「人間椅子」
「今日は江戸川乱歩」
「お、雰囲気変わった」
「タイトル分かる?」
「人間椅子」
「正解」
「ちょっと怖いやつ」
「椅子の中に人がいる話」
「そう」
「見えない場所に誰かいる」
「想像するとぞっとする」
「ねえ」
「なに」
「恋も似てない?」
「どういう意味?」
「見えないところに気持ちがある」
「ああ」
「外からは分からない」
「確かに」
「だから質問」
「また質問だ」
「嫌?」
「慣れた」
「じゃあ聞く」
「うん」
「君はさ」
「うん」
「私のどこが好き?」
「急に普通の質問」
「文学の合間の休憩」
「うーん」
「うん」
「会話」
「会話?」
「君と話すの楽しい」
「それだけ?」
「それが一番」
「……」
「不満?」
「ちょっと」
「なんで」
「もっと特別な理由あるかと思った」
「あるよ」
「なに?」
「でもうまく言えない」
「言ってみて」
「難しいな」
「文学好きなのに?」
「文学は読む方だから」
「じゃあヒント」
「うん」
「人間椅子」
「え?」
「椅子の中の人」
「うん」
「ずっとそこにいる」
「うん」
「誰にも見えないけど」
「うん」
「その人がいないと椅子は成立しない」
「……」
「つまり?」
「つまり」
「うん」
「君がいると会話が成立する」
「それ結局会話じゃん」
「でもさ」
「うん」
「君がいない会話って想像できない」
「……」
「今度は君」
「なに」
「私のどこ好き?」
「簡単」
「またそれ」
「君が」
「うん」
「ちゃんと聞いてくれるところ」
「聞いてるだけ?」
「うん」
「それだけで結構救われる」
「そんなに?」
「うん」
「人ってさ」
「うん」
「意外と聞いてもらえない」
「確かに」
「だから」
「うん」
「君と話すと安心する」
「……」
「どうしたの」
「ちょっと嬉しい」
「それなら良かった」
「ねえ」
「なに」
「人間椅子ってさ」
「うん」
「見えないところに人がいる話でしょ」
「そう」
「じゃあさ」
「うん」
「この会話の椅子の中」
「うん」
「たぶん君がいる」
「どういう意味」
「見えないところで」
「うん」
「私の気持ち支えてる」
「それ」
「うん」
「ちょっとずるい」
「なんで」
「そんなこと言われたら」
「うん」
「簡単に離れられない」
「じゃあ」
「うん」
「しばらく座っててよ」
「その椅子」
「うん」
「居心地いい?」
「結構好き」




