「モンテ・クリスト伯」
「ねえ」
「なに」
「この前さ、すごく長い小説の話を聞いたんだけど」
「長い小説?」
「うん」
「めちゃくちゃ長い」
「それだけだと候補多い」
「じゃあヒント」
「どうぞ」
「復讐」
「復讐小説?」
「うん」
「しかも有名」
「……」
「分かった?」
「モンテ・クリスト伯?」
「正解」
「やっぱり」
「読んだことある?」
「全部はない」
「長すぎる」
「それは分かる」
「でもさ」
「うん」
「復讐の話って珍しいよね」
「どういう意味?」
「普通の物語って」
「うん」
「許すとか」
「うん」
「成長とか」
「うん」
「そういう方向じゃん」
「確かに」
「でもこの話は」
「うん」
「ずっと復讐」
「徹底してる」
「ねえ」
「なに」
「復讐ってどう思う?」
「難しい質問」
「文学だから」
「それ万能だな」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「たぶん」
「うん」
「疲れそう」
「疲れる?」
「長いから」
「なるほど」
「ずっと怒ってるの」
「うん」
「しんどそう」
「確かに」
「そっちは?」
「私は」
「うん」
「ちょっと分かる」
「復讐?」
「うん」
「なんで?」
「忘れられないことってあるじゃん」
「ある」
「それを」
「うん」
「ちゃんと終わらせたい」
「なるほど」
「ねえ」
「なに」
「もしさ」
「うん」
「この帰り道」
「うん」
「突然終わったら」
「うん」
「どうする?」
「難しいな」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「たぶん」
「うん」
「復讐はしない」
「なんで」
「だって」
「うん」
「理由分からないと」
「うん」
「怒れない」
「……」
「どうしたの」
「それ」
「うん」
「ちょっと優しい」
「そう?」
「うん」
「復讐より」
「うん」
「理由聞きそう」
「それはある」
「ねえ」
「なに」
「もしさ」
「うん」
「この帰り道」
「うん」
「突然長くなったら」
「長く?」
「うん」
「倍くらい」
「それは」
「うん」
「ちょっと嬉しい」




