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可愛い姫さま  作者: 苺屋カエル
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姫様と宰相と

姫様の年齢が少し幼いので、純粋に恋愛物がお好みの方はつまらないと感じるかもしれません。


むかしむかし、ではありませんがどこか遠くの、そして異世界でのお話です。



「い、嫌じゃ、嫌じゃ、ぜったいにイ・ヤ・じゃーー!」

壮麗な宮殿に響き渡る少女の声。

「ひ、ひぃぃぃー、誰か、誰か居らぬのかっ。わらわを助けるのじゃー」

宮殿内には多くの者が働いていましたが、少女の悲鳴に手を休める者も、顔を上げる者も居りませんでした。

「うぎゃぁ、やめいっ、やめるのじゃっ。助けてたも、お父たま、お父たまーーーー」

泣き叫ぶ哀れな声が響きます。可哀想なことに少女を庇護する父は王宮を空けて不在でした。

「ひぃっ、痛い、痛い。わらわに触るでないっ。誰かっ、助けてたもーー」

大きな叫びを最後に少女の悲鳴は止み、くぐもった嗚咽に変わりました。






「早く服を整えなさい。誰かに見られて困るのは貴女ですよ」

泣き伏す少女から体を離し冷酷に告げるものがおりました。

立ち上がる青年の容姿は美しく、人を惹きつける魅力を備えております。

銀の髪は光を弾き、深い紫の瞳は時に闇の色よりも濃く、他者を威圧する美しい姿は王者のようでした。

しかし少女にとって青年の美貌も風格もただ恐ろしいだけのものでした。


「ひっ、お、お父たまに言いつけてやる。お父たまは強いのよ、お前なぞコテンパンなのじゃ」

舌足らずでつむぐ言葉は涙でつかえて一層の哀れを誘います。

冷酷な青年は乱れた姿の少女を見ても眉一つ動かすことはありませんでした。

「お父たまは魔王なのじゃぞっ。わらわにこのような無礼、絶対に許さぬ」

父からの贈り物である、大きなクマのぬいぐるみに泣き縋る少女。

「お前なぞ大っ嫌いじゃ。お父たまに追放してもらうのじゃ」

その言葉を聞いた青年は苛立ちに似た溜息をこぼします。

傍らで鈍く光るペーパーナイフを取ると、そのまま少女に向かって投げつけました。

刃先は少女の、愛するクマのぬいぐるみの右目に深々と刺さりました。



「コ、コロッケーー」少女の悲痛な叫びが部屋中に響きます。


「何をするのじゃ、わらわの愛するコロッケにっ。お、お前は鬼畜じゃ、サド侯爵の再来じゃっ、お前なぞ牢獄に入って、えすえむ小説を書いておれば良いのじゃっっ、この下種めっーーー」

泣き喚く少女はコロッケ(クマ)に突き刺さったペーパーナイフを抜こうとしますが少しも動きません。


「さっさとパンツをはきなさい。姫様」

青年はそう言って銀の髪をかき上げます。

その仕草は壮絶な色気があり、数多の女性の、いえ男性さえも腰砕けの状態に掛かる威力がありましたが、少女には全く効果がありません。姫様は目の前の愛しのコロッケに夢中です。


「おおおぅう。抜けぬっ、抜けぬー。コロッケ、がんばるのじゃっ。わらわがすぐに助けてやるぞー」

パンツをズリ下げたままコロッケを救助する少女はこの国の姫です。

「パンツをはけと言っているのですが」

冷たい美貌で少女にパンツをはかせる青年はこの国の宰相でした。




『なぜ姫様のパンツが下がっているのか』


事の発端は朝食時に起こりました。

甘やかされて育った姫様は、お気に入りのコロッケを片時も離しません。それはもう、朝食もそっちのけ状態でコロッケに夢中でした。

そこへ朝の挨拶に伺った宰相に叱られた姫様。

姫様は大事なコロッケを奪われてはなるものかと、スカートの中に隠してしまいました。

静かな笑みを浮かべた宰相は部屋付きの侍女たちを下がらせると、迷いもなくスカートからコロッケを掴みだします。そうして姫様のお尻を打つ、という宰相の趣味丸出しの罰を与えたのです。


