「檸檬」
「今日は梶井基次郎」
「また文学の日?」
「このシリーズ続いてるしね」
「タイトル当てていい?」
「どうぞ」
「檸檬」
「正解」
「あの話好きなんだよね」
「どこが?」
「最後」
「本屋に檸檬置くところ?」
「そう」
「世界が急に変わる感じ」
「分かる」
「さっきまで重かった空気が一瞬で軽くなる」
「うん」
「ねえ」
「なに」
「恋も似てない?」
「どういう意味?」
「昨日まで普通だったのに」
「うん」
「誰かの一言で世界変わる」
「それは分かる」
「じゃあ質問」
「来た」
「もしさ」
「うん」
「今のこの関係に檸檬置いたらどうなると思う?」
「どういうこと?」
「つまりさ」
「うん」
「突然終わるってこと」
「物騒だなあ」
「文学だから」
「便利な言葉にするね」
「でもさ」
「うん」
「終わる可能性はあるよね」
「まあね」
「恋ってだいたい不安定だし」
「確かに」
「だから聞く」
「なに」
「終わったらどうする?」
「難しい質問だな」
「考えてる?」
「うん」
「たぶん」
「うん」
「少し笑うと思う」
「笑う?」
「なんで?」
「ここまで続くと思ってなかったから」
「意外?」
「最初はすぐ終わると思ってた」
「ひどいな」
「でも続いた」
「確かに」
「それだけでちょっと面白い」
「君は?」
「なに」
「終わったら」
「怒る」
「怒るの?」
「うん」
「どうして?」
「まだ話したいから」
「それさ」
「うん」
「結構わがまま」
「恋ってわがままでしょ」
「否定できない」
「それにさ」
「うん」
「終わるってことは」
「うん」
「楽しかった時間があったってことじゃん」
「なるほど」
「だからさ」
「うん」
「もし終わるなら」
「うん」
「最後に言うと思う」
「なにを?」
「檸檬きれいですね」
「それ文学混ざりすぎ」
「でも嫌いじゃないでしょ」
「まあね」
「ねえ」
「なに」
「もし本当に終わったら」
「うん」
「その檸檬」
「うん」
「私が置くかも」
「どこに?」
「君の世界の真ん中に」
「それさ」
「うん」
「結構爆弾だよ」
「知ってる」
「でもさ」
「なに」
「恋ってだいたい爆弾でしょ」




