第二十四話 サトラムス渓谷防衛戦 (3)
「へえ。やるな。」
仁は、一歩踏み込んで相手の剣を弾こうとする。
しかし、相手はその動きを捌いて正面で構えた。
それと同時に、剣に炎が帯びるのが見える。
「私の名は、ガイウス=ギース。ダルキア帝国軍四竜騎士の一人でフレアドラゴンの名を預かる者だ。…貴様が異世界人か?」
仁の前に立ち塞がった、黒塗りに赤い縁取りの魔装騎士から声が上がった。
ガイウスは、返り血で赤く染まりつつあった仁のラグナロクと相対すると風魔法の魔道具で名乗りを上げた。
その横には、周囲の惨劇に静かに怒りをこみ上げているジェリルの魔装騎士が立っている。
「これが…人のすることなの?」
ジェリルは、仁のラグナロクの周りが臓物や血液でまさしく血に染まっている状況に怒りを露わにした。
仁は、始め相手にするつもりもなかったが、その二体の魔装騎士が現れた途端、周囲の敵が引いたのを見てガイウスの正面に立った。
そして、スピーカーのスイッチを入れる。
「そうだ。…白神 仁だ。なるほど。あんたら、強いんだな?」
「ああ。今までと同じにされては困る。…白神 仁…。覚えておこう。」
「必要ないぜ?どうせ、すぐに死ぬんだろ?」
しかし、その仁の言葉にはジェリルが反応した。
「それは、貴様の方だ!!」
ジェリルは、手にしていた剣を振り下ろし、そこから稲妻を放った。だが、仁は容易くそれを避けると一気に距離を詰める。
ジェリルは、天に向かって剣を向けると叫んだ。
「三雷撃!!」
その叫びと同時に、仁のラグナロクの真上に落雷が三本起きる。しかし、それですら躱してジェリルに肉迫する。
「覚悟!」
「させるか!」
ガイウスは、ジェリルの懐に繰り出された仁の金砕棒を剣で弾き落とすとそのままジェリルを突き飛ばし回避させた。
だが、仁は弾き落とされた金砕棒をそのまま地面に突き立てるとそれを軸にして、リニアブーストを片足だけ発動させると態勢を崩しているジェリルに向かって蹴りを放つ。
「ウオオオ!」
ジェリルは、必死に絶叫しながら剣を捨てて腕を十字にすると蹴りを受け止めながら後方に下がる。
ガイウスは、それに対して炎の剣を振り上げると仁の蹴り足を斬り下ろそうとした。仁は、慌てることなく膝を曲げて躱すと金砕棒を引き抜きガイウスを胴凪に振り回す。
あまりの速さに、振り下ろした剣を捨てガイウスは後方に下がった。もし、受けようとしたり、剣を握っていれば手首から先が破壊されるほどのものだったからだ。
三人の間に距離が出来る。
すると、仁はため息を吐いて二人の落とした剣を一本ずつ拾い上げると、それぞれに放り投げた。
「…大事なものじゃないのか?」
「き、貴様…」
ジェリルはあまりの屈辱に、その美しい顔を大きく歪めながら剣を拾う。
ガイウスは、無言で拾いながらも額には青筋をを浮かべている。
そして、冷静に判断するとジェリルに言った。
「ジェリル。二人でやるぞ。」
「それがいい。一人ずつは退屈そうだ。観客も楽しめないだろうしな。」
仁は、そう言って遠巻きにこちらを眺めている兵士や騎士達を見る。
ガイウスは、かつてここまで自分を侮辱する者に出会ったことがなかった。そして、それと同時に強い相手にも。それはジェリルも同じだった。
先程まで、強者を求めていた二人は得体の知れない敵に脅威を感じていた。
「ここからが、本番だ!!」
ジェリルは、再び剣先から稲妻を放つとそれに合わせて突っ込む。稲妻を避けた仁を両断するためだ。
すると、ガイウスはそれに合わせて炎属性の魔法を発動させる。
ガイウスの周囲に無数の剣の形をした炎が現れる。
「千刃炎」
だが、仁は稲妻を避けてジェリルの剣を金砕棒で容易く受け止めると片手でレールマシンガンにエレノアからもらったドラムマガジンを装着する。
「ジェリル!下がれ!」
ガイウスは、そう叫ぶとジェリルが下がった瞬間に無数の炎の剣を仁に向かって降り注いだ。
仁の四方八方から炎の剣が襲いかかる。
「まったく、せっかく温存してたのに。」
仁は、レールマシンガンで、その炎の剣に向かってエレノア特製の弾丸を撒き散らした。
弾丸は、ミスリルの効果で次々と炎を霧散させていく。
「なんだと?!」
ガイウスは、未だ経験したことない状況に驚愕する。逆に仁は満足気な笑みを浮かべた。
「うまくいったぜ。障壁だけじゃなく魔法にも効いたってエレノアに教えてやらなきゃな。」
そして、その光景に唖然とするジェリルに、一気に距離を詰めるとレールマシンガンでジェリルの魔装騎士の両足を消し飛ばす。
「ヒッ!!」
「ジェリル!!」
ガイウスは、すぐにファイヤーボールを撃ち、ジェリルに下がる時間を作ろうとした。だが、ファイヤーボールは、同様にレールマシンガンに掻き消される。
「無駄なのを見てなかったのか?」
仁は、そう言ってジェリルの魔装騎士に近づくとキャノピーを無理矢理引き剥がした。
そこには、恐怖に顔を歪め涙を浮かべたジェリルの姿が露わになる。
「女だったのか。安心しろ。死ぬのは一瞬だ。」
そう言うと、ジェリルの長い白髮を握って外に引っ張り出すと金砕棒で横に体を真っ二つにする。
断面からは、夥しい血と臓物が地面にまき散らされた。
仁のラグナロクは、更に赤みを増していく。
「き、貴様…」
それらを目の当たりにしたガイウスは、我武者羅になって目に血の涙を浮かべながら仁に踊りかかった。
「ったく簡単に死にやがって。」
仁は、半分になったジェリルの体をその場に投げ捨てると、金砕棒で簡単にガイウスの剣撃を受ける。
「だめだな。最後までちゃんと冷静でいないとな。」
仁は、笑みを浮かべて呟いた。




