「変身」
「今日はカフカ。日本文学じゃないけど、この流れなら合うと思う」
「カフカってあれだよね。変身」
「正解。朝起きたら虫になってる話」
「有名すぎるやつ」
「でも内容は結構重い」
「家族に嫌われていくやつだよね」
「うん」
「ねえ」
「なに」
「もしさ」
「うん」
「君が急に別人みたいになったらどうする?」
「どういう意味?」
「性格とか」
「うん」
「考え方とか」
「なるほど」
「好きじゃなくなる?」
「難しいな」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「最初は戸惑うと思う」
「正直だね」
「でもさ」
「うん」
「完全に別人にはならない気がする」
「なんで?」
「君の話し方とか」
「うん」
「考え方とか」
「うん」
「どこか残ると思う」
「なるほど」
「そっちは?」
「私?」
「うん」
「もし君が虫になったら」
「急にカフカそのまま来た」
「答えて」
「……」
「沈黙長いね」
「考えてる」
「怖い?」
「少し」
「なんで?」
「想像すると悲しいから」
「それ優しいね」
「でもさ」
「うん」
「完全に離れたりはしないと思う」
「ほんと?」
「うん」
「なんで?」
「簡単」
「またそれ」
「君だって分かるから」
「虫でも?」
「うん」
「どうやって分かるの?」
「声」
「虫なのに?」
「それでも分かる気がする」
「すごい自信だね」
「恋ってだいたいそういうものじゃない?」
「……」
「どうしたの」
「ちょっと思った」
「なに?」
「もし逆だったら」
「うん」
「私が変わったらどうする?」
「どう変わるの?」
「例えば」
「うん」
「今みたいに話さなくなったら」
「それは困る」
「なんで?」
「この会話」
「うん」
「結構好きだから」
「……」
「どうしたの」
「嬉しい」
「そんなに?」
「うん」
「だってさ」
「うん」
「虫になっても分かるって言われるより」
「うん」
「その言葉の方が嬉しい」
「なんで?」
「今の私を見てくれてる感じするから」
「なるほど」
「ねえ」
「なに」
「もし明日」
「うん」
「君が変わってても」
「うん」
「この帰り道」
「うん」
「たぶんまた話しかける」
「なんて言うの?」
「簡単」
「またそれ」
「今日はどんな文学?」




