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ep26:対単体必殺多重司令ドクトリン/新鋭と老兵/帝都奪還.

 蛇眼陽暦107年陸の月21日、帝都奪還作戦、ファースト・サンライズ始動。文弘厩克彦親王率いる親衛隊が一番槍に突撃したと後の戦史が伝える。

ーー図録・半年戦争よりーー


 砲撃、銃弾の雨、滝、嵐をジグザグした雷の軌跡で潜り抜け和多志達は砲台群に接近ッ肉薄ッ零距離ッ破壊ッ追い越す。


 柾彦卿曰く。「はっきり言って今の殿下と親衛隊はクソ強いです。他の部隊は足を引っ張るので勝手に戦ってください。指揮は牛隅大佐や加狩中佐らがやりますので。

 

 殿下の女神としての加護、祝福と親衛隊の信徒、使徒としての信仰の永久機関。この状態なら最強、無敵、全知全能です」


 勝手一代男め好きに言う。巨大ゴレームの肩に飛び乗り、蛇斬り丸でバラバラにする。ホーミング機能で和多志の位置に収束する外理光線(フィフス・ビーム)が無意味とばかりに弾かれる。


 次瞬間、外理術で風のように舞って味方飛行機のキャノピーに飛び乗りハンドサインとテレパスで要請。



 敵の飛行機群を掻い潜り弾丸を蛇斬り丸と外理光刃(フィフス・バイト)を付加した守り刀で切り払う。一方で親衛隊が地上で障害物を突破。


 斬撃を放った瞬間、右翼隊が躊躇なく障害物を跳び越え、左翼は馬を駆って援護射撃。全員が和多志の意志を“感じ取り”、瞬時に判断を共有する。


 敵司令塔までダイブし空中で落雷の外理術で吹っ飛ばし、爆風に乗って独創している馬群の先頭。愛馬、浅霧に飛び乗り光のように駆けルート疾る。


(化け物、悪魔、神!?)

(美しい……残酷な美しさだ)

