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決意の朝

掲載日:2025/12/03

とある女子大学生の決意をどうぞ。

戸建ての駐車場のボンネットの上で待ち望んでいる朝日を浴びる猫二匹。丸まって寝ている。尻尾で顔を隠しているので顔は見えない。高級車だろうが、お構いなしの猫の行動。理不尽と言わないのが猫好き。たしかこの家では犬が屋内で飼育されている。この猫二匹と犬は喧嘩しないんだろうか。ーいや、猫が相手にしなさそうである。吠える犬に我が道を行き聞こえないかの如く周囲を見渡して欠伸をしている姿が目に浮かぶ。

ーピロリロ

携帯電話の着信通知の音がなった。

確認する。

ブラウザのニュースランキングの発表だった。うん。友人の好きなアイドルのCMが放送されるとランクインされていた。この友人のお陰でこのアイドルだけは顔と名前を覚えることができた。

四十を超えはじめ、手の油分が消えやすくなる冬は白い線が入るようになってくるので、入念にハンドクリームをぬっている。

今日はまだあまかったか。

先ほどの戸建ての駐車場の車の上の猫たちは起きることもなく、彼らの前を通り過ぎる。

目前の十字路。その時反対側の角の家玄関の扉が開いて、中からおじいさんが出てきた。セーターを着ている。背が高く痩せた身体が印象的だ。家の門のポストの新聞を取り出す。

笑顔が大切。挨拶をしてみる。

「おはようございます」

「おはよう」

すこしかすれた低音ボイスが返ってきた。

思わず心の中でガッツポーズをとる。初見で挨拶が返ってくるなんてなんて素敵なおじいさまなのだろう。私の中でそのおじいさんへのポイントがグンと上がる。”いいひと”へとステータスアップされるのだ。

笑顔で会釈をし、十字路で方向確認をする。

朝の六時前。冬。

この時間でも早くから出勤する方がちらほら道路を移動している。さしずめ歩きの人は、近くの駐車場へ行って自らの車に乗り込むのだろう。自転車の人は最寄り駅まで向かうに違いない。

私はというと。

「ふふふ」

いや、寒い。寒いが、朝から気分転換に散歩をしている。コンビニで買い物して甘いものでも食べるかと思っていたが、その誘惑に打ち勝ち、コンビニを超えてこの住宅地まで歩いてきた。

距離にして徒歩十分。

気分転換に出てきただけであるが、何か新しいことが始まりそうでわくわくしてきた。

自分の心の中でわくわくが叫び出す。

うおー!!

新年が来てからと思っていたけれど、もう今年中にしておこうって気分になってきた。

バシッと決めるぞ!

愛の告白を。

そして告白をするのだ。相手の反応や返事がどうであれ私は満足するだろう。なぜなら何年も何年も想い続けて時には拗らせてきたのだ。

もうこれでケリを付けるのだ!

告白したりされたりして付き合ってきたわけでもないのに、まるで恋人に本当の気持ちを伝えて別れようとしているかの気持ちにも似た今の心境に笑えて来た。

「あはははは」

突如として笑った私に、視線を向ける通行人のおじさんを横目に、まっすぐ進んだ十字路が徐々に遠ざかっていく。

家から離れて、このまま・・・・・・。

奇跡的に相手の連絡先は知っている。

知っているのに打ち明けられずにいた。一緒の学校なのに声を掛けられずにいた。そんな私が今、携帯電話を取り出し声を掛ける。相手には初めて掛ける。

高揚しているのか緊張しているのかドキドキする中、私は私の中で口を紡ぎ自らの行動を目をかっぴらいて見守る。

ートゥルトゥルトゥル

ーガチャ

相手の声が聞こえる。

「はい、多田さん?」

声が、耳に届くその声だと分かったとたんに跳ね上がる心臓。と同時に怒涛のように癒されていく心の荒波。

好きだ。

「あ、朝早くにごめんなさい」

「いや」

「えっと、その。高校の時同じクラスだった多田です」

同じ大学であることを忘れてしまったかのような自己紹介に、後悔と焦りが募る。

「いや、同じ大学なんですけれど・・・・・・その」

「はい」

気張れ!

