まさかです。
闘技会というのは実践訓練の一種らしい。しかし普段授業で行う実践訓練は1クラス又は多くても1学年(男女別)なのに対し、闘技会は性別・学年に関係なく準能力者は全員参加のトーナメント形式で行われる。また授業では判定しづらいランク分けもされるようだ(このランクは準能力者の基準でつくられているので俺のような超能力者のランク付けとはまた違う)。
「月1で行われるんなら準備とか予めしてあるんじゃないのか?せんせーは準備が終わってないとか言ってたけど。」
俺が教室に着いてから結構経っている。
「転校生が来るのが急だったから対戦表の調整とか、あとは裕ちゃんから闘技場の強化を提案されたりとかでなんか時間かかってるみたいだぞ。本当は今日1日闘技会の予定だったのに午前は通常授業になっちまうし、どうやら今日できそうにない対戦は明日になるみたいだし。」
闘技場の強化ってきっと俺達の為だよな。準能力者用の闘技場なんて俺達じゃ簡単に壊せるし。そんな無茶はしないだろうが。
要は俺達のせいで遅れてんのか。悪いな。
『闘技会の準備が整いました。参加者は全員地下闘技場へ移動を開始してください。』
そう放送がかかったのはそれからさらに10分後のことだった。
広い。よくまぁ地下にこんだけ頑丈で広い施設をつくれたな。
「姫。」
王子に手招きされた。何の用だろうか。
「何。」
言いながら近づくとグイッと肩を抱き寄せられ小声で言われた。周りから黄色い悲鳴とかお似合いねとかあれゲイとかいろいろ聞こえるけど無視だ無視。
「お前どうすんだ。」
いや、どうすんだって言われても。
なんでそんな事聞かれてるのか分かってないという顔をしてみる。
「はぁ?対戦表みてねーのかなにしてんだてめぇ。」
耳元でいきなり大声を出されて耳が……。
「いきなり何大声出してんの。つーか見る前にそっちが呼んだんだろ!」
俺達が言い合いになる寸前に一之瀬・瑞月さんの幼馴染コンビが現れた。良かった。対戦始まる前にココを壊すとこだった。
「なんでいきなり揉めだしてんだ。」
今まで近くに居たんなら明らかわかるだろ。
「そうよ!第一八王子さん何語話してんの。学校の共通言語は日本語って決まってるでしょう!」
しまったぁぁ!王子の口悪ぃと思ってたけどフランス語で話してたー!いや俺は日本語話してたよ、会話が成立してただけで。
面倒くせぇ、という顔で王子は瑞月さんを華麗にスルーした。
「対戦相手が誰だか知らないのね?」
「あぁ。けど転入したばっかだし比較的弱いとこだろ。」
はぁっ、と大きなため息をつかれた。なんだよ。俺の言ったこと普通だろう。
「普通じゃないから困ってるんでしょう。私達はS戦よ。」
S戦?あれ、周りの知らない人まで顔真っ青だけど。何なの、S戦って。
一之瀬が説明してくれた。けどなんか手ぇ震えてるよっ!
「S戦は学校のトップレベルだけの選抜対戦だ。」
瑞月さんなんか俺達に手合わせてる。いや、別に死なないけど。でもそれじゃぁ、
「適当にやるわけにいかないって事!?」
思わず叫んでしまった。
そういう事よ、と王子に頷かれる。どうしてだよくそっ。
(なんでそんな大層なとこで戦わなくちゃいけないんだよ!)
どっかにいるだろう裕樹にテレパシーを送る。
(その方が仕事が早く終わるでしょう。)
すぐに送られてきたテレパシーの方向を見ると、教員らしき集団の中に居た。
(選別は見てるだけでもできるわぁっ!俺が負けるはずないけどいきなり転校生がそんなとこで戦ったら不審に思われるだろう。それで超能力者だってバレたらどうすんだ!)
(……も、勿論その可能性も考えていましたが、姫様方ならいけるだろうと思いまして。あ、ほら、S戦参加者に近づきやすいですしね!)
絶対考えてなかっただろ。今あっ、とか言ってたよな。口動いてんだよ、たかだか300mくらいの距離だぞ。俺の眼の良さなめんな。最後にそれらしい理由つけて安心した顔すんじゃねぇ。
まぁ、裕樹のとってつけた理由も一理あるし、しょうがないよな。てきとーに負けよう。
『姫宮響君、八王子優希さん。早くリングに上がってください。』
……ちょっとまだ覚悟が。
王子に襟を掴まれ引きずられながら素晴らしい笑顔で言われました。
「やるからには勝つわよね?」
はい、当然です。
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