「こころ」
「文学の続き」
「来たね」
「約束したから」
「こころだっけ」
「そう」
「夏目漱石の」
「先生と私」
「重い話だよね」
「かなり」
「裏切りとか罪悪感とか」
「友情とか信頼とか」
「恋もある」
「あるね」
「で、それをどう使うの」
「簡単」
「簡単?」
「質問するだけ」
「何を」
「君は私を信じる?」
「急に重いな」
「こころだから」
「ずるいなその理屈」
「文学だから許して」
「じゃあ聞く」
「うん」
「信じるって何」
「秘密を預けられること」
「なるほど」
「例えばさ」
「うん」
「誰にも言ってないことを言うとか」
「怖いね」
「怖い?」
「少し」
「どうして」
「それ知ったら戻れなくなる感じする」
「先生とKみたいに?」
「そう」
「でもさ」
「うん」
「恋ってだいたいそうじゃない?」
「戻れない?」
「うん」
「確かに」
「だから聞く」
「うん」
「君は私を信じる?」
「……」
「沈黙長い」
「考えてる」
「何を」
「もし信じるって言ったら」
「うん」
「君は何を言うの」
「秘密」
「またそれ」
「文学だから」
「便利な言葉だなあ」
「じゃあさ」
「うん」
「逆に聞く」
「何」
「君は私を信じる?」
「……うん」
「即答だね」
「だってさ」
「うん」
「月がきれいですねって言う人」
「うん」
「だいたい信用できる気がする」
「それ文学的すぎる理屈」
「でも嫌いじゃないでしょ」
「うん」
「じゃあ」
「うん」
「秘密、言っていい?」
「いいよ」
「実はさ」
「うん」
「月」
「うん」
「見てなかった」
「え?」
「君に言う口実だった」
「……それ」
「うん」
「ずるいね」
「うん」
「でもさ」
「なに」
「今はちゃんと見てる」
「月?」
「うん」
「きれい?」
「すごく」




