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帰り道、はなし話  作者: vastum


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「失われた時を求めて」

「今日さ」


「なに?」


「さっきパン屋の前通ったら」


「うん」


「いい匂いした」


「焼きたて?」


「たぶん」


「それで本?」


「そう」


「ヒント出す?」


「どうぞ」


「記憶」


「うん」


「匂い」


「うん」


「あと」


「うん」


「長い小説」


「……」


「思いついた?」


「失われた時を求めて」


「正解」


「プルースト」


「読んだ?」


「途中まで」


「長すぎる」


「それは聞く」


「ねえ」


「なに?」


「匂いってさ」


「うん」


「急に思い出さない?」


「……ある」


「どんな?」


「夏」


「夏?」


「うん」


「アスファルト」


「……それ分かる」


「そっちは?」


「私は」


「うん」


「雨」


「雨?」


「地面の匂い」


「それいい」


「ねえ」


「なに?」


「もしさ」


「うん」


「この帰り道の匂い」


「うん」


「覚えてたら」


「……」


「どう?」


「多分」


「うん」


「思い出す」


「いつ?」


「後で」


「……」


「どんな時?」


「歩いてる時」


「……それいい」


「そっちは?」


「私は」


「うん」


「たぶん」


「うん」


「静かな時」


「静かな時?」


「うん」


「急に」


「……」


「それ」


「うん」


「帰り道っぽい」

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