「宰相、これをさっさと抜くのじゃ。可哀想ではないか」

美貌の青年にパンツをはかせてもらっておきながら頬の一つも染めない姫様。やはり教育を間違っていたと言われても仕方がないのでしょう。

「姫様、また尻をブッ叩かれたくなければ私に謝罪くらいしてはどうです?」

「・・・?なぜわらわがそのような事をせねばいかんのじゃ」

不思議そうに首を傾げる姫様の脳みそは、

『姫のわらわが何故、謝罪のような真似をせねばいけないのか』ではなく

『謝罪をせねばならないような事があったかな』であり、更に


『そもそもお尻を打たれた理由はなんだっけ?』につきる。


「姫様のその可愛らしい小さな脳みそを取ってしまいましょうか」ぎりりと片手で頭を掴む宰相。

「痛いっやめいっやめるのじゃー」

姫様は行ったことはありませんが北の国にある氷の山よりもこの男は冷たいのだと、痛む頭を押さえてぶるぶる震えています。

「あれほど、ソレを捨てろと申し上げたにもかかわらず・・・」

宰相の目線は姫様のスカートに進入した卑しいゴミ(コロッケ)に向けられます。

「それ、とはコロッケのことじゃな。コロッケはわらわの可愛い恋人なのじゃぞ・・・」

「へえ・・・」綺麗な顔から冷酷な笑みが浮かびます。


姫様の全身に覚えのない奇妙な感覚が走り抜けます。少し賢ければそれが戦慄だと知ったかもしれません。


「コロッケの瞳はアメジストのようでわらわは大好きなのじゃ。宰相は同じ目の色をしたコロッケを見て可愛いとは思わぬのか?」

こそこそと消え入るような声でした。

「・・・私の目と同じ色だからソレが好きなのですか?」

「え?そ、そうじゃ・・・」

正確には大好きなコロッケの瞳の色が、たまたま宰相と同じだったという事を伝えたかっただけでしたが、姫様の可愛い脳みそは厳密な区別がつきませんでした。


美しい宰相はわがままに育った姫様の天敵と言える存在です。姫様を監視し、厳しく叱り付けて、躾と称してお尻を打たれることも多々あります。

可愛い脳みその姫様には宰相の考えることに検討をつけられるはずもなく、今も突然にうっとりと自分を見つめてくる宰相に疑問いっぱいでした。


宰相は姫様の黒髪をすくい取ります。

重たげな黒髪は触るとしっとりと柔らかく、サラサラと手の中で動きます。

姫様は美しい母には似ず、野蛮で粗野な父によく似ていると言われていました。

頑強そうな肢体。舌っ足らずの言葉のせいで、牛のような愚鈍な姫と哂われていたのです。

宰相は姫の顔を見つめます。美しく凛とした母にも、他者を威圧する厳めしい父にも似ない平凡な顔。両親の長所を打ち消した顔は、美しい母と比べられて色褪せた面白みのないものでした。


「宰相?」

足らない姫、わがままな姫、姫様に向けられる言葉には棘があります。

宰相は知っています。頑強そうに見える手足は思うよりもずっと小さく華奢です。幼い面影を残す手足の先に付く爪は桜色に輝いていてとても美しいのです。


(姫様の美しいところは全て私のものだ)

「ど、どうしたのじゃ。何か言わぬか」

平凡な顔にある唇は少し開き、真珠のような歯、赤く濡れた舌。黒目がちな瞳の奥からは無垢な心が透けて見えるようでした。


「可愛い姫」

姫様を呼ぶ声は怜悧な外見に似合わぬほど熱いものでした。

黒くしっとりとした髪、指に絡めるたびに宰相の心は姫様を強く求めます。

「姫、私と契約を致しましょう」

黒く輝く瞳、見つめる度にこの身を強く束縛して欲しい宰相は望みます。


「私と秘密の契約をするのです。私に貴女の全てを差し出しなさい」

女性を虜にする甘い誘惑を姫様に囁きます。


「貴女の体も、心も魂も、私のために在ると誓うのです。貴女の時間は私だけを慕うために在ると誓いなさい。可愛い姫、私が欲しくはありませんか?貴女が永久の愛を私に捧げれば私は、


「そんなことよりコロッケを助けてたも」


ズイっと差し出されたぬいぐるみ。


姫様は純粋です。そして姫様の脳みそはとても可愛いのです。

部屋の温度が一気に低下しました。姫様の耳に熱く睦言を囁いていた宰相は雰囲気を急速に硬化させていきます。


「宰相の話はよく分からぬが、わらわは宰相に何もやらんぞ、わらわのものはわらわのものじゃ。難しい話はお父たまにしてたも。それよりもコロッケを助けるのじゃ、命令じゃぞ」

北の国にある氷の山よりも過酷な寒気に姫様は気付きもしません。

無言のまま宰相は、コロッケの頭部を力任せに掴みました。宰相の心のうちは酷く荒れていますが、それを表現することはありません。

宰相は荒ぶる心を自覚しながらも、無表情のまま深く刺さっていたナイフを引き抜きました。

「おおっ流石は宰相じゃ」喜びコロッケを受け取る姫様の手はコロッケに届くことはありませんでした。


ポトリ


宰相の手にはコロッケの頭部。そして姫様の足元にはコロッケの体。


「・・・・・・」


銀のペーパーナイフは不吉な光を反射させながら宰相の手の中にあります。

「姫様、申し訳ありません。手が滑って首を落としてしまいました」

美しい宰相は手の中の首をこれ見よがしに落としてから、ゆっくりと口の端をあげて笑みを形作ります。

「このような事が今後も起こらない為にも、姫様には言動を十分注意して頂きたく申し上げます」

先ほどの甘さに溢れた睦言とは正反対の冷酷な声が姫様の耳を攻めます。

「姫様の可愛い脳みそに分かりやすく申し上げるとしたら、」


「次に拒否しやがったら強制〇〇させるからな。〇〇したくなかったら余計なことは考えずに頷けよ」


恐ろしい悪鬼の宣告に姫様は悲鳴の一つもあげられませんでした。

宰相の言っている意味は分かりませんが、宰相がいつも以上に恐ろしい事実は深く理解できました。

「まあ、いずれ〇〇はしてもらいますけど」

歪んだ熱を内包する眼差しを受け、突きつけられた恐怖に姫様は己の一部が決壊するのを悟ります。




「・・・さ、さいしょう、わらわはチビッたのじゃ・・・」




恐怖のあまり姫様は足元を濡らしてしまいました。

チビッた量を超えております姫の足元を見て、宰相は冷たい態度を一転させ、姫を担ぎ上げると服が汚れるのも構わずに歩き出しました。




向かう先はバスルーム。




可愛いのは姫様の脳みそでした。

次のバスルームで終わりの予定です

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