「モモ」
「今日は海外の児童文学なんだけど、知ってるかどうかちょっと微妙なラインのやつかもしれない。でも有名な作品ではある」
「海外?児童文学って言われると候補多すぎるな」
「ヒント出そうか」
「うん」
「時間の話」
「時間?」
「うん」
「……あ」
「分かった?」
「モモ?」
「正解」
「よかった、当たった」
「読んだことある?」
「昔読んだことあるよ。灰色の男たちが人の時間を盗む話だよね」
「そう」
「時間を節約しろって言って」
「うん」
「でも実はその分、人はどんどん忙しくなっていく」
「皮肉な話だよね」
「ねえ」
「なに」
「時間ってさ」
「うん」
「大事だと思う?」
「もちろん」
「でもさ」
「うん」
「お金より?」
「うーん」
「難しい?」
「ちょっとね」
「でもさ」
「うん」
「お金は取り戻せるけど」
「うん」
「時間は戻らない」
「それよく言うよね」
「でも本当だと思う」
「確かに」
「じゃあ聞く」
「なに?」
「この時間」
「うん」
「無駄だと思う?」
「……」
「沈黙長いね」
「考えてる」
「うん」
「正直に言う?」
「もちろん」
「最初は」
「うん」
「ちょっと無駄かなって思ってた」
「え」
「いや」
「うん」
「悪い意味じゃなくて」
「どういう意味?」
「ただの帰り道の雑談だと思ってたから」
「なるほど」
「でも」
「うん」
「途中から変わった」
「いつ?」
「覚えてない」
「でもさ」
「うん」
「気づいたら」
「うん」
「この時間なくなるの嫌だなって思ってた」
「……」
「どうしたの」
「ちょっと嬉しい」
「なんで?」
「同じこと思ってたから」
「ほんと?」
「うん」
「モモってさ」
「うん」
「人の話を聞くのが上手い子だったじゃん」
「そうだね」
「ただ聞くだけなのに」
「うん」
「みんな元気になる」
「不思議だよね」
「じゃあさ」
「うん」
「君はどっち?」
「どっち?」
「話す方?」
「うん」
「聞く方?」
「うーん」
「半分半分」
「なるほど」
「でも」
「うん」
「君と話すときは」
「うん」
「聞く方かも」
「なんで?」
「君の話」
「うん」
「結構面白いから」
「……」
「どうしたの」
「それ」
「うん」
「結構嬉しい」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあさ」
「なに」
「この時間」
「うん」
「節約する?」
「なんで」
「モモの世界みたいに」
「うーん」
「うん」
「それは嫌」
「なんで?」
「だって」
「うん」
「この時間」
「うん」
「減らしたくない」




