「ドグラ・マグラ」
「今日は夢野久作。ちょっと変わった文学だけど知ってる?」
「名前は聞いたことある。ドグラ・マグラ?」
「正解。記憶とか人格とか、全部ぐちゃぐちゃになる話」
「読むと頭おかしくなるって言われてるやつだ」
「そうそう。自分が誰か分からなくなる」
「怖いね」
「でもさ」
「うん」
「恋にも少し似てない?」
「またそれ?」
「だって好きになると」
「うん」
「自分でも変になるでしょ」
「まあ否定できない」
「じゃあ今日の質問」
「はい来た」
「もしさ」
「うん」
「君が私のこと全部忘れたらどうする?」
「記憶の話か」
「ドグラ・マグラだから」
「便利な理由だなあ」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「多分」
「うん」
「また仲良くなると思う」
「そんな簡単?」
「だってさ」
「うん」
「君の話し方」
「うん」
「考え方」
「うん」
「たぶんまた面白いと思う」
「なるほど」
「そっちは?」
「私?」
「うん」
「私も似てる」
「ほんと?」
「うん」
「君が全部忘れても」
「うん」
「また話すと思う」
「なんで?」
「簡単」
「またそれ?」
「君と話すの」
「うん」
「結構好きだから」
「……」
「どうしたの」
「最近その言葉多いね」
「嫌?」
「嫌じゃない」
「ほんと?」
「むしろ」
「うん」
「安心する」
「なんで?」
「この会話」
「うん」
「ちゃんと続いてる感じするから」
「なるほど」
「ねえ」
「なに」
「もしさ」
「うん」
「全部夢だったらどうする?」
「急にまた哲学」
「文学だから」
「それ万能すぎる」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「夢でもいい」
「ほんと?」
「うん」
「なんで?」
「だってさ」
「うん」
「夢でも」
「うん」
「君と話してるなら」
「うん」
「それ結構楽しい」
「……」
「どうしたの」
「ちょっと思った」
「なに?」
「じゃあさ」
「うん」
「もしこれ夢でも」
「うん」
「起きるまで」
「うん」
「もう少し話そう」