「告白させてください。好きです。高校の時から好きでした。今までの時間ありがとうございました」

頭を下げる。

「・・・・・・」

相手が沈黙していることに一喜一憂する気持ちがどこかに転げたらしい。凛とした自分がそこにはいた。

試合前の選手のようだ。

顔を上げる。

「本当にありがとうございました。自分は前に進みます」

「は、はい。あの、ありがとうございます。その頑張ってください」

「はい」

嬉しかった。誰の励ましよりも嬉しかった。声が高校生な乙女になっていた。

「失礼します」

「あ、はい。失礼します」

通話を切る。

「はぁ」

両手を広げて胸を張って顔を上げる。

大きく冷たい朝の空気を肺一杯、いや身体に命一杯吸い込む。

ありがとう私。ごめんね私。

うん。大きく頷いて、後ろへ振り向く。家へと急ぐ。

私も出かける用意をしなきゃ。

大学がある。

彼を追って通うようになった大学だけれども、楽しくなってきた。

その分野をもう少し積極的に取り組んで学びたい。

ゼミの先生にも相談の時間をとってもらえるように話しをしなければ。憧れる先輩たちの姿を追いかけるように進みたくなった。この憧れは恋とは違う。

もちろん親愛はある。

夏休み先輩の活動に参加させてもらえるようにしたい。今までは生活のためにしていたアルバイトだった。それも心持を変えよう。生活のためであったものを活動の時の資金としても使おう。

アルバイト先のマネージャーにもシフトの相談をしなければ。

いけない。メモメモ。

メモを取りたい。

メモを取りたいが、残念ながらまだ家に辿り着けない。正確には今敷地内に入ったが、自分の部屋じゃない。

玄関を開ける音を静かにするなんて心遣いをする気持ちの余裕もなく、開けて入った。

キッチンの方からか声がする。

自分の部屋へ上がっていく。ようやくたどり着いた部屋に入って直ぐに、机の上の手帳のメモ欄に今溢れている想いをメモを取っていく。

わくわくが内からあふれていてなかなかメモがいつもの調子で書けない。漢字も思いつかなくなったり、間違えたり。それでもあきらめるなんて言葉すら思い浮かぶこと無く最後まで書き上げる。

階下から母親の声がする。

「いつまで寝てるの?」

「今行く」

時計を見ると、朝の七時過ぎ。

まだ間に合う。

いや、服着替えなきゃ。中に着ているのパジャマだった。

いやだ。あのまま相手の家に向かっていたらと思うと恥ずかしくなって笑えてきた。

自分で自分にうけている。

いや、ありえない。そうとうてんぱってたんだなぁ。

「よし、着替えよう」

いつものようでいつもとは違う朝が始まる。

同じ朝食でもいつもと違うように思う。母を見る。すると朝の挨拶を返してくれたおじいさんを思い出した。

あ。いつも用意してくれる朝ご飯を見る。

母は私と目が合うと、「何?」と聞きながら、すこし笑った。

何とも言えなくなった私は、「お母さん。いつもありがとう」そう言って、「いただきます」と朝ごはんを食べ始めた。

母は目を見開いて驚いていたが、部屋から出てきた父に、今のことを話している。戸惑って嬉しいようだ。それにほほ笑む。

父と目が合う。

ドキリとした。

微かに目を細め頷いた父は、こちらに何も言うことはなく。お母さんに「よかったじゃないか」とか「母さんありがとう」というと「俺にもごはんを」と言って促して用意してもらっていた。



お父さんはお母さんから聞かされますが、主人公である女子大学生である自らの子供には何も言いませんでした。その理由はさまざまあるとご想像されていらっしゃるでしょう。

私の考えたその理由は下へ

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   ↓

一番大切にしたいのが妻であること。娘を見るとエネルギーに満ちた明るい表情なので心配はいらないと考えたこと。


でした。

ジャンジャン。

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