「何だよコレ。神話か何かの再現なのか!?」

「」


 合間合間に拾う敵兵の思念に言葉。良し、上手く演れているようだ。

 浅霧に飛び乗り光のように駆けルート疾る。これらの動きに追随する和多志の親衛隊。


 今ならどこまででもついてくる親衛隊/使徒に無尽蔵に加護、祝福、報酬を与えられる。調子が良い。和多志と親衛隊の使徒達との呼吸が同期していた。


 前線を突破した。瞬間、遠く聴覚範囲の外から声が聞こえる。


「あの小僧1人を殺せ。畑から収穫できる兵士も工場で製造できる兵器も全て喪っても構わない。殺せ、さすれば我らの人造天子によって因果判定は必然となり勝利する。殺せ」


 遠くから頭の中に響くバグロ殿の声。

 反乱軍の北方人民連邦軍の動きが変わる。帝都の兵士達、帝都の兵器群。全て和多志1人を殺す為に配置運用されている。


「集え、続け」

 親衛隊に、我が使徒に多くの言葉はいらない。集結し帝都の司令部を目指し、到着、潰す。軍の動きは一糸も乱れず和多志を殺す為に動き続ける。




 対単体必殺多重司令ドクトリンーヘカトンケイルー。北方人民連邦の秘策が此方に迫る。


ーーー絶旗平七朗 観 蛇眼陽暦107年陸の月ーーー


 帝都湾上、新造旗艦大円(マドカ)艦橋。古の言葉で我が国を現す名の艦で悠々と観戦し神輿になるつもりで来たのだが、敵の動きが妙に気になる。


 先陣の部隊が突入してからの敵の動きが妙だ。これ以上味方を入れたくないのはわかる。それでもだ防御するにしても攻撃するにしても得心のいかない運用がされている。


「提督、萩山退役大将から通信です」

 昔からの付き合いの参謀の萩山君がそう言って判断を仰ぐ。君の兄の……と言いかけたがやめた。特に断る理由もないので通信を繋げてもらう。


「やあ、萩山大将。この忙しいのに私語通話じゃないだろうな」

「アーテステス。只今両元帥への三方通話を試みております聞こえますでしょうかモーシモシ!」


 ワシも白坂元帥も大将へ肯定の言葉を返した。

「克彦殿下をご存じですかな? ワタクシ多少騎兵の扱いを教えた事がございますが直ぐに覚える可愛げのない生徒でありまして……」


「萩山君、結論から言いなさい」

 結論を促す軒坂君。2人の会話に混ざらず思案する。この戦争……いや雀開事変の頃から武勲赫赫たる厩様であり、民間でお育ちになった。後は帝立学秀苑へ入学されず偶に神隠しにあい儀式やパーティから抜け出す……。


「……奇しくも我ら皆退役後校長を経験した訳であります」

「特段珍しい経歴でもあるまい」


 心の中で軒坂君に同意。軍人の退役後としては良くある仕事だ。

「大将閣下。突入準備が整いました」


 別の兵士と思われる声が通信に割り込む。

「うむ。気に入らんのですよ。我ら帝国軍を無視してワシの生徒に寄ってたかってね。


教育者の端くれとして北の小僧どもに帝都の泥の味を教育してやろうかと両校長お手伝い願います」


 ビシッと言う音で敬礼したのが目に浮かぶようにわかった。

「機関砲を弱いとこに集中せよ。穴が空き次第突撃する。これより突入いたします大円帝国万歳 それ突撃ィーーッ!!」


 通信が一方的に切れる。愚考するにどうやら克彦殿下はあの中に居るようだ。

「貴官らに命令する権限も、貴官らが命令を聞く必要もない事は承知だ。包囲を可及的速やかに進めてくれ。奴らに包囲しているがどちらなのか思い出させてやれ」


 通信機から軒坂君の声がまだ聞こえる。

「Ω(おめがき)を掲げてくれ。意味は将校達ならば理解するだろう。下の仕事を奪う気はない」

 ふと、窓を見ると今日の帝都湾は晴天で波が高かった。



ーーー文弘厩克彦 観 蛇眼陽暦107年陸の月ーーー


 幾つあるのだよ? もう何十個もの帝都の司令部を潰した。責めて数が分かればと思うが外理による隠匿が巧みで数がわからない。


「集結、続け!」の一声で、親衛隊全員が目線だけで左右に分かれ、司令部を取り囲む。言葉は不要、呼吸も不要、ただ和多志の意思を受け取るだけ。また一つ司令部を潰した。


 致し方がない。無理矢理でも一旦離脱するか。

「厩様アアアッ!!!」

デカい声を上げながら萩山退役大将が麾下の連隊率いて連れて突破。敵陣の中へ入ってきた。


 北方人民連邦軍全体の動きが鈍る。外の軍が妨害をしてくれた。隠匿が揺らぎ司令部の数も位置も全部見えた。


 萩山退役大将に敬礼をすると親衛隊へ命令を下す。

「親衛隊突撃。和多志が導く、全ての司令部を踏破し貫く」


(ーー和多志は恵と裁きをもたらす者

天より地に嫁いだ稲妻


愛し子と約束の地がために神風を

氷の時代を洗い流すための慈雨をーー)


突撃の瞬間。こちらに敬礼を返す萩山退役大将が見えた。親衛隊は和多志に一糸乱れず続く。突撃の後、反乱軍の軍勢は自壊するように崩れ去る。


 帝都奪還決戦は開始より一刻で勝敗が決した。文弘厩克彦少将、萩山余志振退役大将の突入撹乱戦術によって帝国軍の包囲を支え切れず反乱軍側が瓦解したのが通説となっている。


 余談であるが野史として、「反乱軍が突入した文弘厩少将をターゲットにした包囲作戦を取った」、「文弘厩少将が全ての司令部を踏破し、反乱軍は崩壊した」という話もある。

 ーー図録・半年戦争よりーー

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