でマジ痛い。周りの視線も痛い。

しかしどうりでさっきの攻撃でステージしか傷ついてない筈だ。だが昨日俺達が下りた時にはすんなり通れたから、勝敗が決まったら解けるものじゃないのか。


「……姫。審判が勝敗を言ってないわ。そうしないとコレは解けないのよ。」


ふぅーん。審判君に早く言ってと視線を送る。


「あの、本当によろしいのですか?」


審判君がおずおずと聞いてきた。どこら辺がよろしくないというのか。


「普通は皆さん勝てるのなら誰だろうと容赦なく叩き潰します。今後に係わっても来ますから。」


なのにあなた方は、と言う。うーん、今後って言っても俺達もはやトップにいるし、なにより、


「戦意失って怯えて言葉も発せない相手にさらに攻撃するなんて俺には無理だよ。第一女の子に、しかもこんなきれいな顔に傷つけるわけにはいかないでしょ?」


再び呆然としだした審判君に今度こそ俺達の負けを言ってもらいステージから降りる。


「うわー、結界とか気づかなかった。俺だっせー。」


一人で笑っていると王子に言われた。


「姫も丸くなったのね。」


「だ・か・ら、俺は元から優しいしー。それに王子が考えてるだろうアレはアレくらいがちょうど良かったんだよー。」


そうかしらね、と王子は返してきた。うん、今のテキトーにしたでしょ。ひどいわっ。


「……あと前から気になってたんだけど、その喋りはなんなの?」


ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました!


「なんか見た目チャラいらしいからなんならチャラ男設定でいこうかなぁってね、いっそのこと。」


あっそ、と言われた。うう、王子が冷たい。ああでも、と王子が続けた。


「やってることはそこそこ紳士っぽいのに口調で台無しだったわよ?」


……いいんだもん。俺は心根が紳士なんだから!

誤字などありましたらご連絡ください。

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