「藪の中」
「今日は芥川龍之介。昨日のより少し変わった話」
「また芥川?当てていい?」
「どうぞ」
「藪の中?」
「正解。真実が分からない話」
「同じ事件なのに証言が全部違うやつ」
「そう」
「誰が本当のこと言ってるか分からない」
「うん」
「ねえ」
「なに」
「恋も似てない?」
「どういう意味?」
「同じ出来事でもさ」
「うん」
「人によって意味違う」
「なるほど」
「例えば?」
「同じ言葉でも」
「うん」
「嬉しい人もいるし」
「うん」
「不安になる人もいる」
「確かに」
「じゃあ今日の質問」
「来た」
「もしさ」
「うん」
「同じ会話を」
「うん」
「君と私で違う意味で覚えてたらどうする?」
「面白い質問だね」
「藪の中だから」
「その使い方便利すぎる」
「答えて」
「うーん」
「うん」
「たぶん」
「うん」
「その違い聞く」
「なんで?」
「君がどう思ったか知りたいから」
「なるほど」
「そっちは?」
「私は」
「うん」
「少し怖い」
「なんで?」
「もし全然違う意味だったら」
「うん」
「同じ時間でも違うものになる」
「確かに」
「でもさ」
「うん」
「一つだけ確かなことある」
「なに?」
「この会話」
「うん」
「続いてる」
「……」
「それは同じだね」
「うん」
「ねえ」
「なに」
「最初の月の話」
「うん」
「君どう覚えてる?」
「どうって?」
「意味」
「簡単」
「またそれ」
「君に話しかけたかった」
「……」
「それだけ?」
「うん」
「私も同じ」
「ほんと?」
「うん」
「つまりさ」
「うん」
「藪の中でも」
「うん」
「この部分だけ」
「うん」
「同じだった」




