「走れメロス」
「ねえ」
「なに」
「昨日の秘密」
「ああ」
「まだ続きある?」
「あるよ」
「やっぱり」
「でも今日は文学変わる」
「また?」
「うん」
「今度は何」
「太宰治」
「また太宰」
「でも明るいやつ」
「太宰に明るい話なんてある?」
「あるよ」
「何」
「走れメロス」
「ああ」
「知ってる?」
「もちろん」
「友情の話だよね」
「信じる話」
「王様に疑われるやつ」
「人は信じられるかって話」
「うん」
「で、それをどう使うの」
「簡単」
「またそれ」
「質問するだけ」
「質問シリーズ好きだね」
「恋ってだいたい質問でしょ」
「確かに」
「じゃあ聞く」
「うん」
「もしさ」
「うん」
「私が逃げたらどうする?」
「逃げる?」
「うん」
「どこから」
「例えば」
「うん」
「君から」
「……」
「答えないの?」
「いや」
「うん」
「追いかけると思う」
「メロスみたいに?」
「そこまで格好よくないけど」
「なんで?」
「逃げる理由があるなら聞きたいから」
「怒らない?」
「怒るかもしれない」
「じゃあ怖い」
「でも」
「でも?」
「いなくなるよりマシ」
「……」
「今度はこっちが聞く」
「なに」
「君は?」
「何」
「私が逃げたら」
「うん」
「追う?」
「うん」
「即答」
「だって」
「うん」
「君はメロスじゃないでしょ」
「違うね」
「だから走るのは私の役」
「それどういう理屈」
「簡単」
「またそれ」
「私のほうが先に好きだから」
「……」
「沈黙長い」
「今の」
「うん」
「告白?」
「どう思う?」
「文学的には」
「うん」
「かなり直接的」
「じゃあ」
「うん」
「それから?」




