「注文の多い料理店」
「今日は宮沢賢治。ちょっと変わった話だけど、タイトル分かる?」
「うーん……注文の多い料理店?」
「正解。森の中のレストランに入ったら、客の方が料理されそうになる話」
「覚えてる。だんだん要求が増えていくやつ」
「そうそう。帽子を取れとか、上着を脱げとか」
「最後は塩を体に塗れって言われるんだよね」
「うん。読んだとき結構怖かった」
「でもちょっと面白い」
「ねえ」
「なに」
「恋も似てない?」
「どういう意味?」
「最初は簡単なお願いだけなのに」
「うん」
「だんだん要求が増える」
「なるほど」
「例えば?」
「最初は少し話したいだけ」
「うん」
「次はもっと話したい」
「うん」
「次は会いたい」
「それ普通じゃない?」
「でも増えていくでしょ」
「まあね」
「じゃあ今日の質問」
「来た」
「恋ってさ」
「うん」
「どこまで許せる?」
「何を?」
「相手のわがまま」
「難しいな」
「料理店の注文みたいに」
「うん」
「増えていったら?」
「全部は無理だと思う」
「どこで止める?」
「自分が壊れそうになったら」
「現実的だね」
「そっちは?」
「私は」
「うん」
「わりと許すかも」
「なんで?」
「好きだから」
「それ危ないよ」
「そうかな」
「料理店の客みたいになる」
「でもさ」
「うん」
「相手も同じなら大丈夫じゃない?」
「同じ?」
「うん」
「お互い注文聞く」
「なるほど」
「それなら料理されない」
「面白い理屈だね」
「じゃあ聞く」
「なに」
「今までの私の注文」
「うん」
「多かった?」
「そんなに」
「ほんと?」
「むしろ少ない」
「意外」
「どうして?」
「もっとわがまま言う人かと思ってた」
「言っていい?」
「どうぞ」
「もっと話したい」
「それ注文?」
「うん」
「それなら聞くよ」
「ほんと?」
「だってさ」
「うん」
「その注文」
「うん」
「私も同じだから」
「それズルい」
「なんで?」
「断れない注文じゃん」
「じゃあもう一つ」
「増えた」
「嫌?」
「聞くだけ聞く」
「今度は」
「うん」
「会って話したい」
「……」
「沈黙長いね」
「考えてる」
「断る?」
「いや」
「うん」
「それ注文多いけど」
「うん」
「悪くない料理店かも」




