表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギンガリ  作者: 秀一
月影機関
2/16

第二話 「 初陣」


午後8時45分、東京都内。

繁華街の中心に位置する大型複合商業施設「アークモール」。

閉店直前、突然館内放送が鳴り響いた。


「警備上の理由により、ただいまより施設内の立ち入りを制限いたします。係員の指示に従ってください。」


屋上の非常階段から、黒い作戦服に身を包んだ二人の影が降り立つ。


「ターゲットは確認されてるか?」


シロの問いに、カイが端末を確認しながら答える。


「3階フロア。食品コーナーの奥、従業員用エリア。姿はまだ視認されていないが……痕跡があるらしい。」


「人払いは?」


「すでに避難誘導中。ただし、警備員が2人、連絡が途絶えてる。」


シロは無言で刀の柄に手を添えた。


「行こう。」


3階食品フロア。

照明の一部が落ち、陳列棚が異様な影を落とす。

散乱した商品、割れたガラス、引きずられたような血の跡。


「……カイ。俺が右から回る。」


「了解。気をつけろよ。」


二人は手際よく分かれ、音を立てずに侵入する。


──そのとき。


ゴキンッ。


棚の向こうから、骨の砕けるような音が聞こえた。


カイが手信号で“接敵”を示す。

そして、見えた。


血に濡れた制服姿の男──

いや、その“皮”をかぶった獣。


ゆっくりとこちらを振り向き、口角が不自然に裂ける。


「……狼人、確定。」


シロは即座に距離を詰め、銀刀を構える。


獣は叫びとともに突進。

人の姿のまま、壁を蹴って飛び上がる。


──こいつ、慣れてる。


シロは横へ跳び、すれ違いざまに一閃。

刃が肩を裂き、黒い血が飛び散る。


だが、止まらない。


後方から銃声。

カイの援護射撃が獣の膝を砕く。


「いいタイミングだ。」


「いつも通りだろ!」


シロが再度飛び込む。

今度は確実に、心臓を狙う突き。


──が、その直前。獣が笑った。


次の瞬間、足元の死角からもう一体──!


「シロッ!」


カイの叫びに、反射的に振り返りながら刀を振る。


斬撃。

そして重い衝撃。


シロは壁に叩きつけられた。

視界がぶれる。


「っ……二体いたのか……!」


カイが飛び出す。

間に入るように、もう一体の獣に銀弾を連射。


「くそっ、マジで最初の任務でこれかよ……!」


だが、動きは冷静だった。


シロはすぐに立ち上がり、最初の獣の首元に斬撃を叩き込む。


──倒れた。


カイも二体目を膝に撃ち込み、シロと挟み撃ちにする形で制圧。


連携。

静寂。

重い呼吸だけが残った。


後処理班の到着を待つ間、施設の外で二人は座っていた。


「……初任務にしては、重すぎね?」


「……まあ、そうだな。」


カイが自販機で買った缶コーヒーを渡す。


「お前、途中でちょっと反応遅れてたぞ。」


「不意を突かれた。反省してる。」


「シロが“反省”とか言う日が来るとはな。」


そう言って、カイは笑った。


──その笑顔を、シロは少しだけ見つめてから目を逸らした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